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第3章「柊南帆は凄く頑張り屋」
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オリエンテーション合宿当日。
オレは教室に入ると数人のクラスメイトと挨拶を交わした後、改めてクラスを見回す。
蟻塚の姿はやはりない。
まあ、期待はしてなかったけどな。
「おいっす~」
席に座るや否や、気の抜けるような挨拶をしてきたのは橘だ。
「眠たそうな顔してるな」
「気になってたアニメ一気見してたら朝になっててさ~。ふぁ……」
「先が気になると止まらなくなるよな」
「そうなんだよね~」
「最近のオススメは?」
「最近か~。言うて全部チェックしてる訳じゃないよ?最近だと『異世界で始める悪役令嬢生活』と『引きこもりの勇者と陽キャの魔王』くらいじゃない?級長もアニメとか見るの?」
「前は見てたけど最近のには疎い」
「へえ~、意外だな~」
そう言いつつ、橘は机に突っ伏し寝る体勢に入る。
「バスに行きそうになったら起こしてもろて~」
「あいよ」
あれから1週間くらい経ち、なんとなく橘の人柄が分かってきた気がする。
自由奔放で、自分の興味のあることには一直線。
でも、その反面、興味のない事にはとことん無関心。
そして、可愛い女の子好きである。
「やっぱり蟻塚は来てないか」
続いて机にガタンと大きめの鞄を下ろしながら現れたのは矢渕だった。
「まあ、目障りな奴がいても面白くないしね」
「……前から随分と敵視してるけど蟻塚と何かあったのか?」
「言ったでしょ?幅きかせてんのが気に食わないって。アイツ自身は何も凄くねーのに」
確かに、とは思う。
仲間がいない今の蟻塚は特に威圧もなく、教室の隅で大人しくしている。
そのせいか、最近の教室内の空気は落ち着いていて過ごしやすい。
皆、蟻塚に興味がなくなったわけでもないだろうが、もはや最初からいないものとして扱っている奴もいるくらいだ。
そんな中で、矢渕だけは未だに蟻塚に噛み付いていた。
それが単に気に食わないからなのか、それとも何か他に理由があるのかは分からないが、どうにもその様子は蟻塚への憎悪というよりは何か別のものに感じられるだ。
「柊ちゃんも凄いよね。毎日のように蟻塚に話し掛けてたんだから。その度に睨まれて泣きそうになってたけど」
「柊は強いからな」
「……」
「なんだよ?」
「いや?勘違いしてるみたいだから言うけど多分柊ちゃんだけだったらすぐに折れて諦めてるよ。アイツはそんなに強くない」
「そうか?結構頑張ってるように見えるけどな」
「……お前がいるからだっつの」
「?」
小さい声でよく聞き取れなかったが、まあ、いいか。
とにかくこの4人なら何も心配いらないだろう。初めての学校行事だ。オレなりに楽しむとしよう。
「邪魔」
と、教室の入り口から声がする。
そこには、屯するクラスメイトを気怠そうな目で見下す蟻塚の姿があった。
慌てて道を開けるクラスメイト達。
「……」
蟻塚はため息混じりに彼らの前を通ると、そのまま自分の席に座る。
「へえー、あの蟻塚がねえ」
驚く矢渕を他所にオレは頬杖をついて蟻塚を見る。
「ただの楽しい合宿じゃ終わりそうにないな」
オレは何となくそう予感した。
がんばれ、柊。
オレは教室に入ると数人のクラスメイトと挨拶を交わした後、改めてクラスを見回す。
蟻塚の姿はやはりない。
まあ、期待はしてなかったけどな。
「おいっす~」
席に座るや否や、気の抜けるような挨拶をしてきたのは橘だ。
「眠たそうな顔してるな」
「気になってたアニメ一気見してたら朝になっててさ~。ふぁ……」
「先が気になると止まらなくなるよな」
「そうなんだよね~」
「最近のオススメは?」
「最近か~。言うて全部チェックしてる訳じゃないよ?最近だと『異世界で始める悪役令嬢生活』と『引きこもりの勇者と陽キャの魔王』くらいじゃない?級長もアニメとか見るの?」
「前は見てたけど最近のには疎い」
「へえ~、意外だな~」
そう言いつつ、橘は机に突っ伏し寝る体勢に入る。
「バスに行きそうになったら起こしてもろて~」
「あいよ」
あれから1週間くらい経ち、なんとなく橘の人柄が分かってきた気がする。
自由奔放で、自分の興味のあることには一直線。
でも、その反面、興味のない事にはとことん無関心。
そして、可愛い女の子好きである。
「やっぱり蟻塚は来てないか」
続いて机にガタンと大きめの鞄を下ろしながら現れたのは矢渕だった。
「まあ、目障りな奴がいても面白くないしね」
「……前から随分と敵視してるけど蟻塚と何かあったのか?」
「言ったでしょ?幅きかせてんのが気に食わないって。アイツ自身は何も凄くねーのに」
確かに、とは思う。
仲間がいない今の蟻塚は特に威圧もなく、教室の隅で大人しくしている。
そのせいか、最近の教室内の空気は落ち着いていて過ごしやすい。
皆、蟻塚に興味がなくなったわけでもないだろうが、もはや最初からいないものとして扱っている奴もいるくらいだ。
そんな中で、矢渕だけは未だに蟻塚に噛み付いていた。
それが単に気に食わないからなのか、それとも何か他に理由があるのかは分からないが、どうにもその様子は蟻塚への憎悪というよりは何か別のものに感じられるだ。
「柊ちゃんも凄いよね。毎日のように蟻塚に話し掛けてたんだから。その度に睨まれて泣きそうになってたけど」
「柊は強いからな」
「……」
「なんだよ?」
「いや?勘違いしてるみたいだから言うけど多分柊ちゃんだけだったらすぐに折れて諦めてるよ。アイツはそんなに強くない」
「そうか?結構頑張ってるように見えるけどな」
「……お前がいるからだっつの」
「?」
小さい声でよく聞き取れなかったが、まあ、いいか。
とにかくこの4人なら何も心配いらないだろう。初めての学校行事だ。オレなりに楽しむとしよう。
「邪魔」
と、教室の入り口から声がする。
そこには、屯するクラスメイトを気怠そうな目で見下す蟻塚の姿があった。
慌てて道を開けるクラスメイト達。
「……」
蟻塚はため息混じりに彼らの前を通ると、そのまま自分の席に座る。
「へえー、あの蟻塚がねえ」
驚く矢渕を他所にオレは頬杖をついて蟻塚を見る。
「ただの楽しい合宿じゃ終わりそうにないな」
オレは何となくそう予感した。
がんばれ、柊。
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