失恋竜が幸せになるまで

屑籠

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9.わかってない

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「何怒ってるんだ?」
 帰って来るなり、リーズは頬をかきながら、伺うように俺の顔を見る。
 べつに、と言って俺は食事を出す。
 早く帰ってきたから、ゆっくりとすることができた。
 今日の肉はミンチだが。少しは発散できた鬱憤も、リーズの顔を見ていると蘇ってきそうだ。
「何かあったなら、言えよ?仕事で何かしたのか?」
「違う」
 食べながら合間にリーズが聞いてくるが、どうにも相談何てし辛いだろう。
 はぁ、とため息を吐き、もそもそと咀嚼をする。
「喧嘩でもしたか?」
「誰とする要素があるって言うんだ」
 あながち間違ってないのかもしれないが、俺にあるのは純粋な嫌悪といら立ちだ。
 俺と同期は残り二人。ミスティは人間の雌寄りの体をして、色も緑なのに、雄の立場を確立していた。まぁ、黒の模様がある混色であるから強いことには強いのだが。
 まぁ、相手はあのグラムで、黄竜。問題児でフォルスに執着していたが、ミスティのおかげでおとなしくなっている。
 少し、卵を産んだ後話をする機会があったが、グラムはミスティにどうやら逆らえず真名を教えたらしい。
 一生、ミスティからグラムは離れられなくなったわけだ。
 ミスティの好みは少し変わっているな、とは思っていたがまさかグラムと番になるとは思わなかった。
 発情期、上手く雄に操られてしまえば、立場の弱い雌側は、逆らえない。それこそ、真名さえ引き出させるほどに。
 それが、許される。
 それが強者、それが雄である資質。
 それを思えば、俺だって理性を無くしていた時だってあったのに、リーズは良心的だったのか。
 いや、ただ単に俺に興味がないだけだろう。
 別に、リーズの番になりたかったわけじゃない。
 ただ……番になってしまっていれば、こうしてリーズ如きに悩まされることもなかったのに、と思うだけだ。
「くそが」
「えっ?何?いきなり罵倒って何それ?俺、なんかしたか?」
「大体アンタのせいだ」
「えぇ?それ、ただの八つ当たりじゃないか」
 やれやれ、と言った顔をリーズはするが、根本的な原因はやはりリーズじゃないか、と俺は鼻で笑った。
「まぁ、話せるようになったら話せばいいさ」
「……ときどき、アンタが優しいのか無責任なのか分からなくなるな」
 ショックを受けたような顔をするリーズに、少し胸がスッとした。
 飄々とした余裕のある顔をするところも、年上面して俺を甘やかそうとするところも全部いら立つ。
 俺は、リーズの何なんだ、と考えてしまう。
 考えなくていいことだって思うのに、くそっ!
 仕方がないな、という視線だって気に食わない。仕方がないなと言いたいのは俺の方だ。此奴は、自分の事を何もわかっちゃいない。
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