99 / 178
chapter6
微笑5
しおりを挟む「そんじゃあ、約束。守ってもらおうか、新入生」
河井は携帯を手にとって
何処かへとメールを打っているようで
一通り終わったのか、携帯をぽっけにいれると
「……何をされても、口を噤めよ?」
指の背で頰をするりとなでるとそう告げた。
「まぁ、俺は可愛い子が好みだけど、たまにはお前みたいなのを相手してみてもいいと思うわけよ。気分が乗ったら、痛めつけるのやめてやってもいいぜ」
試すような視線を向けられて
トントンと唇を指す仕草を見て
視線をそらすと繋がれている手錠へと向け
態とらしく、腕を揺らす。
「近づいて貰わなきゃできないと思うんですけど」
「 ……面倒くせーな」
頭上で腕をついて覆いかぶるようになった姿勢で
顎で示して急かしてくるそのピアスをつけた生徒に
内心で嘆息した。
その近くなった距離を縮めようと
顔を近づけると、目の前の人は愉快そうに目を細めた。
「目、閉じて下さいよ」
「注文の多い奴だな」
意外にもすんなりと瞼を閉じた
その人の薄い唇に体温が重なると同時に
ツプリと歯をたてる。
「………っ!何しやがる!」
「あぁ、あんたが誰だか分かりましたよ。屋上で一発で吹っ飛ばされたひょろそうな先輩」
瞬間、開けられた瞼とともに
鋭い拳が頰を殴った。
口の中が、切れたのか鉄の味がする。
その拍子に飛んでいった眼鏡がかちゃりっと音を立て
河井はチッと舌打ちをもらした。
「おまえ、マジで。痛めつけてやんねぇと俺の気がすまねぇわ」
胸ぐらを掴みあげられ、壁へと押しつけられ
唇を重ねられる。
気道が上手く確保できない状態で
這い回る舌に逃れようとするが翻弄されて、息が出来ず
悶え苦しむ。
「………っは。ケホッ!ぁ、はぁ。」
「こんなんですむとおもうなよ?後、2人はこっちに呼んだからな。それまで、精々頑張るこったな。次は、ちゃんと痛がって啼けよ?」
前髪を鷲掴んで、引き上げられて
痛みで顔を引きつらせるが
動きのない河井に視線を向けると
「………っおまえ_____。………………誰だ、っ。」
そのピアスの生徒は、驚きにも困惑にも取れる表情で
その台詞を吐いた。
その台詞に、俺も困惑していると
「悪いが、次、啼くのはアンタだよ。先輩」
第三者の声が上から落ちてきた。
それが、誰から発せられたものか理解する前に
ピアスの先輩が壁に打ちつけられて伸びていた。
視線を上へと向けると、そこに立っていたのは
荒谷新だった。
「……何でここに」
「それは、こっちの台詞だって」
荒谷はしゃがむと何処から出したのか
箱ティッシュから数枚抜き取り口を拭ってきた。
されるがままにされていたが
異様な状況に荒谷に声をかける。
「何して……。とゆうか、何でここに?鍵は」
「口を拭ってる。お前が、あのすんごいでかいひとと少しちっさい人に連れてかれるの見てて、かと思ったらその部屋にコイツが入っていって、だから、俺も入った。鍵は、協力してくれた人がいる。」
荒谷が捲したてるように喋ってから
暫しの沈黙が落ちた。
「俺は、考えても分かんないし。だから、決めたよ。決めた。」
だけど、その沈黙を破ったのも、荒谷の快活な声であった。
繋がれている手首を労わるように撫でると
優しげな瞳を投げかけてきた。
「俺は、利用するよ。脅してでも構わない」
「さっきから、何を言って」
「佐藤蒼。__________俺はお前の秘密を知っている。」
荒谷は労わるように撫でていた
手首に爪を立てた。
「お前は、佐藤蒼じゃない。そうだろ?__________春。」
まるで、それは__________
心臓に爪を立てられているかのような心地だった。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
条攴大学付属中学高等学校
うりぼう
BL
条攴大学付属中学高等学校
山の奥にある中高一貫の学校。
そこに入学してきた高校一年生の山下一樹のセクハラ三昧物語。
※一応恋愛ものです
※下ネタ多数
※BL
※R15に設定していますが、性描写はほとんどありません
※一樹のセクハラ発言がアウトだと思います
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる