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第七話 脅迫(四) ※
しおりを挟むぴゅぅぅぅうう♡♡ プシッ♡ プシッ♡
まるでトイレでおしっこを切る時みたいな音を立てて、自分の出した精液が腹じゅうに降りかかる。
むわりと自分の出した精液の匂いで寝室は染まり、もはや極上の眠りを毎夜提供してくれていた面影はどこにもなかった。
「ついでに大賢者さまのご尊顔も汚しとこうか」
むんずとヘンリックに性器を掴まれ、強引にしごかれる。
久しぶりの太い男の指。身体はその指先から与えられる快楽を忘れてはいなかった。
あれだけイッてもヘンリックにおねだりするみたいに、たちあがる。
「男の指くわえこんだら離さないって話、本当だったんだな」
「――だ、れがそのような世迷い言を……っ」
「え~、ドリンのおっさん。ドワーフのぶっとい指でしごいても全然言うこときかないムスコだったって聞いたぜ」
人さし指と親指の輪っかで細い肉茎を上下にしごかれる。
笠の裏側にできた隙間を指先でほじられて尻が浮く。
「大賢者さまはエルフの血じゃなくて、淫魔の血がまじってるのかな。お腹にちんちん必死にくっつけようとして可愛いでちゅね」
「黙れ。この痴れ者が!」
こんなことをしてタダで済ませるものか。
もう二度と祖国の土など踏めないようにしてやる。
国王陛下の裁可を仰げば、こんなこっぱ役人など簡単に首を飛ばせる。その権力が私にはある!
新たな口撃を重ねようとしたその瞬間、聞き慣れた喘ぎ声が響いた。
遊び人時代、パーティーの連中に遊び半分で録画された自分のセックス映像。
それを見ながらヤるのが、ドリンの十八番だった。
けれどパーティーから抜ける際その手の映像はすべて始末した。
精神に作用する魔術まで使い込んで、完璧に処分したのだ。
もうこの世のどこにもあるはずがない。
それなのに『ソレ』は聞こえてくる。
「お。気づいちゃった? ドリンのおっさんが餞別にくれたんだよ。あんたとの隠し撮りセックス映像」
ヘンリックがローブのポケットから黒い水晶玉を取り出す。そこから音声は響いていた。
『――ぁン♡ ぁン♡ ドリン、もっと奥、衝いて……ッ♡ 前みたいにお尻の穴こわれちゃうくらいに、たくさん……出して』
まぎれもなく自分の声だった。
甲高くて甘ったるい。己をくびり殺してやりたくなる卑猥な言葉の数々。
ヘンリックの瞳が狐を思わせる狡猾な光を湛えた。
「壁に映像を投影させたまま、ケツいじられるのが好きだったって聞いてるぞ」
ベッドの端に水晶玉を転がすと、寝室の天井一面にドリンに抱きつく自分の姿が浮かび上がった。
当時の結合音まではっきりと録音されている。
『お尻……トントンして♡ そしたらドリンの、搾り取ってあげるから……ァァアッ♡ イイっ♡ イク♡ イク♡」
びゅるるるる♡♡
さっき自分が射精した音と寸分たがわぬ音声が再生されていく。
「ぃ……ッ……いやぁぁァァァ――ッ!!」
「うを。腰にクるいい悲鳴♡ マジで前世は淫魔だろ。あんた」
くくっと楽しそうに笑うヘンリックを睨み付けた。視線に殺意を込められるものならいくらでも込めてやる。
こんなにも殺したいと思える男は生まれて初めてだった。
「あ~……いいなぁ。その顔。すごくそそるぜ」
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