2 / 3
金の皇帝・プロテア
しおりを挟む
三日後、ホアキンのことをすっかり忘れて、わたしは日常を取り戻していた。このユーフォルビア帝国の皇帝・プロテア様に溺愛され、幸せしかなかった。
そんなある日。
今日はたまたま自分のお屋敷に戻っていた。
身の回りの整理をしていると、扉をノックする音が耳に入った。
「どうぞ、入ってください」
きっと迎えの騎士様だろうと思っていた。けれど、それは違った。扉の向こうから現れたのは見知らぬ女性だった。
高貴でとても綺麗なドレスに身を包む。
鋭い目つきでわたしを睨んで、こちらへ歩み寄ってきた。
「貴女がアイリスね」
「は、はい……。貴女は? 無断で家に上がらないで下さい」
「黙りなさい、この魔女め」
「……いきなり何ですか。失礼でしょう」
「よくもホアキンを牢屋に送ってくれたわね! おかげであの人は死刑よ」
まさか……この女性はホアキンが新しく見つけたというパートナーなの。どうして、家に。
「知りません。彼の自業自得です」
「なんですって! あんたのせいで私の人生メチャクチャよ! 責任取りなさいよ!」
「わたしだって被害者ですよ。恨むなら筋違いです。ホアキンを恨んで下さい」
「……そう、とぼける気。いいわ、あんたを魔女裁判にかけてやるッ! なにが聖女よ、この詐欺師!」
散々悪態をついて女性は去った。
魔女裁判……最近噂になっている。
帝国は魔女を排除していると。
主に元老院の決定みたいだけど……。
* * *
お城へ戻るとプロテア様自らお出迎えしてくれた。
「心待ちにしていたよ、アイリス! あぁ、今日も君の白銀の髪が神秘的で美しい」
「ありがとうございます、プロテア様。お忙しいのに……」
「そんなことはない。アイリス、君との時間がなによりも有意義。私の生きがいなんだ」「まあ、嬉しいです。陛下は本当にお優しくて素敵な方です」
優しく手を取ってくれる陛下は、お城の中へ連れていってくれる。
「ところで、君の家にアイナという女性が訪ねて来なかったかな」
「アイナ? もしかして……」
「そう、ホアキンと彼女は、つい最近まで付き合っていたんだ。君に秘密でね」
やっぱり、そうだったんだ……。
わたしの気持ちを裏切っていたんだ。
ずっと不審に思って、でも、考えないようにしていた。けれど、いつか我慢の限界がやってくる。それがつい一週間前だった。
なんとなく気づいていた。
そんなところを偶然通り掛かった陛下に助けられたんだ。
全てを知り、わたしは救われたような気がした。
「それで、そのアイナは……」
「安心するといい。彼女は“魔女”だった。捕まって、もう間もなく魔女裁判にかけられる」
「え……魔女だったんですか!?」
「そうとも。彼女は聖女である君を魔女にしたかったようだけど、私の目は誤魔化せなかった。いいかい、アイリス。私は君の危険を察知できる。なにがあっても必ず守ると約束しよう」
その言葉だけで、わたしの心は浄化されるようだった。なんて嬉しいの。陛下はもう手回しをしてくれていたのね。
そういえば、皇帝陛下には特殊な力があると聞いていた。確か、この帝国を象徴する『金の魔法』のはず。
魔女が使う『黒の魔法』は違法だけど、金の魔法は我々を正しく導き、敵を撃ち砕くとされていた。わたしの魔力・銀の魔法とはちょっと違うけど。でも、黒ではない。
そんなある日。
今日はたまたま自分のお屋敷に戻っていた。
身の回りの整理をしていると、扉をノックする音が耳に入った。
「どうぞ、入ってください」
きっと迎えの騎士様だろうと思っていた。けれど、それは違った。扉の向こうから現れたのは見知らぬ女性だった。
高貴でとても綺麗なドレスに身を包む。
鋭い目つきでわたしを睨んで、こちらへ歩み寄ってきた。
「貴女がアイリスね」
「は、はい……。貴女は? 無断で家に上がらないで下さい」
「黙りなさい、この魔女め」
「……いきなり何ですか。失礼でしょう」
「よくもホアキンを牢屋に送ってくれたわね! おかげであの人は死刑よ」
まさか……この女性はホアキンが新しく見つけたというパートナーなの。どうして、家に。
「知りません。彼の自業自得です」
「なんですって! あんたのせいで私の人生メチャクチャよ! 責任取りなさいよ!」
