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9話
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「涼しいなぁ…」
食事を終え、兵舎に戻った皆が寝静まったのを確認すると俺はこっそりと抜け出した。先程まで一緒だったカインは他の兵士と共にどこかへ消えた。ひとり寂しくブラブラと散歩をする。セドリックや見張りの兵に見つかれば怒られるどころではないが気にしない。夜の散歩は風が心地よく程よい温度が頬を掠める。月のお陰か周りの景色が明るく見える。どんどん森の奥へと突き進むと、懐かしい場所を発見した。
「ここは……」
グレンと俺のふたりだけの秘密の場所。川が流れ、微かに聴こえる虫の音。もう少し奥へ行けば街の灯りが一望できる。あまりの懐かしさに自然と笑みが溢れた。
(あの頃と何も変わっていない…)
春になれば綺麗な花が咲き誇り、夏になれば町で開かれる祭りを眺められ、秋になれば旬の実がなり、冬になれば雪が積もり結晶ができる。その季節を生前の頃はグレンとずっと過ごしていた。どんなに辛くても逃げ出したくてもグレンが傍にいてくれた。だが、今グレンは隣にはいない。ソラという少年といる時のグレンは心底楽しそうだった。
胸がズキズキと痛み始め、俺は苦笑した。
ガサガサッ
「~~」
「…~」
俺が来た道の奥の方から声が聞こえた。こちらに近づいてくる声に俺は慌てて木陰に身を潜める。俺は横を通り過ぎる声の主の顔をチラリとみた。
「え……」
声の主はグレンとソラだった。
「わぁぁぁ…!!凄いですね!綺麗~…」景色を見るなりソラは嬉しそうに目を輝かせていた。
「喜んでくれてよかったよ。俺の秘密の場所だから、ソラに喜んでもらえてよかった。」と心底嬉しそうに話していた。
「ここは、僕とグレン様以外誰も知らないんですか?」
「知らないよ。ここには誰も立ち寄らせていない。」
「じゃぁ!ふたりだけの秘密の場所ですね!教えて下さりありがとうございます!」満面の笑みでソラはグレンにお礼を言う。
グレンはクスリと笑いながらソラの頭に手を置きポンポンと優しく撫でる。顔を赤くしながらえへへ、と笑うソラ。
甘々な雰囲気に俺は目を背けることしか出来なかった。早くこの場から逃げ出してしまいたかったが、音を立てれば見つかってしまう。息を殺しながら慎重に元来た道を戻ろうと試みる。
だが、無風の中俺の着ていた服が枝に引っかかってしまいガサガサと音を立てた。
「誰だっ……!姿を見せろ!」
グレンに見つかってしまった。俺は両手をあげゆっくりと立ち上がる。
「お前はあの時の奴隷兵士だな。何故ここにいる、」
名前を名乗っていなかったのか……と思いながら視線をグレンに向けると、グレンはソラを守るように後ろに隠してもう片方の手で剣を握っていた。
「少し……散歩がしたくて歩いていたら、ここに着いていました。休んでいたら、王子の声がして慌てて身を隠しました。」ありのままの事実を淡々と述べる。グレンの顔つきは険しく、未だに俺を疑っているのが分かる。ソラは顔を下に下げており表情が分からなかった。
「こんな時間に散歩…だと?」
「はい。」
「もう消灯時間は過ぎているぞ。早く戻れ。」
「分かりました。」王子に背を向けスタスタと元来た道をもどる。
後ろからグレンの「大丈夫か?」という声が聞こえてきた。優しく心配している声音。チラリと後ろを見ると、剣を鞘に収めたグレンがソラに寄り添い背中をポンポンと優しく叩いていた。
その光景を見て俺はまた胸がズキズキと痛み出す。
食事を終え、兵舎に戻った皆が寝静まったのを確認すると俺はこっそりと抜け出した。先程まで一緒だったカインは他の兵士と共にどこかへ消えた。ひとり寂しくブラブラと散歩をする。セドリックや見張りの兵に見つかれば怒られるどころではないが気にしない。夜の散歩は風が心地よく程よい温度が頬を掠める。月のお陰か周りの景色が明るく見える。どんどん森の奥へと突き進むと、懐かしい場所を発見した。
「ここは……」
グレンと俺のふたりだけの秘密の場所。川が流れ、微かに聴こえる虫の音。もう少し奥へ行けば街の灯りが一望できる。あまりの懐かしさに自然と笑みが溢れた。
(あの頃と何も変わっていない…)
春になれば綺麗な花が咲き誇り、夏になれば町で開かれる祭りを眺められ、秋になれば旬の実がなり、冬になれば雪が積もり結晶ができる。その季節を生前の頃はグレンとずっと過ごしていた。どんなに辛くても逃げ出したくてもグレンが傍にいてくれた。だが、今グレンは隣にはいない。ソラという少年といる時のグレンは心底楽しそうだった。
胸がズキズキと痛み始め、俺は苦笑した。
ガサガサッ
「~~」
「…~」
俺が来た道の奥の方から声が聞こえた。こちらに近づいてくる声に俺は慌てて木陰に身を潜める。俺は横を通り過ぎる声の主の顔をチラリとみた。
「え……」
声の主はグレンとソラだった。
「わぁぁぁ…!!凄いですね!綺麗~…」景色を見るなりソラは嬉しそうに目を輝かせていた。
「喜んでくれてよかったよ。俺の秘密の場所だから、ソラに喜んでもらえてよかった。」と心底嬉しそうに話していた。
「ここは、僕とグレン様以外誰も知らないんですか?」
「知らないよ。ここには誰も立ち寄らせていない。」
「じゃぁ!ふたりだけの秘密の場所ですね!教えて下さりありがとうございます!」満面の笑みでソラはグレンにお礼を言う。
グレンはクスリと笑いながらソラの頭に手を置きポンポンと優しく撫でる。顔を赤くしながらえへへ、と笑うソラ。
甘々な雰囲気に俺は目を背けることしか出来なかった。早くこの場から逃げ出してしまいたかったが、音を立てれば見つかってしまう。息を殺しながら慎重に元来た道を戻ろうと試みる。
だが、無風の中俺の着ていた服が枝に引っかかってしまいガサガサと音を立てた。
「誰だっ……!姿を見せろ!」
グレンに見つかってしまった。俺は両手をあげゆっくりと立ち上がる。
「お前はあの時の奴隷兵士だな。何故ここにいる、」
名前を名乗っていなかったのか……と思いながら視線をグレンに向けると、グレンはソラを守るように後ろに隠してもう片方の手で剣を握っていた。
「少し……散歩がしたくて歩いていたら、ここに着いていました。休んでいたら、王子の声がして慌てて身を隠しました。」ありのままの事実を淡々と述べる。グレンの顔つきは険しく、未だに俺を疑っているのが分かる。ソラは顔を下に下げており表情が分からなかった。
「こんな時間に散歩…だと?」
「はい。」
「もう消灯時間は過ぎているぞ。早く戻れ。」
「分かりました。」王子に背を向けスタスタと元来た道をもどる。
後ろからグレンの「大丈夫か?」という声が聞こえてきた。優しく心配している声音。チラリと後ろを見ると、剣を鞘に収めたグレンがソラに寄り添い背中をポンポンと優しく叩いていた。
その光景を見て俺はまた胸がズキズキと痛み出す。
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