君がくれた日常

青ムギ

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優しい抱擁

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プップー
遠くからクラクションが鳴り、俺と母さんの目の前で黒い車が止まった。
「悪い悪い、待たせたか?」と運転席の窓を開け、父さんが顔を出した。
「もう、どこ行ってたのよ?」と頬を膨らませながら母さんが父さんに問い詰める。
「隣のコンビニで昼寝してた」と笑いながら、父さんは頭を搔いた。その言葉を聞いて母さんは呆れていた。
 俺は2人の会話をベンチに座りながら、聞いていた。
「………。」
「圭佑。」と不意に父さんに呼ばれ、少しビックリした。
「………?」
「外は寒いから、車に乗りなさい」とやんわりとした口調で言われ、こくんと頷いた。
 ベンチから立ち上がると、重たい荷物を持ち車に乗り込んだ。車に乗り込むと、外の風とは違い暖房が効いていてとても暖かかった。

ドアを閉めると、車はゆっくりと動きだした。
「「………。」」
「……。」
父さんも母さんも何も喋らない。もちろん俺も、口を開かない。
沈黙だけが続く。

窓の外をボーッと見つめながら、考え事をする。

「………圭佑、」また不意に父さんから名前を呼ばれる。
「なに?」
「腹…減ってないか?」と俺に気遣い、沈黙を破った。
「減ってないよ。……先に、お風呂入りたい。」窓の外を見つめたままそう答えた。
「そうか。家に帰ったら1番に風呂に入るといいさ!体の芯まで温かくなるぞ!」
「うん。」
返事をすると、会話が無くなりまた沈黙が続く。

沈黙の状態が家に帰るまで、ずっと続いた。










ガチャッ
「さぁ~着いたぞ!我が家だ!」と言い、車から降りる父さんと母さん。少しの間入院してただけなのに、家を見ると懐かしく感じてしまう。
数分間、その場に立ちつくしたまま家を眺めていると、「「圭佑」」と名前を呼ばれ、声のした方に顔を向ける。
すると、母さんと父さんが玄関に立ち尽くし両手を広げながら「「おかえり。」」と満面の笑みで言ってきた。
その光景に驚いて、言葉が出ない。母さんに「おいで」と手招きをされ、俺はおぼつかない足取りで父さんや母さんの所へ向かう。
玄関に入った途端、2人に抱き締められた。
「「おかえり、圭佑」」
「………た、ただいま」と言うと、父さんや母さんの抱きしめる力がより一層強くなる。
 「苦しい…」その2人に言うと、ごめんごめんと謝りながら体を離した。
「やっと家族が揃ったんだなて思ったら、うれしくなっちゃって…」と目を潤ませながら、そう言ってきた。
「……泣かないでよ」と視線を泳がせながらバッグの中に入っていたティッシュを渡す。
「ごめんなさいね…。」と言いながらティッシュを受け取って涙を拭う。
「さぁさぁ!圭佑、寒いから風呂に入ってきなさい!」と父さんに言われる。
「うん。」
「その後で……少し話があるんだ。」と真剣な顔で言われ、俺は静かにコクンと頷いた。
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