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消し去る力
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「やめるんだ、ヴァレリア!」
「フェイルノート。どうして、クリスを庇うの。ソイツと仲良くするなんて許せないわ」
怒りをにじませる口調でヴァレリアはそんな風に言った。もしかして、わたくしとフェイルノートが仲良くしているのが気に食わないだけ……?
そんなことで!
「こっちに来るな」
短剣をヴァレリアに向けるフェイルノート。けれど、彼女はまったく怯まず堂々と歩んできた。……恐れを知らないの?
ついに刃の先端の前に。
「フェイルノート、まずは貴方から記憶を消さなきゃね」
「……なに?」
指を鳴らすヴァレリア。たったそれだけの動作だったのに、フェイルノートは短剣を落として、ぼうっとしていた。
「どうしたの、フェイルノート!」
「…………? 君は誰だい?」
「え……」
その言葉が信じられなかった。
まるで初対面かのような。
「成功ね」
「フェイルノートになにをしたの!」
「忘却の魔法をかけたの」
「魔法……?」
「そう。でもこの魔法は一生でたった三回しか使えないの。でも、使い道なんて今くらいしか浮かばなかった」
そう言って、ヴァレリアはわたくしの方へ向かってくる。怖くなって逃げようとするけれど、彼女は腕を掴んできた。
「……!」
「逃がさないわ、クリス。あなたを八つ裂きにしてあげたいところだけれど……さすがに辺境伯に目をつけられるのは面倒だわ」
あの男に仕える執事が特に厄介だからと、ヴァレリアは笑う。……なんて女なの!
でも逃げられない。力の差がありすぎて……。
「わたくしの記憶も消す気なの!」
「当然よ。あんたなんか全部忘れてしまいなさい」
パチンと指を鳴らすヴァレリア。
「………………」
……あれ。
わたくしは誰?
なんでこんな場所にいるの?
え、この人たちは誰なの?
――その後、お父様が助けに来てくれた。安堵して、わたくしはわんわん泣いた。知らない男の子も帰っていった。
あと近くにいたような女の子。
……誰、だっけ。
* * * * *
ああ、そうだ。
わたくしはヴァレリアと会っていた。この森で。
忘却の魔法をかけられ、自分もフェイルノートも互いのことを忘れてしまったんだ。なんてことを……!
でも、ようやく思い出した。全てを。
「……どうやら思い出したようだね」
「はい、ルドラ様」
「以前、兄さんは戦死したと言ったけど……実は不審な点があったんだ」
独白するようにルドラは戦時中のことを明かしてくれた。
半年前。
フェイルノートは、騎士団長としてセンチフォリア帝国とエルドリア王国の国境沿いへ向かった。
その草原で戦ったようだけど、馬に乗ったまま動かず――フェイルノートは背後から剣で一突きにされたようだった。
しかもその人物が不明だという。
「馬に乗ったままって……変ですよ」
「ああ、近くにいた騎士によれば乱戦の最中だったらしい」
つまり、混乱に乗じて殺されたということね。戦争なのだから当然かもしれないけど、でも動かずっておかしい。
「推測なのですが、その場にヴァレリアがいて……忘却の魔法をかけたとか」
「ありえるかもね。あの女ならやりかねん」
と、ルドラもその可能性を疑っていた。
ヴァレリアはとんでもない女。
早くなんとかしないと、またわたくし達を襲ってくるかもしれない。
「フェイルノート。どうして、クリスを庇うの。ソイツと仲良くするなんて許せないわ」
怒りをにじませる口調でヴァレリアはそんな風に言った。もしかして、わたくしとフェイルノートが仲良くしているのが気に食わないだけ……?
そんなことで!
「こっちに来るな」
短剣をヴァレリアに向けるフェイルノート。けれど、彼女はまったく怯まず堂々と歩んできた。……恐れを知らないの?
ついに刃の先端の前に。
「フェイルノート、まずは貴方から記憶を消さなきゃね」
「……なに?」
指を鳴らすヴァレリア。たったそれだけの動作だったのに、フェイルノートは短剣を落として、ぼうっとしていた。
「どうしたの、フェイルノート!」
「…………? 君は誰だい?」
「え……」
その言葉が信じられなかった。
まるで初対面かのような。
「成功ね」
「フェイルノートになにをしたの!」
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「魔法……?」
「そう。でもこの魔法は一生でたった三回しか使えないの。でも、使い道なんて今くらいしか浮かばなかった」
そう言って、ヴァレリアはわたくしの方へ向かってくる。怖くなって逃げようとするけれど、彼女は腕を掴んできた。
「……!」
「逃がさないわ、クリス。あなたを八つ裂きにしてあげたいところだけれど……さすがに辺境伯に目をつけられるのは面倒だわ」
あの男に仕える執事が特に厄介だからと、ヴァレリアは笑う。……なんて女なの!
でも逃げられない。力の差がありすぎて……。
「わたくしの記憶も消す気なの!」
「当然よ。あんたなんか全部忘れてしまいなさい」
パチンと指を鳴らすヴァレリア。
「………………」
……あれ。
わたくしは誰?
なんでこんな場所にいるの?
え、この人たちは誰なの?
――その後、お父様が助けに来てくれた。安堵して、わたくしはわんわん泣いた。知らない男の子も帰っていった。
あと近くにいたような女の子。
……誰、だっけ。
* * * * *
ああ、そうだ。
わたくしはヴァレリアと会っていた。この森で。
忘却の魔法をかけられ、自分もフェイルノートも互いのことを忘れてしまったんだ。なんてことを……!
でも、ようやく思い出した。全てを。
「……どうやら思い出したようだね」
「はい、ルドラ様」
「以前、兄さんは戦死したと言ったけど……実は不審な点があったんだ」
独白するようにルドラは戦時中のことを明かしてくれた。
半年前。
フェイルノートは、騎士団長としてセンチフォリア帝国とエルドリア王国の国境沿いへ向かった。
その草原で戦ったようだけど、馬に乗ったまま動かず――フェイルノートは背後から剣で一突きにされたようだった。
しかもその人物が不明だという。
「馬に乗ったままって……変ですよ」
「ああ、近くにいた騎士によれば乱戦の最中だったらしい」
つまり、混乱に乗じて殺されたということね。戦争なのだから当然かもしれないけど、でも動かずっておかしい。
「推測なのですが、その場にヴァレリアがいて……忘却の魔法をかけたとか」
「ありえるかもね。あの女ならやりかねん」
と、ルドラもその可能性を疑っていた。
ヴァレリアはとんでもない女。
早くなんとかしないと、またわたくし達を襲ってくるかもしれない。
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