君がくれた日常

青ムギ

文字の大きさ
上 下
13 / 38

小説

しおりを挟む
父さんが買ってきてくれた本は、とても面白くて一気に半分ほど読んでしまった。
 所々に絵が描かれていて頭の中でスムーズに想像することが出来た。
そして、『 第三章 』の所を読み終えたところでご飯が運ばれてきた。看護師の人からは「その小説面白い?」と聞かれ、ぎこちなく頷いた。まだ、父さんや母さん以外と話すのは緊張するし、言葉が詰まる。何を考えているのかが何も分からない。無理して話し掛けているのなら喋らなければいいのにと思ってしまう。
「…………ありがとうございます。」視線を逸らしながら小声で呟く。看護師には聞こえていなかった。
 ご飯を口に運び、何回も噛んで食べる。何も考えない様に食べ進めるが、さっきまで読んでいた小説の内容が、頭が離れず続きが気になって仕方なかった。そして、ご飯を食べ終わるとすぐに小説の続きを読み始める。細かい字ばかりで最初は飽きるだろうと思っていたが、内容はとても面白く読むのは苦ではなかった。





パタン
全部読み終えて、本を閉じる。
「面白かったな……。」
ふと時間が気になり壁に掛けてある時計に目をやると、時刻は深夜を回っていた。慌てて、歯を磨きベッドに入った。
 父さんがくれた小説を枕元の近くに置き、眠りについた。


朝、自然と目が開いた。
眠くもない。何故か気持ちのいい朝だった。上半身を毛布から起こし、背伸びをする。
「寒っ……。」
思わず室内の中の温度の低さに身震いをした。
外は風が強風の様に、吹いている。風邪ひきそうだな…。と窓の外を眺めながら、ボーッとする。
枕元の近くにある、机の上の携帯がピコンピコンと鳴る。
「また…メールかな………。」
電源を消そうかなと思い、携帯に手を伸ばす。通知を確認すると、やはりメールだった。それも親友から送られてくる脅迫メール。思わず、携帯を振り上げ地面に叩きわろうとしたが、やめた。無言で携帯の電源を切った。
「……あと少しだけ、自由にさせてよ……。」そうボソリと呟いた。
 また退院して学校に復帰したら、いじめるんだから今だけは自由にさせてよ…。そう心の中で静かに、強く反発する。
  壊れたはずの心がギュゥゥゥと締め付けられる。

みんな嫌い…。笑い声も、人を見る視線も、教室という空間も、すべてすべて嫌い。大嫌い。
 気分がどんどん下がっていき、慌てて別の事を考える。

「そういえば、母さん昨日何を言おうとしてたんだろう…。」
昨日、お見舞いに来た時何かを言おうとしてやめた。何か用事があったのかな?そう思いながら、母さんが言おうとしていた事を考える。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

さむいよ、さみしいよ、

moka
BL
僕は誰にも愛されない、、、 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人を信じることをやめた奏が学園で色々な人と出会い信じること、愛を知る物語です。

悪役に転生させられたのでバットエンドだけは避けたい!!

あらかると
BL
主人公・日高 春樹は好きな乙女ゲーのコンセプトカフェの帰りにゲーム内のキャラに襲われ、少女によってトラックへと投げ込まれる――――という異常事態に巻き込まれ、挙句の果てに少女に「アルカ・スパイトフルとして生きて下さい」と。ゲームに似ている世界へと転生させられる。 ちょっと待って、その名前悪役キャラで最後死ぬキャラじゃないですか!!??それになぜ俺がそんな理不尽な目に合わないといけないんだ・・・!!ええっ! あっ!推しが可愛いーーーー!!と、理不尽に心の中で愚痴りながらも必死に、のんびりと気軽に過ごすストーリ(になるはず)です。 多分左右固定 主人公の推し(アフェク)×主人公(春樹) その他cpは未定の部分がありますが少し匂わせで悪役であったアルカ(受)あるかと思います。 作者が雑食の為、地雷原が分かっていない事が多いです。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

蔑まれ王子と愛され王子

あぎ
BL
蔑まれ王子と愛され王子 蔑まれ王子 顔が醜いからと城の別邸に幽閉されている。 基本的なことは1人でできる。 父と母にここ何年もあっていない 愛され王子 顔が美しく、次の国大使。 全属性を使える。光魔法も抜かりなく使える 兄として弟のために頑張らないと!と頑張っていたが弟がいなくなっていて病んだ 父と母はこの世界でいちばん大嫌い ※pixiv掲載小説※ 自身の掲載小説のため、オリジナルです

処理中です...