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◆婚約破棄と復讐代行
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「ティア、君とは婚約破棄したい」
アスモデウス伯爵ダニエルはそう言った。
彼がなにを言っているのか、わたくしは一瞬分からなかった。理解が追い付かなかった。
「……ダニエル、なぜそんなことを言うのです」
「俺は本気だ。理由を話すつもりはないし、もう関わる気もないよ。さようなら、ティア」
不敵に笑うダニエルは、わたくしはの元を去っていく。
やっぱりそうなのね。
彼には浮気の証拠があった。
彼の部屋に入った時、偶然にも指輪が落ちていた。それは見たこともない指輪だった。
不安になったわたくしはダニエルを尾行した。
すると彼はわたくしはとは別の女性と……もう思い出すだけで悲しいし、怒りがこみあげてきた。
わたくしはダニエルを許せない。
復讐がしたい……。
どうすれば彼を追い詰めることができるの……?
ずっとずっと悩んだ。
ひとりでどうやってダニエルを葬ることができるのかと。
でも、なかなか良い案が思い浮かばなかった。
どう考えても、後々わたくしが重い罪を背負ってしまう。リスクが高すぎると思った。
そんなある日。
知人の女性から『復讐代行』なるものを教えてもらった。
ある男性に依頼すると、代わりに復讐を果たしてくれるのだという。
もちろん、高いお金が要求されるのだけど、わたくしはお金には困っていなかった。今はとにかく、あのダニエルに一泡吹かせたい。
結婚の為の資金だったお金を握りしめ、わたくしは復讐代行が住むという郊外へ。
馬車で向かい、ようやくたどり着いた。
こんな場所に住んでいるだなんて……。
家の方へ向かい、扉をノックした。
…………。
少し待つと中で反応があった。
扉が開き、そこには若い男性がいた。
「復讐を希望かな」
「……そうです。お金ならたくさんあります」
「分かった。では、詳しくは中で聞こう」
部屋の中へ案内され、わたくしは男性についていく。
椅子に座るよう言われ、従った。
「さっそくですが、ダニエルという男性貴族に復讐がしたいのです」
「ダニエル。もしや、アスモデウス伯爵のことかな」
「ご存じでしたか。そうです。彼に浮気され、婚約破棄され捨てられ……裏切られました。……今のままでは、わたくしは先へ進めない」
「相手が貴族ともなると相応の金額が必要だ」
「では、今所持しているお金を全て差し上げます」
「そこまでの覚悟か。いいだろう。引き受けた」
「お願いします。どうか、ダニエルに……死を」
お金を支払い、わたくしは席を立った。
依頼は完了した。
あとは待つだけ。
* * *
――数日後。
お庭で日光浴を嗜んでいると、知らない女性が無断で入ってきた。
「ティア! あなた! なんてことしてくれたの!」
「……? あなたは誰ですの」
「私はダニエルの婚約者よ!」
……そうなんだ。この女が。
でも、こんなに慌てているということは復讐が果たされたということかしら。
「で、なに?」
「ふざけないで! ダニエルが公開処刑されるのよ! たった今から!」
「へえ? それは吉報ね」
凄いわ。復讐代行。
まさかあのダニエルをそこまで追い詰めただなんて。
「どうしてくれるの! 私まで疑われているじゃない!」
「知らないですわ。それより、わたくしはダニエルの処刑を見に行きます」
喚きたてる女の横を通り過ぎて、わたくしは広場へ向かった。
すでに多くの観客で埋め尽くされていた。
断頭台にはダニエルの姿があった。
「助けてくれええぇぇ…………! お、俺は無実なんだ! ファフニール伯を殺してなどいない!! 本当だ!」
ファフニール伯?
