わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜

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グロスター最高議長の末路

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 グロスター最高議長の顔色が悪くなっていく。
 周囲から動揺やら疑惑が広がって、ますます立場が悪くなった。

「話を聞かせて貰いますよ、議長」
「ウィル……貴様ァ!!」

 ついに激昂した議長は、懐から隠しナイフを取り出してこちらに向けた。けれど、ウィルは目にも止まらぬ剣裁きで弾いた。
 ギンッと鈍い音が響く。
 カランとナイフが地面に落ちて、議員たちが怯えた。

「ぎ、議長! なにをするのですか!」「まさか本当に裏と繋がっているのか!?」「だとすれば、これは由々しき問題ですぞ!」「グロスター最高議長を解任すべきだ!」

 そんな声が上がった。
 ウィルは議長の喉元に剣を突きつけていた。

「ひぃ……! 騎士団長、この議長である私を殺す気か!?」
「もうあなたは議長ではありませんよ。あなたの娘の計画もここまでだ」
「む、娘は関係ない! あのフレンとかいうクズはどうでもいい……! ロレインだけは許してやってくれ!!」

「残念ですが……皇帝陛下はこうおっしゃられました。元老院の裏切者は即刻処刑せよと」
「ひぃ! やめろ、やめてくれ……!」

 剣を振り上げるウィル。
 まさか議長を本当に殺すの?

「ウィル……!」
「エレナ……この先、君は見ないで欲しい」
「ですが……」
「これはインペリウム帝国の為なんだ。このままでは被害が拡大する一方。俺は民を……なにより女性達を守りたい」


 そうだ。今にも罪のない女性達が連れ去られ酷い目に遭っているはず。止めなければならない。
 わたしは部屋から立ち去った。

 直後――。


『ぎゃああああああああああぁぁぁ…………!!』


 グロスター最高議長の断末魔が響き渡った。


 * * *


 少し経ってウィルが顔を出した。


「お待たせ、エレナ」
「……あの、議長は……」
「彼は死んだ。近い内に新しい議長が選出されるだろうね」

 少し悲しそうにウィルは言った。
 帝国の為とはいえ、最高議長を殺した。
 今、彼はきっと苦しんでいる。

「無理をなさらないで、ウィル様」
「ありがとう、エレナ。君が傍にいてくれるだけで俺は強くなれる」
「嬉しい。わたし、役に立てているのですね」
「もちろんだよ。許されるのなら、ずっと居てくれ」
「そ、それって……」
「もし、今回の事件が解決したら付き合ってくれないか」

 春のような暖かい視線に、わたしの心は奪われてしまった。わたしもウィルが傍にいるだけで元気が出るし、幸せだ。

 もうずっと前から返事は決まっている。
 いえ、返事をする必要もない。
 行動で示した。

 そっとウィルに抱きついて、彼の胸の中に顔を埋めた。彼は意外そうに、けれど優しく受け入れてくれた。
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