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深い森の中で

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【深い森】

 どんどん闇が深くなる。
 快晴にも関わらず、森の中は薄暗くて不気味。
 空気もなんだか冷たくて肌寒い。
 ひゅうひゅうと吹く風が背筋を凍らせる。

「大丈夫かい、クリス」
「はい……」

 目的地まであと少し。子供ながらによくもまあ、こんな奥まで入ったものだ。あの後、お父様に怒られたけど。

 馬はゆっくりと歩いて、一点の光が差す方向へ向かった。

 あの奥だけ光がエンジェルラダーのようになっていた。神秘的。


「あそこだね」
「そうです。あの場所でフェイルノート様と遊びました。そして……なにかあったんです」

「ふむ」

 ついに到着。
 邸宅いえから結構離れた場所。モンスターが現れてもおかしくないような危険地帯。
 ついに広場に出た。
 本当にこの場所だけが太陽の恩恵を受けていた。なぜ、どうして……不思議ね。


「…………」


 わたくしは、その場で立ちくらみがした。
 なにか昔の記憶をフラッシュバックしたような。

 ――ああ、これは。


 * * * * *


【10年前】

 フェイルノートは、護身用に持っていた短剣を振るった。
 複数いる内の一匹のモンスターを倒した。


『…………!』


 目の前にはオオカミ系のモンスターが、わたくし達を狙う。


「フェイルノート……」
「大丈夫だよ、クリス。ヴァレリアの引き連れてきたモンスターなんて、この俺が倒す」

 今日はフェイルノートと遊んでいた。深い森へ入るとヴァレリアという少女が現れ、いきなりモンスターを使ってわたくしに襲わせた。
 彼女は、わたくしと同じでフェイルノートの邸宅いえに遊びにて来ただけなのに。

 なぜあんなことを……。

 とても怖い。
 でも、フェイルノートがいて良かった。
 彼がわたくしを守ってくれた。
 素早い動きでオオカミを次々に倒し、場は収まった。

「すごいです、フェイルノート」
「僕の才能なんてこれくらいさ」

 素敵。もし叶うのなら将来結婚して欲しい。そう思った。
 けれど、ヴァレリアはまたしても現れ、邪魔をしてきた。

「クリス! まだ死んでいないようね!」
「あなた……!」

 ヴァレリア……どうしてこんなことをするの!
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