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今更言われても
しおりを挟む姉が結婚する事になった。
幼い頃から慕っていた、同じ貴族のリーチェとだ。
妹のわたしも、素直に嬉しい。
それに、わたしにも気になる人がいるのだ。
姉が結婚してくれれば、妹のわたしも大手を振って(?)アプローチ出来る、というものだ。
それは姉の婚姻前夜だった。
リーチェから呼び出しを受けたわたしは、「何事かしら…」と思いつつ、のこのこと行ってしまった…。
リーチェは世にも暗い表情で待っていた。
いつもの快活さは微塵もない。明日、花嫁を貰う人間には見えなかった。
「リーチェ様、どうなさったのですが?」
わたしは問うた。
「俺は自分を偽っていた…」ぼそぼそと呟いている。えっ?と聞き返した途端。
グイッと手首を掴まれ、そのまま、くみしだかれた。
―えっ? えっ?
「俺が好きなのは!オーヴ、きみなんだ!」
そのまま、襲われかけた。
―冗談じゃない!!
ジタバタした。何かが手に当たった。
それを掴む。
振り下ろす。
鈍い打撃音。
生暖かい感触…。
ぬるり、と血が手のひらを汚した。
わたしは悲鳴をあげた。
わたしが掴んだものは、果たして、石だった。
リーチェの頭を直撃したそれは、命は奪わなかったが、下半身不随という結果を彼にもたらした。
わたしはありのままを話した。
証言台。
固唾を呑んで見守る、周囲。
姉が泣いているのが見えた。
判決は―無罪。
わたしは喜ぶべきか、悲しむべきか、わからなかった。
ただ、姉の縁談は破談になり、わたしは恋を失った…。リーチェを恨む気持ちも、少しあったが、ほいほいと呼び出しに応じた自分も悪い。
後悔先立たず…。
涙も出なかった。
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