君がくれた日常

青ムギ

文字の大きさ
上 下
3 / 38

学校に行く事への拒絶

しおりを挟む
俺は、次の日から学校へ行くのを辞め、朝から部屋に引き篭る。
 朝の光がカーテンの隙間から溢れ、外からは小学生や中学生の笑い声、車の通る音などが聞こえてくる。
 その音さえも耳に入れたくなく、ベッドの隅に移動し、耳を塞いだ。
やがて、数分もしないうちに外の声は静かになった。俯いていた顔をそっと上げ、耳を塞ぐ手を外した。
 ベッドから起き上がり、震える足で窓に近づき外の様子を見てみる。
 さっきまでの笑い声はシンと静まり返り鳥の鳴く音だけが響いていた。
「………。」

よかった…。と思っていた矢先に同じ高校の制服を着た生徒が家の前の道路を通る。
 そして、ある一人の生徒と目が合ってしまい慌ててカーテンを閉めた。

ドクンッ ドクンッ ドクンッ

「静まれ静まれ…」
胸元を手で抑え、静まれと呟く。

窓に近づかなければよかった………。
未だに収まらない心臓の鼓動を服越しに締め付ける。

 脳内で何度も親友に言われた言葉が繰り返される。
俺がたった2文字の言葉を親友に言わなければ、仲は拗れなかったのかもしれない。
 ずっと言わないでおこうと何度も思っていたのに、親友の「どんな恋でも応援する」という言葉に心が揺さぶり、口が滑ってしまった。

 こんな事を思ったところで、もう後戻りは出来ない。

暫くして、心臓の鼓動が落ち着いた。締め付けていた服はその部分だけくしゃくしゃになっていた。
 「………。」

どうしよう…。
学校……教室………視線…笑い声……全てが怖くなった。
 
また、胸がドクンと大きな音を立て騒ぎ出す。
「っ……」

身体が…心が…学校へ行く事を拒んでいる。
フラッシュバックする記憶。
たった数日で心を壊され、信用性を失い、友達をも失った。同性を好きになった自分が更に憎らしくなった。
 
 誰かに相談したい…。こんな苦しいばかりの心を少しだけ軽くしたい。
 …………けれど、この話を一体誰にする??分かってもらえる人が近くにいない。言ったところで…また……気持ち悪がられる。いじめられる。傷をつけられる。

ふと、腕についた幾つもの痣をチラッと見る。
 青黒い痣、青紫色の痣等……。この痣を見る度クラスメイトの顔が脳裏を過り、苦しみから逃れられない。

もう、こんな思いをするくらいなら……と机の上のペン立てからカッターを取り出し自分に傷をつけようとする。

だが、まだ心のどこかで「死にたくない」と思っている自分がいる。「死ぬのが怖い」と心の片隅で思う。

カッターを机に置くと、髪をくしゃくしゃにしながら「どうすればいいんだよ……!」と静かに1人呟く。


それから俺は、学校を1週間ほど休んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

さむいよ、さみしいよ、

moka
BL
僕は誰にも愛されない、、、 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人を信じることをやめた奏が学園で色々な人と出会い信じること、愛を知る物語です。

【完結】内緒事のある友人との離れ方

琉海
BL
卒業を機にもう二度と会わないんだろうなと思ってる世話焼き外見チャラ男と離れられてビックリした美人系の話。 教師になる夢を叶えるため上京した。 そんな大学で出来た友人にはどうやら人には言えない秘密があるらしい。 *** 秘密がもう一人にバレる事はありません。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

処理中です...