花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
上 下
87 / 178
chapter5

固執

しおりを挟む




鬼の面を被ったよく分からない子から
離れて、数分_____。


僕は、連絡を受けて待っている人がいる寮へと足を運んでいた。


寮が見えてくると、バイクに跨ったままの
百樹 櫂(ももき かい)が待っていた。


「ももちゃん~。パス!!」

走りながらそう告げると
ももちゃんは、ヘルメットを粗雑に投げる。
それを、しっかりと受け取って装着すると
バイクの後ろに乗り込む。

「正門でいいんだよな?つうか、走って大丈夫かよ。」

「うん。大丈夫。ももちゃん、なるだけ飛ばして」

「ったく、人使い荒いんだよ。ちゃんと、説明してくれんだろうな。」

ももちゃんは、悪態をつきながらも
ハンドルを握りなおしてバイクを発車させた。


「正門が開いてるって。連絡がきたの」

「正門って……。紅組の連中が帰ってきたか?」

「ううん。それは、ない。正門が開いたのは今日の祭りが始まった時とちょうど同じ時刻。それから、もう6時間は経ってる。もし、紅組でも問題はそんなにないけど問題は_____。」

「なんだよ」

「正門がずっと開きっぱなしってことと。誰を中に入れたのかということ」

「そんなの、調べりゃあ……」

ももちゃんが言葉を詰まらせて
チラリと一瞬だけ視線を僕に向けた。


この学園から一歩も外に出られないわけではない
申請さえすれば学園からは出られるシステムになっている。
本来、誰がこの学園を出入りしたのか退出記録を見れば
すぐに分かるのだが、今回にいたっては全くその記録がなかった。


「白。飛ばすから、捕まってろよ。」

「ももちゃん。そっちでもモテると思うよ。わざわざ、猫被らなくたっていいじゃん。王子様キャラより僕はこっちのももちゃんの方が好きだよ。」

「うるせぇー。黙ってないと振り落とすぞ」

「はぁーい。でも、そっちの方があの子も振り向いてくれたりしてね?」

「……黙ってろ。」

「はぁい。黙ってますよぉ。」

そして、バイクで走ること15分
正門の前に着くと待っていたのは予想外の人だった。


「予想外の人たちですね。ねぇ、帝。」

「みーちゃん、と副会長さんどうしてここに?」

「俺は、佐伯に頼まれて探し物をしててここまで来たら都築に会ったんだ。」

「少し、君たちに聞きたいことがあります。学外の人がこの学園に来てます。知っていますか?」

「学外?」

みーちゃんが訝しむような声色で呟いた。

「そちらのお2人はどうですか?」

「僕には、さっぱりわからないかな。都築副会長」

ももちゃんの台詞に続けるように
僕も、言葉を返す。

「副会長さんは、誰が来てるのか知ってるの?」

「それは_____」



「西方燐の子が来てる?!」

副会長の話を聞いて、驚いたのは
百樹だった。


帝と白は顔を見合わせて、首を傾げた。

「「西方って誰のこと?」」

「風紀委員長と副風紀委員長ともあろう人達が、それを知らないとは一体どういうこと何ですか。」

「そういうのには疎いんだよ」

「右に同じく~。僕も、分かんないな~。」

「それを知らないのは、流石にどうかと思うよ?」

百樹が王子様スマイルでにっこりと微笑んで
優しく諭すように言うが、そう言ったことに疎い2人は
苦笑いを浮かべた。


「この際、説明は省きます。私は、彼を探さないといけませんので失礼します。」

「都築。俺たちも手伝う。ただ、1つ問題があってだな。」

「問題とは何ですか?風紀委員長」

「今、この学園はお面を被らないといけないルールがあるんだよ。」

「何を言っているのか分からないんですが……。」

都築が整った顔を崩して、眉が寄せられる。

「てゆーことで、副会長さんはコレを被ってください!」

「何なんですか。それに、貴方達だってお面を被っていませんよね?」

「それもそうだな。白」

「はーい!用意できてまーす。あ、ももちゃんのもあるよ?」


「…………今は取り敢えずは、納得します。今は、何も聞きません。けれど、後で、どういうことかご説明願いますか?風紀委員長さん。」

都築が深いため息を吐いて
鋭い視線を帝へと向けた。



「……はい」


冷たい都築の声に帝は背筋を凍らせながら首をゆっくりと縦に振った。



都築と帝は車で白と百樹はバイクで学園へと戻り
学園の付近に近づくたびに黒いオーラを醸しだす都築に
帝はようやく口を開いた。


「このイベントを撤収させて下さい。会長がいない今、貴方がして下さい。」

「え?」

都築の台詞に帝が不思議そうに眉を寄せた。
その帝の声に反応した都築が鋭い視線を向ける。

「何ですか。できない、と?」

「いや、撤収作業も全部、やりそうだと思ってたから」

「何故、私達が勝手な事をした白組の尻拭いをさせられるんですか。まぁ、こっちに残っていた生徒会の役員面々には私から個別にお話しさせてもらいますがね」

都築の底冷えした瞳に帝は
背筋を凍らせながら、引きつった笑みをこぼして
1つ深呼吸をすると帝は都築を見据える。


「都築、悪いけど撤収はできない。俺には。………責任は、終わってからで頼むよ。せっかくのこの雰囲気を壊すのは出来ない」

「…全ての責任をあなたが負うという事ですか?きみのそういう所気味が悪いですね。感情より実利でしょう?普通なら。」

「つくづく、嫌われているみたいだな」

「えぇ。気づきませんでしたか。」

「他には、唯賀と後は?」

「数えたら、キリがないですかね。」

「とんだ、嫌われ様だな」

鼻から抜けるように笑いながら帝は零れるように呟いた。

「それで、この集団を捌けずに探す算段もなくそんな悠長なことを言っているのではありませんよね?」

都築の言葉に、帝は仄暗い赤い瞳を都築へと向けて
勿論と答えた。


「何の因果かこのお面が役に立つ。」

「と、ゆうと?」

「祭り参加者は必ずお面をつけている。もしも、西方財閥のご子息がいるなら、このお面はつけていないはず。このお面が配られたのは、祭り開催前夜。だから、人がごった返す出店の辺りにはいないだろうし、もし、いたとしても一発でわかる。」

「なるほど。では、集中的に探すべきは出店の辺りではなく休憩してる生徒達がいる場所などというわけですね」


そして、都築と帝が車から降りたと同様
白と百樹もバイクから降りて
それぞれが捜索する手筈となり駆け出そうとした時______


「はいはい、止まってそこの4人組~。鳴川さんこと鳴さんがお呼びだよ~ん!」

何とも力の抜ける掛け声が何処からか発せられた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

条攴大学付属中学高等学校

うりぼう
BL
条攴大学付属中学高等学校 山の奥にある中高一貫の学校。 そこに入学してきた高校一年生の山下一樹のセクハラ三昧物語。 ※一応恋愛ものです ※下ネタ多数 ※BL ※R15に設定していますが、性描写はほとんどありません ※一樹のセクハラ発言がアウトだと思います

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。 派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。 そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。 無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、 女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。 一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。

処理中です...