16 / 35
騎士団長フェイルノートのお誘い
しおりを挟む
たくさんの騎士に婚約を求められ、わたくしは嬉しくて眩暈がした。こんな風に求められることは初めてではないけれど、これはあまりに多すぎる。
それに、わたくしにはルドラがいるから。
「ごめんなさい」
そう一言を添えると、女性貴族たちは――。
「わぁ、最低ね!」「なによ、あれ」「カンジ悪くない?」「やっぱりクリスってお高くとまっているのね」「引くわー」
などなど嫌味が飛んでくる。けれどスルーした。どうでもいいわ。
騎士たちも落胆するかと思いきや。
「やはりそうであったか!」「クリス様の防御は鉄壁。難攻不落と聞く」「そうだな、これだけ美しいのだ……致し方あるまい」「彼女の心はルドラ様に奪われているということか……無念」「申し訳なさそうにするクリス様もいい!」
予想外の反応に、わたくしは困惑した。
えぇ……。
そんな騎士たちの納得の裏で、女性貴族たちは「キーッ!」と悔しがっていた。……だから、そんな睨まれても。
もうこの場にいない方がいい。
そう考えたわたくしは、大広間を去ろうとした。
背を向けたその先で、誰かとぶつかった。
「…………」
顔をあげると、そこには仮面の騎士が。
まるで仮面舞踏会で覆うような美しい仮面だった。素顔は分からないけど、背が高くて男性だと理解できた。
「あの、ごめんなさい」
「……いいのですよ」
……あら。
この声、どこかで。
「こ、これは……!」「フェイルノート騎士団長!」「全員道を開けよ」
と、騎士たちの表情が硬くなる。
この方が騎士団長のフェイルノート。
はじめてみた。
唯一分かるのは背が高くて、騎士団長らしい荘厳な鎧に身を包んでいること。それと黒髪で仮面をしているということ。
なんだか不思議な人だなと、わたくしは思った。
「よい。それより、クリス様。ようこそ騎士団へ来られた」
「あ、あの……はい」
「よければ、私と二人きりで話をしないか」
「え……」
その瞬間に、女性貴族たちがまた憎悪をわたくしに放つ。
「なんでよっ!」「フェイルノート様、それはないでしょう!」「クリスなんかダメですよ!」「そ、そのクリスはやめた方が……」「ちょ、ありえないわ」
そんな抗議にフェイルノートは耳を貸さず、わたくしの手を取る。
あれ、この感じ。
もしかして彼は……ルドラなの?
それに、わたくしにはルドラがいるから。
「ごめんなさい」
そう一言を添えると、女性貴族たちは――。
「わぁ、最低ね!」「なによ、あれ」「カンジ悪くない?」「やっぱりクリスってお高くとまっているのね」「引くわー」
などなど嫌味が飛んでくる。けれどスルーした。どうでもいいわ。
騎士たちも落胆するかと思いきや。
「やはりそうであったか!」「クリス様の防御は鉄壁。難攻不落と聞く」「そうだな、これだけ美しいのだ……致し方あるまい」「彼女の心はルドラ様に奪われているということか……無念」「申し訳なさそうにするクリス様もいい!」
予想外の反応に、わたくしは困惑した。
えぇ……。
そんな騎士たちの納得の裏で、女性貴族たちは「キーッ!」と悔しがっていた。……だから、そんな睨まれても。
もうこの場にいない方がいい。
そう考えたわたくしは、大広間を去ろうとした。
背を向けたその先で、誰かとぶつかった。
「…………」
顔をあげると、そこには仮面の騎士が。
まるで仮面舞踏会で覆うような美しい仮面だった。素顔は分からないけど、背が高くて男性だと理解できた。
「あの、ごめんなさい」
「……いいのですよ」
……あら。
この声、どこかで。
「こ、これは……!」「フェイルノート騎士団長!」「全員道を開けよ」
と、騎士たちの表情が硬くなる。
この方が騎士団長のフェイルノート。
はじめてみた。
唯一分かるのは背が高くて、騎士団長らしい荘厳な鎧に身を包んでいること。それと黒髪で仮面をしているということ。
なんだか不思議な人だなと、わたくしは思った。
「よい。それより、クリス様。ようこそ騎士団へ来られた」
「あ、あの……はい」
「よければ、私と二人きりで話をしないか」
「え……」
その瞬間に、女性貴族たちがまた憎悪をわたくしに放つ。
「なんでよっ!」「フェイルノート様、それはないでしょう!」「クリスなんかダメですよ!」「そ、そのクリスはやめた方が……」「ちょ、ありえないわ」
そんな抗議にフェイルノートは耳を貸さず、わたくしの手を取る。
あれ、この感じ。
もしかして彼は……ルドラなの?
55
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
余命わずかな私は家族にとって邪魔なので死を選びますが、どうか気にしないでくださいね?
日々埋没。
恋愛
昔から病弱だった侯爵令嬢のカミラは、そのせいで婚約者からは婚約破棄をされ、世継ぎどころか貴族の長女として何の義務も果たせない自分は役立たずだと思い悩んでいた。
しかし寝たきり生活を送るカミラが出来ることといえば、家の恥である彼女を疎んでいるであろう家族のために自らの死を願うことだった。
そんなある日願いが通じたのか、突然の熱病で静かに息を引き取ったカミラ。
彼女の意識が途切れる最後の瞬間、これで残された家族は皆喜んでくれるだろう……と思いきや、ある男性のおかげでカミラに新たな人生が始まり――!?
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
愛を疑ってはいませんわ、でも・・・
かぜかおる
恋愛
王宮の中庭で見かけたのは、愛しい婚約者と私じゃない女との逢瀬
さらに婚約者は私の悪口を言っていた。
魅了で惑わされた婚約者への愛は消えないけれど、
惑わされる前と変わらないなんて無理なのです・・・。
******
2021/02/14 章の名前『後日談』→『アザーズ Side』に変更しました
読んで下さりありがとうございます。
2020/5/18 ランキング HOT 1位 恋愛 3位に入らせていただきました。
O(-人-)O アリガタヤ・・
コメントも感謝です。
とりあえず本編の方の更新を優先させていただきますので、申し訳ありませんがコメントの返答遅くなります。
妹がいるからお前は用済みだ、と婚約破棄されたので、婚約の見直しをさせていただきます。
あお
恋愛
「やっと来たか、リリア。お前との婚約は破棄する。エリーゼがいれば、お前などいらない」
セシル・ベイリー侯爵令息は、リリアの家に居候しているエリーゼを片手に抱きながらそう告げた。
え? その子、うちの子じゃないけど大丈夫?
いや。私が心配する事じゃないけど。
多分、ご愁傷様なことになるけど、頑張ってね。
伯爵令嬢のリリアはそんな風には思わなかったが、オーガス家に利はないとして婚約を破棄する事にした。
リリアに新しい恋は訪れるのか?!
※内容とテイストが違います
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる