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しおりを挟む団長──ライ・ゼルニコフの寝室は騎士団の詰所の一角にある。
王都をぐるりと囲む城壁がそのまま詰所であり、俺たちの団は北門一帯が担当だった。
東西南北四つの城門があり、任される地域によって序列が存在する。なかでも北門は国王陛下の住まわれる後宮に最も近いため、騎士団で最も精強かつ軍略に秀でた騎士団に任される。
他の団員にやっかまれる事も多いが、正直俺は北門が嫌いだ。
なにせ寒い。
ものすごく寒い。
冬になれば北の山脈から寒冷な空気が直撃し、夜から朝にかけての詰所は火を焚いてても底冷えする寒さが消えない。
できれば日当たりの良い南門の詰所で暮らしたい。
北門の詰所で夜を明かした経験がある騎士なら一度は考えることだ。
まあ、国王陛下の命を守る気概がない不敬な騎士と思われたら困るため、仲間内以外で口にしたことはない。
「団長の部屋も寒かったらどうしよう……」
いや、ヤってる内に温かくなるから問題ない。だが寒すぎて勃たなかったら、それはそれで困る。
仕事で立ち寄ることの多かった執務室の気温を思い出そうとするが、いかんせんこれからやることの方に意識が囚われて、うまくいかない。
うんうんと唸っている間に、とうとう目的地に着いてしまった。
夜十時。
団長の執務室がある廊下はひっそりとしていた。石壁に掛けられたロウソクがチリチリと燃えて、時おり炎が揺らめく。暖かな光に俺一人分の影が照らされて、なんだか心もとない気分になる。
手に持っているのは大人のオモチャ満載の皮袋。
実は全部夢なんじゃないかと思えてしまうくらい、リアリティがない。
執務室の扉をノックすると、「入れ」と聞きなれた声が響いた。
「失礼しま~す」
おそるおそる入ると、執務室の火は落とされていた。代わりに右手奥の部屋が開いていた。
柔らかい光がほんの少し開いたドアのすき間から漏れている。
ゴクリと音がなるほど大きな唾を飲みこんで、奥へと進む。
「団長、そのう、今夜は簡単なところから始めようと思いましてね。俺も一応便利なアイテムを持ってきたんですよ。いや団長が気に入るか分かんないんですけどね。ま、緊張をほぐすお遊びグッズと言いますか」
馬鹿いえ。緊張してるのは俺の方だ。
次から次に言葉があふれてくる。そのどれもがたわいない、バカバカしいものだ。
(……甘いこもった匂い……?)
香水のような甘ったるく、それでいて奥深い香りが鼻をついた。
団長が王宮に出かける時につける匂いとは違う。だが、どこかで嗅いだ記憶がある。あれはどこだったか……。
寝室のドアを開くと一気に匂いが濃くなった。
(あ。これはまさか──)
気づいた時にはもう遅かった。寝室のベッドには前かがみで座りこむ団長がいた。顔にはうっすらと汗をかいていて、白い頬はリンゴのように真っ赤だ。
薄い唇は必死に体内からせり上がる何かに耐えるよう、キツく引き結ばれている。
(催淫香かよ……ッ)
しかも濃度が異様に強い。娼館でさえここまで高い濃度のものは焚かない。
「ずいぶんと……遅かったな」
団長はナイトガウンの襟元をたぐり寄せて、恨めしそうに俺を睨んでくる。
だがサファイアを思わせる瞳は潤みきっていて、怖いというより色っぽかった。
「すみませんね。お待たせしちゃったみたいで」
こんな香りのなかで待っていたら数秒で高ぶり、射精したくなるだろう。事実、俺のムスコも反応し始めている。
しかし団長は律儀にも俺をじっと待っていてくれたらしい。この分だと射精を我慢したまま。
「あー……とりあえず一回ヌきましょうか」
団長の隣に座ると、びくりと団長の肩が揺れる。怯えているようにも見える仕草に、ぞくりとした。
あの剣鬼と畏れられた男が、俺が隣に座っただけで震えている。まるで生まれたての小鹿みたいにぷるぷる震える姿は、火照った顔に相まって俺を誘っているようだ。
大人のオモチャ満載の皮袋を置いて、股間を手で覆う団長の手首を掴んだ。
「……ゃ、待て……」
弱々しい声に、また背筋がぞくりとした。自然と鼻息が荒くなる。藤色のナイトガウンの裾をゆっくりとめくりあげると、紺色の下着が姿を現した。
ちょこんと小さな丘が盛り上がっていて、そこから中心に色の濃いシミができていた。
「あーあー今すぐ出したそうにしてますね。団長のおちんちん」
そっと下着に指をかけて引き上げると、団長の性器が顔を出した。
小さい。
俺のと比べたら三分の一だ。皮をかぶっていて、子どもみたいに可愛らしいピンクの色合いだった。玉も小ぶりで下の毛も薄く、おちんちん全部が根元から先っちょまで丸見えだ。
苦しそうにそりかえった姿がまた可愛らしい。
(これはオナホやるより、まず手だろ)
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