失恋竜が幸せになるまで

屑籠

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 リーズは俺の抵抗なんてものともせずに、俺を雌にした。
 突っ込まれて、喘いで、そしてリーズの熱を受け止める。
 何度達したって、俺が気絶するまで行為は終わることはない。
 次の日も、その次の日も、発情期は終わらない。竜の発情期は一年あるのだから……。
 気絶して、起きて、リーズの取ってきた獲物を食べて、また気絶するまでして……中は完全にリーズの形をおぼえこんでいた。
 もう、やだ、やめてくれ、と何度言っただろう?
 そんなある日のこと。もう少しで、季節が一回りするという時期に、ふと、体が少し変だ、と思い慣れ親しんだベッドから起き上がる。
 リーズは、獲物を捕りに行っているのか、不在で、そんなところも珍しいな、と感じてしまう。いつもなら、目が覚めたらたいてい獲物は用意されていて、リーズも巣穴に戻っていたから。
 ふらふらと起き上がり、はぎ取られた衣類を身に着けると、巣穴から俺は歩いて出た。
 見つかりにくいようなところにある巣穴だが、一人で出れない、というわけではない。
 のろのろと歩いて、近くの池のほとり迄来た。
 少し休憩しよう、と池に近寄ったところで、ぎゃあ!と空から鳴き声が聞こえてきた。
 俺よりは確かに年上だろうが、まだまだ年若い竜種が二匹。
 俺が目を見開いて、いると、下卑た笑いが聞こえてくる。
『メスだ!メスの匂いがする!!』
『メスだメスだ!』
 どうやら、この二匹はこのあたりの竜種ではないらしい。
 竜種も国みたいに集落があり、リーズの巣穴はその境目に近い場所にあるのだろう。
 見たことのない二人組だった。
「ぁ……あっ、なん、で……?」
 竜の姿になり、逃げようと試みたが竜の姿になることができない。
 いつものように、自然に思えばなれた姿なのに。
 今は、非力な人間の姿でしか、ない。
 向かってくる二匹に、金竜なはずの自分も恐怖を覚える。
 竜になれれば、こんな奴らすぐに力量差を思い知らせてやれるのに。
 今は、怖くて怖くて、仕方がない。自分は、いったいどうなってしまったのだろう?
 それすらも分からない。
 奴らが俺に手を伸ばしてきて、とっさにぎゅっ、と目を閉じる。
「ぎゃあぉん!!」
 悲鳴のような声が聞こえ、目を開く。
 一匹は、木々をなぎ倒しながら倒れており、一匹は俺の少し上を見て、ガタガタと震えながら警戒している。
 guooooooooooooo!!と言う低く、そして怒りを含んだその咆哮に、俺は動けなくなり、二匹は完全に降伏の形をとり、逃げて行った。
 ふわり、と俺の前に紅色の竜が下りてくる。
 ぎろっ、と金眼ににらまれ、びくっ、と体が跳ねた。俺の見ている目の前で、その体は変化し、人型のリーズの姿へとなる。
「りー、ず……」
 近づいてきたリーズに、頬を叩かれた。思いっきり、ぱぁん、と甲高い音が響く。
「お前は、何をしたのかわかっているのか!!!!!!」
 リーズは、俺が何を言っても何をしても、そうして感情的に怒ったことなど一度もなかった。
 なぜ、リーズがそんなに怒っているのか、俺には理解できない。
 ため息をはいて、俺を抱えたリーズは無言で巣穴まで戻った。
 服ははぎ取られなかったけれど、ベッドへと押し込められ、そのサイドへリーズは座り、ため息をはいて頭を抱える。
「何で、そんなに怒っているんだ……?」
 おずおず、と俺らしくもなく聞いてみれば、分かってないのか、とまた、ため息をはかれた。
「……お前、何で巣穴を出た?」
「何で?発情期が終わったからだろ?」
 発情期が終われば、番でなければ自分の巣穴へと帰る。そういうものだと、前に誰かが言っていた。
 まだ、巣穴を持ててはいない俺は、両親の巣穴へと帰ろうと思ったのだ。
「じゃあ、何で巣穴を出てすぐに竜の姿にならなかった?なれなかったんだろう?」
「あぁ……、俺、何か病気なのか?何で、竜の姿になれないんだ……?」
 広いリーズの巣穴の寝室で、元の姿に戻ろうとしても、やっぱり戻ることはできない。
 そこからか、とリーズはため息をはいて俺の下腹部へと触れた。
 発情期の時とは違い、優しく、壊れ物に触れるように。
「お前、妊娠してるんだよ」
「……は?」
「一度目の発情期で出来るとは思わなかったけどな、お前のそこには確かに俺とお前の子供がいる」
「うそ、だろ?」
 嘘じゃない、とリーズは首を横に振った。
「そ、んな、まさか……」
 竜族の子供の出来難さは、ほかの種族と比べて随一だ。
 百年に一度の発情期に、集落に一匹二匹子供ができればいい方だという。
 俺たちの代は四匹も生まれている。豊作の方だ。
 その子供が、この腹に宿っているなんて、信じられる話ではない。
「その証拠に、発情期の期間はまだ有るはずなのに、俺もお前も発情期は終わってる。それに、子供ができたばかりの雌は、しばらく竜の姿にはなれない」
 俺は、雄の竜として雌ができた時には、守ってあげなさい、子供ができたら大切にしなさい、としか言われなかった。
 だから、雌が妊娠してどうなるのか、なんて知らない。
 うそ、うそだ、と思いつつも、竜になれないのならば、信じるしかない。
 子供、子供が生まれる……そう思うとぞっとした。
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