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◆新たな伯爵と婚約?
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三日後……音沙汰なし。
まだ時間が掛かるようだ。
一週間後も連絡はない。手紙が来る様子もなかった。
一か月が経とうとした頃。ようやく反応があった。
大雨の降る中。馬車で移動中にそれは起きた。
「……お嬢様、大変です」
「どうしたの?」
「目の前に人が」
「人?」
「それが見知った顔でして、どういたしましょうか」
困惑する老執事。わたくしは気になって窓から覗いた。すると、それがニーナであることが分かった。
雨に濡れ、服はボロボロ。小汚いボロ雑巾のようになっていた。……これは復讐の成果が出たということ?
傘を差し、わたくしは外へ出た。
「…………ティア。私になにを……したの!!」
「なんのことかしら? というか、あなた……そんなズタボロになってどうしたの」
地面に倒れ、震えるニーナ。
まるで誰かに捨てられた子犬のようだった。
「失ったのよ……」
「……?」
「家も、お金も、名誉も地位も……家族すらも失ったわ!! あんたのせいでね!!」
なるほど、復讐代行の力ね。これは素晴らしい。彼女のほとんどを奪ったのか。どんな力を使ったか知らないけど爽快ね。
「わたくしのせい? 証拠はありますの?」
「……そ、それは……ないけど、こんなこと出来るの……ティア、あなたくらいでしょう! ダニエルのことで私に恨みがあるはずよ!」
「その方のことは忘れましたの」
「え……」
「新しい人生をやり直している最中です。邪魔をしないことね」
「くっ! ティア! あなたを許さない!」
鬱陶しい。それに面倒くさい。
こんな誰でもない女の相手をしている暇はない。
なにもかも失ったニーナは、もうわたくしの敵でもなんでもない。
「さようなら、ニーナ。これ以上不幸になりたくなければ二度と関わらないで」
「…………ティア! 覚えてなさい! 絶対に地獄を見せてやるッッ!」
殺意と憎悪を向けられたけど、わたくしには何も響かなかった。え、なにそれって感じ。なんでそんな被害者ヅラできるのかしら。
苦しかったのは、わたくしも同じ。
そもそも先に手を出したのは向こうなのだから、自業自得よ。
馬車へ戻り、ブレナム邸宅へ戻った。
これでもう邪魔者はいなくなった。
復讐代行のおかげで平和が取り戻せた。
邸宅へ戻ると、見知った顔の男性が立っていた。
「待っていましたよ、ティア」
「……あなた、なぜ」
一週間前に顔を合わせた程度だった。
そういえば、お父様と話をしていたところを見かけた。
「申し訳ない。侯爵殿にはお話をしてあったのですが」
「お父様に……そうでしたの。それで、あなたは?」
「申し遅れました。私はドノヴァン。現在は伯爵の地位を拝領しておりましてね。……ほら、約一か月前にダニエルが処刑されたではないですか。なので必然的に私の地位が上がったのですよ」
それでわざわざ挨拶をしに来たのね。
「……わたくしに何かご用件が?」
「ダニエルとあなたが婚約をしていたことは知っています」
「でしょうね。貴族の間では広まっていたことですから」
「では、今は独り身のはず。ティア、私と婚約していただきたい」
「……!?」
突然のことに驚いた。
そういうことね。お父様ってば、彼を次の候補にしたいわけね。……となると、そう簡単には断れない。
お父様は、わたくしの幸せを常に願っている。
これはきっと、わたくしの為の采配だ。
興味がないわけではない。
ダニエルを失ってから、ずっとひとりぼっち。寂しいと思うことが多い毎日。そろそろ相手を探したいと考えていた頃合いだった。
……そうね、一度くらいは考えてみてもいいかも。
まだ時間が掛かるようだ。
一週間後も連絡はない。手紙が来る様子もなかった。
一か月が経とうとした頃。ようやく反応があった。
大雨の降る中。馬車で移動中にそれは起きた。
「……お嬢様、大変です」
「どうしたの?」
「目の前に人が」
「人?」
「それが見知った顔でして、どういたしましょうか」
困惑する老執事。わたくしは気になって窓から覗いた。すると、それがニーナであることが分かった。
雨に濡れ、服はボロボロ。小汚いボロ雑巾のようになっていた。……これは復讐の成果が出たということ?
傘を差し、わたくしは外へ出た。
「…………ティア。私になにを……したの!!」
「なんのことかしら? というか、あなた……そんなズタボロになってどうしたの」
地面に倒れ、震えるニーナ。
まるで誰かに捨てられた子犬のようだった。
「失ったのよ……」
「……?」
「家も、お金も、名誉も地位も……家族すらも失ったわ!! あんたのせいでね!!」
なるほど、復讐代行の力ね。これは素晴らしい。彼女のほとんどを奪ったのか。どんな力を使ったか知らないけど爽快ね。
「わたくしのせい? 証拠はありますの?」
「……そ、それは……ないけど、こんなこと出来るの……ティア、あなたくらいでしょう! ダニエルのことで私に恨みがあるはずよ!」
「その方のことは忘れましたの」
「え……」
「新しい人生をやり直している最中です。邪魔をしないことね」
「くっ! ティア! あなたを許さない!」
鬱陶しい。それに面倒くさい。
こんな誰でもない女の相手をしている暇はない。
なにもかも失ったニーナは、もうわたくしの敵でもなんでもない。
「さようなら、ニーナ。これ以上不幸になりたくなければ二度と関わらないで」
「…………ティア! 覚えてなさい! 絶対に地獄を見せてやるッッ!」
殺意と憎悪を向けられたけど、わたくしには何も響かなかった。え、なにそれって感じ。なんでそんな被害者ヅラできるのかしら。
苦しかったのは、わたくしも同じ。
そもそも先に手を出したのは向こうなのだから、自業自得よ。
馬車へ戻り、ブレナム邸宅へ戻った。
これでもう邪魔者はいなくなった。
復讐代行のおかげで平和が取り戻せた。
邸宅へ戻ると、見知った顔の男性が立っていた。
「待っていましたよ、ティア」
「……あなた、なぜ」
一週間前に顔を合わせた程度だった。
そういえば、お父様と話をしていたところを見かけた。
「申し訳ない。侯爵殿にはお話をしてあったのですが」
「お父様に……そうでしたの。それで、あなたは?」
「申し遅れました。私はドノヴァン。現在は伯爵の地位を拝領しておりましてね。……ほら、約一か月前にダニエルが処刑されたではないですか。なので必然的に私の地位が上がったのですよ」
それでわざわざ挨拶をしに来たのね。
「……わたくしに何かご用件が?」
「ダニエルとあなたが婚約をしていたことは知っています」
「でしょうね。貴族の間では広まっていたことですから」
「では、今は独り身のはず。ティア、私と婚約していただきたい」
「……!?」
突然のことに驚いた。
そういうことね。お父様ってば、彼を次の候補にしたいわけね。……となると、そう簡単には断れない。
お父様は、わたくしの幸せを常に願っている。
これはきっと、わたくしの為の采配だ。
興味がないわけではない。
ダニエルを失ってから、ずっとひとりぼっち。寂しいと思うことが多い毎日。そろそろ相手を探したいと考えていた頃合いだった。
……そうね、一度くらいは考えてみてもいいかも。
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