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一部 1話、白昼照らすは日の光

【1話ー4】現る不思議な道 

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「ルイ、ちょっと落ち着いて、よく思い出して、
今日は朝、約束どおり待ち合わせ場所で僕となると洋太とルイの4人で集合してから、ずっと一緒に行動してたでしょ?」

「...」 

記憶にない。
いや、約束したとこまでは覚えてる。
約束自体は卒業式にはしてたし。

でも今日、みんなで集まったことは覚えてない
だって、まだ入学式前日の夕方のはずなのだから。

私が悶々と考えてるその様子を見た3人は、私の状況をなんとなく察し、洋太が持っている白い箱に注目した。

「おい、これ想像以上にやばい代物なんじゃないのか?
お前威力どうやって調整したんだよ」

「ちゃんと実験して、健康被害出ないようにはしたのよ?
壊れて予想外の方から飛び出ちゃったからこうなっただけで」

「事故起こった後に言われて説得力あるか!
...ってか、そもそもなんでこんなもん持ってきたんだよ!」

なるちゃんと洋太が謎の喧嘩を始める。

傍にいた心矢が2人を収めつつ、私にこうなった経緯を説明してくれた。

どうやら現状、こう言うことらしい。


前提として、なるちゃんは機械を作ることが大好きである。

そのなるちゃんが、開けるとボクシンググローブが飛び出す、よく漫画やコントに出てくるびっくり箱を作ったらしい。

本来は狙った相手に少し重いパンチくらいですむはずが、何かの拍子で壊れ、
想定していない場所に想定外のタイミングでグローブは飛び出し、予想外の威力を発揮して、私に直撃、思いっきり飛ばされ今に至る。

で...頭をぶつけた私は何も覚えていない。
つまり...

 「...私、記憶喪失...ってこと?」

「って...ことみたいね。」

「ルイの話を聞く限り、昨日の夕方の記憶みたいだし、半日...くらいかな...?」

なるほど、それなら納得した。
記憶が抜けてるなら、夕方から1分で朝になったと感じてもおかしくはないし、記憶喪失になるほどの衝撃はたしかに受けている。

結構頭痛かったし。

 
「で、でも半日でよかったわね、長期間だったらたいへ...」

「そう言う問題じゃないだろ、ちょっとは反省しろ」

「...ごめんなさい。」

洋太に怒られたなるちゃんはめちゃくちゃ責任を感じているらしく、道端だと言うのにその場に正座してうなだれた。

「ルイどうする?病院行く?」

心矢は私を心配してそう提案する。
確かに、記憶がないのはちょっと心配ではあるけど、
半日ならそんなに困るレベルじゃない。
だから私は首を横に振って断った。
しかしそれを聞いた洋太は少し渋い顔をしていった。 

「頭だろ?現に影響出てるし、後からなんかあっても..」

 「でもほんとにもう大丈夫だし...」

それに、ここで病院行ったら私入学式出られない、そんなの絶対ヤダ。

その意志を感じ取ったのか、心矢が何かを思い出したかのように手をポンと打つとある提案をする。


「じゃあ近道していこうよ、早く学校つけば万一のことあっても保健室で見て もらえるし」

「近道?」


確かに近道があるならそれに越したことはないし、早く学校について困ることはない。

でも、この辺りに学校への近道できるような道なんてあったっけ?

それはなるちゃんと洋太も気になったのだろう。 
本当なのかとか、そんな場所あった?などと問いただしていた。 
あまりにも信じてもらえないことに不貞腐れたのか

「ほんとだって!ほらあそこ!」

と怒りながらある場所を指差す。

その場所を見て、私は目を見開いた

そこはさっき...昨日、みちびきこちゃんの案内する場所に「道がない」と話になった塀あたりだ。

なのに、その場所には、



人が通れるほどの道ができていた。

記憶間違いなんてことは絶対にない。 
だって私はさっき確認したのだから。

たしかにそこには道がなかった。


でも

 「本当にここ、近道なの?」

なるちゃんの言葉を聞いて、私は目を見開く。

なるちゃんは不服を口にしたが、違和感を感じた様子はなかったからだ、それは洋太も同様。

心矢に至っては

「ほんとだって、この前見つけて試したし、間違いないよ!」

自信満々だ。


あくまでその道が「近道であるか」の心配はしても、「その道があることについて」 の言及は誰もしなかった

どうして?
100歩譲って、昨日いなかった洋太はうろ覚えなのかもしれない可能性がある。
でも他二人は私と一緒にここに道なんか存在しないことを一緒に確認してた。

なのにどうして、誰も違和感感じてないの?

「ルイちゃん?どうしたの?」

なるちゃんに声をかけられて我に戻る。
気がつくとこの道を通ることはいつの間にか3人の中で決定され、心矢と洋太はすでにその道を歩き始めていた。

まるで、そこに最初から道があったかのように、何も疑問に持たずに...

でも、疑問を口にできる様子ではなく、私は反論せずにみんなにとりあえずついていった。
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