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ぼっちの登校
しおりを挟む「淡藤。音楽祭まで、後1週間しかないの分かってんの?!」
さっきの不審者は淡藤というらしいとか
頭の片隅に思いながら
その女子生徒は、思いのほか長身なその不審者を
グラグラとゆすってる。
「ごめんってば!でも、迷子がいたから」
揺すられながらその不審者が
俺を指差して
それで、ようやく俺に気づいた女子生徒は
ジッと俺を見ながら言った。
「アンタ、普通科の生徒じゃない。何でこっちの校舎にいるのよ」
さっきから何かがおかしい気がする。
何か、辻褄が合っていないような。
そういや
「何で、制服違うの?」
「「……は?」」
「まさか、俺が知らない間に制服が変わったのか。これで、教室なんかに行ったら浮くこと間違いないな。よし、今日は帰ろう。そうしよう!」
ぽんと手を叩いて
踵を返そうとする俺の襟元をその女子生徒が引っ掴むことによって首が締められた。
「ぐえっ!」
「ねぇ。そっちは、普通科の校舎じゃないわよ。」
「ゴホッ、ゴホッ!人を殺す気かよっ!………つうか、さっきから、普通科、普通科って何の話だよ。この学校は普通科、オンリー。普通の学校、アーユーアンダスタン?」
「淡藤。……この子、馬鹿なの?」
「いやぁ。僕も、よく分からなくて。でも、馬鹿なんて可哀想じゃないか。お馬鹿なんだよ」
「あんたら、初対面のやつに向かって、馬鹿馬鹿言うんじゃねぇよ!何か悲しくなるだろうがっ!」
「あら、ごめんなさい。つい、本音が」
「ごめんね、僕、嘘つけないからさぁ」
心が痛い気がする。
久しぶりに家を出て、家族以外の奴と喋ったと思ったら
馬鹿にされるって何だこれ。
「てゆうか、もう授業始まるよ。音くん」
片手にあひるの人形をパクパクさせながら
もう片方の手につけられている腕時計を見ながら
その不審者は宣った。
「あ、やべ。あれ、でも教室ってどっちの方向だっけ?」
「しょうがないわね。淡藤、送ってあげなさい。貴方ならあっちの校舎に行っても問題ないし。ただし、五分で戻らなかったら……分かってるわよね?」
「はいはい。分かったって」
昼休みを終えるチャイムが鳴る。
それと共に、教室から出てきた生徒が、皆、ある場所へと向かいだす。
「……まずいわね」
その女子生徒の呟きと同時に
何処からかピアノの音が聞こえだした。
瞬間、耳をつんざくような物凄い悲鳴が辺りを埋め尽くした。
「……うっ」
__________キィィィンっ。
「やべぇ_____っ。」
辺りに響いていた歓声もピアノも音も全ての音が遮断されて視界に映ったのは、焦ったような不審者の間抜け面だけだった。
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