「わたしだって被害者ですよ。恨むなら筋違いです。ホアキンを恨んで下さい」
「……そう、とぼける気。いいわ、あんたを魔女裁判にかけてやるッ! なにが聖女よ、この詐欺師!」
散々悪態をついて女性は去った。
魔女裁判……最近噂になっている。
帝国は魔女を排除していると。
主に元老院の決定みたいだけど……。
* * *
お城へ戻るとプロテア様自らお出迎えしてくれた。
「心待ちにしていたよ、アイリス! あぁ、今日も君の白銀の髪が神秘的で美しい」
「ありがとうございます、プロテア様。お忙しいのに……」
「そんなことはない。アイリス、君との時間がなによりも有意義。私の生きがいなんだ」「まあ、嬉しいです。陛下は本当にお優しくて素敵な方です」
優しく手を取ってくれる陛下は、お城の中へ連れていってくれる。
「ところで、君の家にアイナという女性が訪ねて来なかったかな」
「アイナ? もしかして……」
「そう、ホアキンと彼女は、つい最近まで付き合っていたんだ。君に秘密でね」
やっぱり、そうだったんだ……。
わたしの気持ちを裏切っていたんだ。
ずっと不審に思って、でも、考えないようにしていた。けれど、いつか我慢の限界がやってくる。それがつい一週間前だった。
なんとなく気づいていた。
そんなところを偶然通り掛かった陛下に助けられたんだ。
全てを知り、わたしは救われたような気がした。
「それで、そのアイナは……」
「安心するといい。彼女は“魔女”だった。捕まって、もう間もなく魔女裁判にかけられる」
「え……魔女だったんですか!?」
「そうとも。彼女は聖女である君を魔女にしたかったようだけど、私の目は誤魔化せなかった。いいかい、アイリス。私は君の危険を察知できる。なにがあっても必ず守ると約束しよう」
その言葉だけで、わたしの心は浄化されるようだった。なんて嬉しいの。陛下はもう手回しをしてくれていたのね。
そういえば、皇帝陛下には特殊な力があると聞いていた。確か、この帝国を象徴する『金の魔法』のはず。
魔女が使う『黒の魔法』は違法だけど、金の魔法は我々を正しく導き、敵を撃ち砕くとされていた。わたしの魔力・銀の魔法とはちょっと違うけど。でも、黒ではない。
10
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
黒の聖女、白の聖女に復讐したい
夜桜
恋愛
婚約破棄だ。
その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。
黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。
だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。
だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。
※イラストは登場人物の『アインス』です
聖騎士様から溺愛される幸せな結婚生活
夜桜
恋愛
婚約破棄され湖に捨てられた公爵令嬢イリス・バレンタイン。
相手の伯爵の悪行を暴き、聖騎士ロイドの助けもあって制裁を下す。
二人はいつしか惹かれ合い、イリスとロイドは幸せな結婚生活を送る。
宮廷伯令嬢は先回りできるんです
夜桜
恋愛
特殊な能力『先回り』を持つ宮廷伯令嬢フィラは、なんでも先回りして危険を回避。人生をイージーモードで進んでいた。ある日、辺境伯ウィルソンと婚約。彼を信じ切ってはいたけどフィラは不安があった。苦渋の選択の中、フィラは先回りをする。
すると、ウィルソンは既に婚約破棄しようとしていた――。
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
聖女にはなれませんよ? だってその女は性女ですから
真理亜
恋愛
聖女アリアは婚約者である第2王子のラルフから偽聖女と罵倒され、婚約破棄を宣告される。代わりに聖女見習いであるイザベラと婚約し、彼女を聖女にすると宣言するが、イザベラには秘密があった。それは...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる