花は何時でも憂鬱で

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chapter6

微笑7

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どんどんと深くなる息苦しさに
息を吸って吐いてを繰り返し続ける。



「だめだ、まだ。_____だめだ。」


立ちあがってしまえば、この拘束だって意味をなさない。
壁に背を預けて、何とか立ち上がることだってわけないはずなのに、深くなり続ける息苦しさがそれを許してくれない。



ひゅっと、変な呼吸音が息から漏れ出して
きゅっと口を引き結んだ。


「くそっ」


ガンッと音がなるほど壁に頭をぶつける。


「……まれ。止まれ……っ」



止まれ、いらない、消えろ、消えてしまえばいい
弱い自分は__________必要ない。




それでも、止まらない息苦しさに壁に頭をぶつけ続けていると


「……まれ。止まれっ………とまれ!」

「……まえ、何やってんだ………」

驚いたような表情をした河井が上半身を起こして
こっちを凝視していた。


それに答えることなく
もう一度、思いっきり頭を壁にぶつける。




瞼を閉じて深呼吸を繰り返すと
掠れた可笑しな呼吸音が混ざっているのを耳にして
目を開けた。



視界の端に、赤い何かが頰を伝って顎へと滴り落ちるのを目にして漸く息苦しさが消えていく気がした。
きゅっと無意識に丸めていた指先をゆっくりと開く。




「お前、何やってんだ」

「________何でもないですよ」

ポタポタと滴るそれをジャージで拭いながら答えると
河井は、眉間に皺を寄せていた。

「お前…………狂ってるな。」



無意識に発せられた言葉の端からは、戸惑いを隠せないよう動揺が見え隠れしていた。

「ねぇ、風紀委員なら色々と知ってるんですよね?オーロ世代の純__________って名前に聞き覚えはありますか」

「……楪(ゆずりは)純のことか。いや、いまの名前は佐藤だったか。」

動揺していたからかするりと情報が漏れた。


そして、その答えが聞けただけで
この人でいい。
俺の__________狗は。


「河井先輩。アンタ、僕の__________いや、俺の狗になってよ」

「は?」

「たまに協力してもらうだけで構わないです。俺の駒になって。」

「お前、さっきから何わけわかんねぇ事言ってんだ。狗?ふざけてんのか」

つうっと生暖かい血が伝い落ちるのを肌で感じて
少し強過ぎたかと頭の片隅で考えながら
河井を見つめる。


「明日の夜までに決めてください。“これから”を見てどうするのか」






雪 side


「騒がしいな」

上の階がバタバタと騒がしいのを感じて
天井を見上げる。
そろそろ僕も戻らないといけないと考えていたら
伸びていた連中の2人のうち1人が呻き声をあげて上半身を起こした。

「あぁ、なに。起きたの?」

「雪。テメェっ!!中立者はこういうことに手を出さない。そういう約束だろうがっ!!」

ピアスを口や耳にいくつもつけた頭の悪そうな生徒は怒鳴り散らすように吠えた。


「何言ってんの?そんな約束誰が決めた?中立者の扱いについて明記されているのは『中立者は、いかなる理由があろうと勝負への参加は容認しない』これだけだったはずだけど?」

「……ぐっ。けど、確かに存在するルールだろうがっ!!第一、何にも口出ししてこなかったお前が今になってでしゃばんじゃねぇよっ!!!負け犬が!」

にっこりと微笑んで歩み寄ると
その生徒は、ぴくりと肩を跳ねさせた。

「お前らが勝手に作ったルールを僕が守る義理はない。負け犬なりなんなり勝手に言ってろよ。だけど、先に手を出したのはお前らの方だ。今度、あの子に何かしようものなら誰だろうが僕は、許さない」

「誰のことを言ってんだよ。それに、俺は颯斗に呼ばれただけだ!!」

「君は、知らなくていいよ。僕にとって誰に呼ばれてここに来ようが関係ない、傷つけようとした事実は変わらないんだよ。」

ガチャリと扉のドアノブが回る音と一緒に
出てきた人物を視界にいれて、振り返る。

「ちゃんと、話はできた?荒谷くん」

「俺なりに、方はつけました。
でも、一緒には来られないって、」

荒谷くんの言葉に、一瞬、目を眇める。


「……分かった。少し外が騒がしいから早く戻ろう。何かがおきてるみたいだからね。最悪、もう来てるかもしれない」

「来てるって何のこと、」

「この学園で1番。面倒な人間。」

あの子に会うのはまた後でにしよう
今は、この不穏な状況を把握する必要がある。


けれど、恐らくは九重が動いたということは
まず、唯賀が帰ってきてるかもしれないということ。



そして、最近の唯賀の最重要案件はあの新歓の新入生。


つまりは__________。
唯賀は、あの子を疑っている。



「雪先輩、一つだけ聞かせて欲しいんすけど。何でそこまでするんすか。昔からの知り合いってわけじゃないですよね?」

「あの子は、特別だから。あの子は僕にとって『弟』」

にっこりと微笑むと荒谷くんはよく分からないと困った顔をして頰をかいて


「まぁ。何でもいいや」


と言って、綺麗に笑んだ。



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