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婚約破棄

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 不幸な体質が続き、幸せなど一度もなかった。
 いつしか伯爵と婚約を交わしていた。望まぬ結婚なのに……お見合いだなんて。お父様は何を考えているの。

 わたしは我儘を通して、婚約を破棄。
 けれど、それがいけなかった。

 嫌な噂が流れ、周囲の令嬢から投石など嫌がらせを受けるようになった。

 そんな災難の中、男性が現れ助けてくれた。

「君、大丈夫かい」
「あ、ありがとうございます……って、ブルース!?」
「おや。君はエイラかい」


 お互いに顔を見合わせる。


 あの銀髪は間違いない。
 彼もわたしの瞳をじっと見つめ、懐かしそうに微笑む。


「はい、わたしはエイラです。久しぶりですね」
「そうだな、懐かしいよ。でも、石を投げられるだなんて穏やかじゃないね」


 わたしは、伯爵と婚約破棄した事実を伝えた。
 その事をブルースは笑わず聞いてくれた。


「――というわけなんです」
「そうか、それは辛かったね。僕が傍にいてあげれれば良かったんだけど、隣国の学院で教授をやっているからね」

 ブルースは、大国の有名教授だった。
 若いのに凄くて有名人。
 彼に教えを乞う女性も多いのだとか。


「そうでしたか、この国にはしばらく?」
「うん。もう少しいるつもり。……あ! また石が!」


 また石が投げられ、飛んできた。それをキャッチあるいは払おうとするけど、間に合わない。もうわたしにぶつかる寸前だった。

 ……いやっ!

 せめて頭を守ろうと必死に抱える。

 もうなんで、わたしばかり不幸な目に……!

 でも、なぜか石はピタリと止まった。


「あれ……」


 よく見ると、石は透明な壁に阻まれていた。次第に石は弾かれ、投げて来た令嬢の方へ跳ね返した。まるで反射するように石はゴツンと彼女へ。


「きゃああああああっ!!」


 え……何が起きたの?
 どうして石が勝手に跳ね返っていったの?

 周囲で見守っていた女性たちも、ざわつく。


「え? なんで??」「エイラに石が当たったと思ったのに」「なに、なんなの?」
「こうなったら全員で石を投げましょ!」「そうね、そうしましょ!!」


 今度は五人が一斉に投げてきた。
 でも、やっぱり石は跳ね返った。


「きゃああ!」「いったああ!」「ち、血がっ」「うそぉ、なんでえ!?」「こんなの反則よ!!」


 とうとう気味悪がって令嬢たちは去っていく。なんだったの?


「エイラ、無事かい!?」
「は、はい、ブルース。わたしは無傷です。なぜでしょう?」
「これは驚いた。今のは『反射魔法』だ。僕がずっと研究している不思議な魔法だ」

「ま、魔法?」

「ああ、君の不幸を跳ね返せれないかと、ずっと研究していた」
「わたしの為に?」

「実はそうなんだ。だから、疎遠になっちゃってごめんね」


 そうだったんだ。
 わたしの為に隣国へ行ってまで研究を……嬉しい。
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