裏切者には神罰を

夜桜

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婚約破棄

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 伯爵であるハンスは、珍しく料理をすると言いキッチンへ向かった。怪しんだわたしはこっそり後をつけた。そこで目撃した『毒』の入った小瓶こびん
 背後から鈍器で殴られるような激しいショックを受けた。
 ハンスは、わたしを毒殺する気だったのだ。

 ヒドイ! どうしてそんなことができるの!

 理由は分からなかったけど以降、わたしは暗殺されかけたし、撲殺や絞殺……大胆に刺殺までされそうになった。


「――ぐっ、なぜだ」


 床にひざをつき、残念そうに唇をむハンス。その表情には殺意しかなかった。どうしてそこまで、わたしを殺したがるのか分からなかった。

「馬鹿ね、ハンス」
「フィリス! なぜ、お前を殺せない!」

 ついにはそんなことを言い出す。もう隠す気ゼロじゃない。

「ええ、わたしを殺すことは不可能」
「お前は人間じゃない! 悪魔だ! 婚約破棄する……!」

「ご自由に。でもね、わたしを拒絶した以上は相応の神罰を受けてもらうわ」

 今まで散々愛し合ったのに、この一週間は殺されかけてばかりだった。もうウンザリよ。こんな最低のクズ男。こちらから願い下げ。もういい。
 彼がここまでわたしを殺したがっている理由も昨日分かった。

 ハンスは、わたしとは別の女性と結婚したがっていた。それが決定打となった。


 この裏切者…………!


「なにが神罰だ。フィリス、お前ごとき女に何ができる。そもそもお前はなんだ……なぜ死なない。不死身なのか!」


 不気味そうにわたしを見つめるハンスは、少しおびえていた。そうね、その秘密を明かすワケにはいかないけれど、わたしには力がある。

 “時を停める”という、神の御業スキル

 だから今までの蛮行ばんこうを止め、神回避していたのだ。殺されることなく、無事に過ごせた。昨日はハンスの浮気まで判明できた。

 この力に目覚めたのは一年前からだった。
 どうして能力が発現したのか分からない。でも、きっと神様がくれた力。おかげでハンスの愚行ぐこうが判明したのだから感謝している。

 さあて、今度はこちらの番ね。

 この力を使い、ハンスに復讐ふくしゅうしてやるわ。
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