公爵令嬢の白銀の指輪

夜桜

文字の大きさ
上 下
5 / 6

指輪の力

しおりを挟む
 白銀の指輪を受け取り、左手の人差し指にめた。念じれば効力を発揮すると教えてもらった。これで、わたしはもう無敵にも近い。

 お城を後にして、さっそく騎士団へ向かった。

 早くしないとヘイズが自由になってしまう。保釈される前に止めなければ。


 キリエ城から騎士団はそれほど遠くはない。
 徒歩で到着して、わたしは門番の騎士に話しかけた。


「そこの貴方」
「はい、ご用件はなんでしょうか」
「騎士団長に会いたいの。大至急でお願い」

「騎士団長ですか……分かりました。少々お待ち下さい」


 しばらく待つと門番が帰ってきた。
 それから中へ案内してくれて、すんなり会うことができた。

 通路を歩いて会議室らしき場所へ通されると、そこには赤髪の男性が立っていた。


「やはり、公爵令嬢のエリザ様でしたか」
「わたしを知っていたのですね」
「毒殺未遂事件がありましたからね。やはり、伯爵の件ですか?」
「そうです。彼は多額のお金を払って保釈されるそうですね」

「その通り、明日には自由になります。ですが、誤解なきよう言っておきますが、完全な自由ではないですよ。監視の騎士が二名つきますし、逃亡の恐れなどあれば問答無用で処刑されますからね」

 なるほど。とはいえ、自由には変わりない。犯罪者を伸ばしになんてさせない。


「ヘイズに会わせてください」
「面会を希望ですか。……ですが、彼は何も喋らないと思いますが」
「大丈夫です。ヘイズは全てを打ち明けてくれるでしょう。悪事の全てをね」
「あの御方が簡単に口を割るとは考えにくいですね」

「それは会えば分かることです。騎士団長、貴方にも同行していただきたい」
「しかし……。いえ、分かりました。公爵令嬢エリザ様がそこまでおっしゃるのなら、ヘイズに会ってみましょう」


 ようやく折れてくれた騎士団長。
 そういえば、まだ名前も聞いていないけど先を急ぎたい。


 * * *


 留置所へ向かうと、かなり隅の方にヘイズの姿があった。

「…………」

 こちらを凝視する男。
 まさか、ここにわたしが来るとは思わなかったみたいね。

「久しぶりね、ヘイズ」
「な、なにをしに来た……エリザ」

「なにって事件の解決をしに来たの。全て話してもらうから」
「話す? お前に話すことなんて何もないよ。それに、明日には保釈だ。殺人の罪としては異例のね」

 ニヤリと笑うヘイズだけれど、わたしは“白銀の指輪”にそっと触れ、冷静に言葉を返した。

「ヘイズ、貴方には話してもらうと言った」
「……だから、俺もうなにも話さな――」

 その時、指輪が微かに煌めき、ヘイズの様子が変わった。

「包み隠さず真実を明かしなさい」
「…………俺がやった。これまでの五件の事件……全て俺が毒を盛った」

 あれだけ口の堅かったヘイズが素直に薄情する。
 まるで罪の告白――懺悔をするみたいに、ヘイズはありのままを話し始めた。それを騎士団長は驚きながらも聞き入っていた。

 そして、こうつぶやいた。


「……保釈は取り消しだ」


 これが指輪の力なのね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】4公爵令嬢は、この世から居なくなる為に、魔女の薬を飲んだ。王子様のキスで目覚めて、本当の愛を与えてもらった。

華蓮
恋愛
王子の婚約者マリアが、浮気をされ、公務だけすることに絶えることができず、魔女に会い、薬をもらって自死する。

私には婚約者がいた

れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・? *かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#) *なろうにも投稿しています

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

想い合っている? そうですか、ではお幸せに

四季
恋愛
コルネリア・フレンツェはある日突然訪問者の女性から告げられた。 「実は、私のお腹には彼との子がいるんです」 婚約者の相応しくない振る舞いが判明し、嵐が訪れる。

私知らないから!

mery
恋愛
いきなり子爵令嬢に殿下と婚約を解消するように詰め寄られる。 いやいや、私の権限では決められませんし、直接殿下に言って下さい。 あ、殿下のドス黒いオーラが見える…。 私、しーらないっ!!!

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

【完結】「図書館に居ましたので」で済む話でしょうに。婚約者様?

BBやっこ
恋愛
婚約者が煩いのはいつもの事ですが、場所と場合を選んでいただきたいものです。 婚約破棄の話が当事者同士で終わるわけがないし こんな麗かなお茶会で、他の女を連れて言う事じゃないでしょうに。 この場所で貴方達の味方はいるのかしら? 【2023/7/31 24h. 9,201 pt (188位)】達成

愛を乞うても

豆狸
恋愛
愛を乞うても、どんなに乞うても、私は愛されることはありませんでした。 父にも母にも婚約者にも、そして生まれて初めて恋した人にも。 だから、私は──

処理中です...