ああ……そういえば数日前に殺人事件があったという。
その犯人がダニエルということになっているのね。
観客に紛れ込んで、ダニエルの最後を見守っているとあの復讐代行の男性がわたくしに声をかけてきた。
「ファフニール伯はでっちあげ。架空の人物さ」
「……そ、そうなのですか」
「だが、ちゃんと殺人事件となるよう死刑囚の遺体を使った。その犯人がダニエルということさ」
復讐代行……そこまでできるの。凄いわ。
そして、ついにダニエルは処刑された。
「うあああああああああぁぁぁぁ……」
最後まで惨めに泣き叫んでいた。
……わたくしを裏切るからそうなるのよ。
アスモデウス伯爵ダニエルはそう言った。
彼がなにを言っているのか、わたくしは一瞬分からなかった。理解が追い付かなかった。
「……ダニエル、なぜそんなことを言うのです」
「俺は本気だ。理由を話すつもりはないし、もう関わる気もないよ。さようなら、ティア」
不敵に笑うダニエルは、わたくしはの元を去っていく。
やっぱりそうなのね。
彼には浮気の証拠があった。
彼の部屋に入った時、偶然にも指輪が落ちていた。それは見たこともない指輪だった。
不安になったわたくしはダニエルを尾行した。
すると彼はわたくしはとは別の女性と……もう思い出すだけで悲しいし、怒りがこみあげてきた。
わたくしはダニエルを許せない。
復讐がしたい……。
どうすれば彼を追い詰めることができるの……?
ずっとずっと悩んだ。
ひとりでどうやってダニエルを葬ることができるのかと。
でも、なかなか良い案が思い浮かばなかった。
どう考えても、後々わたくしが重い罪を背負ってしまう。リスクが高すぎると思った。
そんなある日。
知人の女性から『復讐代行』なるものを教えてもらった。
ある男性に依頼すると、代わりに復讐を果たしてくれるのだという。
もちろん、高いお金が要求されるのだけど、わたくしはお金には困っていなかった。今はとにかく、あのダニエルに一泡吹かせたい。
結婚の為の資金だったお金を握りしめ、わたくしは復讐代行が住むという郊外へ。
馬車で向かい、ようやくたどり着いた。
こんな場所に住んでいるだなんて……。
家の方へ向かい、扉をノックした。
…………。
少し待つと中で反応があった。
扉が開き、そこには若い男性がいた。
「復讐を希望かな」
「……そうです。お金ならたくさんあります」
「分かった。では、詳しくは中で聞こう」
部屋の中へ案内され、わたくしは男性についていく。
椅子に座るよう言われ、従った。
「さっそくですが、ダニエルという男性貴族に復讐がしたいのです」
「ダニエル。もしや、アスモデウス伯爵のことかな」
「ご存じでしたか。そうです。彼に浮気され、婚約破棄され捨てられ……裏切られました。……今のままでは、わたくしは先へ進めない」
「相手が貴族ともなると相応の金額が必要だ」
「では、今所持しているお金を全て差し上げます」
「そこまでの覚悟か。いいだろう。引き受けた」
「お願いします。どうか、ダニエルに……死を」
お金を支払い、わたくしは席を立った。
依頼は完了した。
あとは待つだけ。
* * *
――数日後。
お庭で日光浴を嗜んでいると、知らない女性が無断で入ってきた。
「ティア! あなた! なんてことしてくれたの!」
「……? あなたは誰ですの」
「私はダニエルの婚約者よ!」
……そうなんだ。この女が。
でも、こんなに慌てているということは復讐が果たされたということかしら。
「で、なに?」
「ふざけないで! ダニエルが公開処刑されるのよ! たった今から!」
「へえ? それは吉報ね」
凄いわ。復讐代行。
まさかあのダニエルをそこまで追い詰めただなんて。
「どうしてくれるの! 私まで疑われているじゃない!」
「知らないですわ。それより、わたくしはダニエルの処刑を見に行きます」
喚きたてる女の横を通り過ぎて、わたくしは広場へ向かった。
すでに多くの観客で埋め尽くされていた。
断頭台にはダニエルの姿があった。
「助けてくれええぇぇ…………! お、俺は無実なんだ! ファフニール伯を殺してなどいない!! 本当だ!」
ファフニール伯?
ああ……そういえば数日前に殺人事件があったという。
その犯人がダニエルということになっているのね。
観客に紛れ込んで、ダニエルの最後を見守っているとあの復讐代行の男性がわたくしに声をかけてきた。
「ファフニール伯はでっちあげ。架空の人物さ」
「……そ、そうなのですか」
「だが、ちゃんと殺人事件となるよう死刑囚の遺体を使った。その犯人がダニエルということさ」
復讐代行……そこまでできるの。凄いわ。
そして、ついにダニエルは処刑された。
「うあああああああああぁぁぁぁ……」
最後まで惨めに泣き叫んでいた。
……わたくしを裏切るからそうなるのよ。
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