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chapter3
立ち込める暗雲
しおりを挟む矢井島 美音 side
「宝物、ねぇ?」
飛び出すように去ってきた
教室を振り向いて視界にいれると
父さんのその言葉を思い出す。
唐突に探してほしい生徒がいると言われた。
そして、その理由を尋ねたら
予想にもしなかった言葉が返ってきた。
『____宝物なんだよ。あの子は。』
「そして、うちの利益ににもなり得る人物。佐藤純の息子、佐藤蒼くん。君はいったい、誰なわけ。力はあるけど、そこまでの影響力のある子には見えなかったけど。……まぁ、何かあるのは確かかもね。」
ピンクのピン留をひと撫でしていると
遠くからバタバタと足音が聞こえてきた。
僕の肩を通り過ぎる時に不意に聞こえてきた
言葉に一瞬、動作が止まる。
「早く行かないと、遅れちゃうよ。でも、急に何の集まりだろうね。」
「天様から、報告があるんだって!」
その子達を引き止める間も無く
もう、遠くにある背中を見つめながら
ポツリと言葉が落ちた。
「天ちゃんが出てくるほどのことが___?」
八色天___親衛隊総隊長。
天ちゃんが出てくるのは他の隊長では対処が難しいときだけ、それ以外で親衛隊に深く関わることはない。
その異常な事態に興味が湧いて
いまにも消えてしまいそうな背中を追いかけることにした。
「この教室は___。」
第3会議室に急ぎ足の親衛隊の子が入っていくのを
目にして、目を疑った。
第3会議室は、会議室の中でも大部屋で
ここまで多い親衛隊なんてごく僅かだ。
それに加えて
聞き覚えのある凛とした声が聞こえきて確信した。
「__まさか、会長の。唯賀会長の親衛隊?」
あの会長が親衛隊を頼るなんて聞いたことがなくて
目を見張った。
教室の
ドアの中からは見えないぐらいの位置で
会話を盗み聞きしている、と。
しっかりとドアも閉まっているはずの
教室から白熱するあまりか
心当たりのある会話が聞こえてきた。
「昨日の白髪の人物を探せとそういうことですか?」
___ドキリとした。
心臓を掴まれたようなそんな感じ。
そんな心とは裏腹に教室が
ざわりざわりと落ち着かない雰囲気になっているのが
伝わってくる。
当たり前だ。
親衛隊に入ってるということは
少なくとも、その人物の好感を持っているということ。
それが、憧れにしろそうじゃない恋愛感情が
あるにしろ。
初めての、頼まれごとがこれじゃあ
面白くはないだろう。
落ち着かない心臓をなんとか落ち着かせようと
その喧騒に紛れてため息をひとつ吐きながら
身体を少しだけ前に倒して横目で教室の様子を見ていると
ガタリという椅子を引く音がした。
「静かに。」
柔らかく優しく感じるような声にも
凛と鋭い声にも聞こえる澄んだ声が
教室に響いた。
あれは、間違いない。
あのクリーム色の髪に、ふわふわの髪を後ろで
少しだけ括っているあの姿は間違いなく、天ちゃんだ。
「みんなの言い分もよく分かるよ。だけど、唯賀様からの頼み事は滅多にないことなんだ。だから、ここは何とか協力をお願いできないかな?みんなで唯賀様にお力をお貸ししたいんだ。だから、協力してほしいなぁ。」
柔らかくもしっかりと自分の意見も伝える
それが、天ちゃんが総隊長に選ばれた所以なんだろう。隊員たちも、天ちゃんに頼まれたら断れないのか
渋々ながらも首を縦に振っているようだ。
てゆうか、あの天使みたいな天ちゃんに
頼み事されて、断れた子見たことないけどねぇ。
でも、なんか天ちゃんの表情が晴れないのが
気になるなぁ。何でだろ。
その表情が気になって
もう一歩、ドアの方に寄った瞬間
天ちゃんと目が合って、すぐに顔を背けたが
その拍子にスライド式のドアの取っ手に手がぶつかって
ドアが開いた。
「誰ですか」
凛とした声がこちらに飛んできて
隊員たちの視線も自然と集まる。
心の中でため息をひとつ吐きながら
ドアの取っ手を引いた。
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