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chapter5
宝物1
しおりを挟む要:春の父親
雫:春の母親
一応、情報として載せておきます
※
No side
紅組が宮地所有の地で賞品を楽しんでいた時。
また、白組が学園で祭りを開催していた頃と時を同じくして天宮所有のホテルの会場ではパーティーが行われていた。
「天宮くん。お久しぶり……でもないですかね。」
にこやかに微笑む純の姿を目に留めて要は純へと歩を進める。
「来てくれたのか。」
「純ちゃん!お久しぶりね」
要と純が挨拶を挟む間も無くして要の後ろから顔を出した雫は無邪気に笑いながら純の手を取った。
「はい。お久しぶりです、雫さん」
「純ちゃんに、雫さんなんて呼ばれる日が来るなんて思わなかったわ。」
「そうですね。僕も、毎日のようにへリコプターで派手に登場して春田くんにアタックしてた雫ちゃんが、まさか、その度に喧嘩してた天宮君と結婚するとは思いませんでした」
「私もよ。まさかだったわ。今、思い出しても腹立たしいもの。要さんの邪魔さえなければ、私、絶対に叶多さんと結婚できてたのに」
雫の言葉を聞いて、あからさまにため息をついた要は
横目でチラリと視線を流して
「何が、結婚できてたのに、だ。春田の奴には、全くと言っていいほど相手にされてなかったくせに。大体、あそこは男子校だ。女は、入って来たら駄目だっていうのに無断侵入してたのは雫だ。」
と、悪態をついた。
「要さんの方が相手にされてなかった!一々、細かいのも困りものよ」
「まぁまぁ、落ち着いてください。2人とも」
「「落ち着いてる(わ)!」」
その2人に、純はクスクスと堪え切れない笑いを零す。
「ふふ、ふ。駄目です、天宮くんだけでも耐えられなかったのに雫さんもいると堪えられませんね。本当に、大好きですね。春田くんのこと。盲目で純粋すぎて少し羨ましい」
「「そんなの(春田/叶多さん)が魅力的なだけだから(だ/よ)」」
「はい。分かりました、降参です。あ、ご挨拶もせずに申し訳ありませんでした今日は蘭くんの誕生日パーティなのに。どちらにいらっしゃいますか?」
「私が連れて来るから、待ってて。純ちゃん」
「え、いや、僕が行きま……もう、行っちゃいましたね」
呼び止めようとしてあげた手は行くあてをなくして
宙を彷徨った。
「せっかちな性格を何とかして欲しいけどな」
「まぁ、そこも雫ちゃんの良いところですよ。」
「まぁな」
雫が去って間も無く扉の辺りが騒がしくなったのに
要と純は視線を注ぐ。
「どなたでしょうか。」
「あぁ、恐らく。huyuneさんだ。」
「huyuneさんというと、今、話題の絵本作家の?」
「あぁ。その人だ。純も知ってたんだな」
「あの人の描く物語は何処か哀しいのに凄く暖かくて最初の頃からファンだったので。デビュー作は『散り花』だったかな。」
「佐藤さんに覚えていただけているなんて光栄です」
その声に、要と純は振り返ると
仄暗い紅い髪を後ろで一括りに束ねた黒いパンツスーツを着こなした女性が一礼した。
「huyune、いいえ、九条音と申します。」
「「九条って……」」
要と純は目を合わせてお互いの瞳に同じ考えを映しているのに気づき、huyune________もとい、九条音へと視線を走らせる。
「あ、九条冬馬さんとは関係はありませんよ。皆さん、聞かれるので」
九条音という女性は、要と純の瞳に映る疑問に
尋ねられる前に答えた。
「違うんですか。てっきりそうかと」
「滅多にない苗字ですし、気になさらないでください。佐藤さん。」
「すいません。ご挨拶が遅れました、天宮要です。今日は、来ていただきありがとうございます。」
「はっ!僕もですね、すいません。佐藤純です。」
「有名なお2人にお会いできて光栄です。会って直ぐで申し訳ない事なのですが、天宮さんは春栄で風紀委員長だったと聞いたんですが」
音の伺うような視線に、要は微笑みながら首肯した。
「えぇ、そうですよ。」
「まぁ、本当ですか。それは本当にit’s GOOD。いい事だわ。実は、私の息子が春栄で風紀委員をしていて、連絡も中々くれなくて忙しいものなのか分からなくて是非、お聞きしたかったんです!」
「風紀委員ですか。でも、残念ながら今の学園の体制がどうなっているのか分からないのでお答えのしようがなくて、でも、昔はとても大変でしたよ。特に生徒会の扱いとか。それで、息子さんのお名前は?九条とは聞いたことがないですね」
要の質問に、音は少し困ったように答えた。
「息子は、私の旧姓で生活しているので九条ではないんですよ。後、もう1つquestionしますね!Mr.Harutaはどこですか。同じ時期に学園に一緒にいたと聞いたんですが。一言、どうしてもお礼を言いたくて。」
その音の台詞にピシリと2人の空気が固まった。
音もそれを感じ取ってか、言い澱みそれ以上何も言ってこなかった。
「春田がどうなったか、僕がお答えしますよ。huyuneさん。」
十数年ぶりに聞いた、その声は要と純の身体を強張らせた。いや、ここにいる全員が感じていた
この人物が現れた瞬間、その場が凍っているかのように
視線が集まり、動作が止まった。
「その2人には答えられないでしょうから、ねぇ?」
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