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二人きりで

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 街中を馬車で回っていく。
 馬車内は向かい席。ルドラと見つめ合うようにして話に花を咲かせていく。
 稀に流れる風景も楽しみ――そして、ある場所で馬車は車輪を止めた。

「着いたようだ」

 ルドラは、予めバルザックに場所を伝えていたらしい。
 ここはいったい……?

 馬車を降りると、目の前には立派な建物があった。我がミステル邸と同等の大きさと広さを誇る邸宅うち

 ああ、そうか。

 見せたいものとは『ルドラの家』だったのだ。


「とても綺麗な家ですね」
「ありがとう、クリス」


 花壇にはサイネリアがほとんど。青くて綺麗。若干、紫色も咲いている。


「美しいお花ですね」
「兄が君の為に育てていたんだ。いつか見せたいと言っていたよ」

「……そうだったのですね」


 なんだか複雑な気分に陥る。


「気にしなくていい。今こうして見てもらえているのだからね。天国の兄も喜んでいるはずだ」


 そうね、きっと。

 サイネリアを堪能して邸宅いえの中へ。
 誰かに迎えられることはなかったけれど、静かな空間が出向かえてくれた。


「ではお嬢様、私は馬車にて」
「ありがとう、バルザック」


 執事と別れ、わたくしはついにルドラと二人きりに。

 ……!

 そっか。彼の家で二人きりなんだ……嬉しい。今日は楽しい日になりそう。
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