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01 娼館訪問
しおりを挟む「ここが王国最大の娼館、シオラハか。――はぁ、今すぐ帰りたい」
これも任務のうちだ。そう、これは任務。任務と思えばいい!
女性経験のまったく無いカタブツ騎士団長なら娼館に潜入しても怪しまれない。
人身売買の噂がある娼館でも、客はそういう男が一番多いんだ。
と力説した副団長の顔を今からでも殴りたい。
「この仕事が終わったら絶対に絞めころしてやる」
時刻は夜九時。
大通りにそびえ立つ店の前は、酔っ払い客の喧噪でにぎやかだ。店の扉を開けると、すぐさま値踏みの視線がまとわりついてきた。
============
体格:かなり良し
顔:三十路過ぎにしてはそこそこ
金:???
============
人の目はそれなりに集まっている。あと一押しすれば、店主をひきずりだせる。
今回の任務は、店主を店でくぎづけにしている間、部下たちが奴隷取引の現場に急行し、奴隷商人を捕まえる、という流れだ。
「なあ、これでどのくらいの子と遊べるかな?」
金貨五枚。
周囲が色めき立った。人垣ができて、だれが自分をエスコートするかでもめ始める。
(よし。目的は達成した。あとは店主を呼び出して話し込めば――!)
「だめだよ。お兄さん、こんなところでそんなものを見せたら」
頭上から澄んだ声がふってきた。
一見すると人間の子どもにしか見えないが、達観した目つきと落ち着いた物腰から彼が『小人族』だと分かる。
成人しても人間の子どもくらいにしか身長が伸びない種族だ。
彼の言葉で、むらがっていた娼婦や店員たちは音もなくひきさがった。まるで今の金貨など見なかったかのように。
いまやたった一人の少年が、この場を支配していた。
少年はゆっくりと螺旋階段を下りてきて、目の前に立った。自分の腰にやっと届くほどの身長。
金色の髪は人形のようにくしけずられ、青い瞳は宝石のようにキラキラしている。
「ね。しまって」
「すまない。失礼をした」
彼の丁寧な口調に思わず膝をおって目線を少年に合わせると、一瞬だけ彼は驚いた顔をした。
「? なにかまずいことでも?」
「小人族のぼくに膝をおるってことは『求婚』を意味するんだよ。知らないの?」
「き、求婚!? 私はそんなつもりは――!」
そもそも男同士で結婚などありえない。
まわりに助けを求めたが先ほどの人だかりが嘘のように、入り口のロビーには誰もいなかった。
蜘蛛の子を散らすように、ひとけが消えていた。
「ふふ。冗談だよ。それで? お兄さんは何をしに来たのかな? 女を買うのが好きって感じでもない。そもそも人を金で買うこと自体、嫌ってる。そんな匂いがする。そのくせ体格はとても良い。まるで王立騎士団に所属してる騎士さまみたいだね。それにお兄さんの顔、どこかで見たことがあるなー」
くいっ、と顎を上向かされる。
かぶっていたフードが肩にすべり落ちた。少年がにっこりと極上の笑みを浮かべる。
すべてを見透かしたかのように、青い瞳を細めた。
「うん。そうだ。王立騎士団団長――ゼル・ライコフ。ぼくの店に君が遊びにやってくるとはね。剣の道ひとすじで、上げた武勲は数知れず。お貴族さまからの縁談はすべて断って、この身は国に捧げると言わんばかりの人だ。そんな人がなぜ、ぼくの店に来ているのかな?」
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