君が望んだ終焉の果てに

屑籠

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ラジエラ編

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side オビト

 やっぱり目が覚めると、宿屋の部屋にいた。
 あの日からどのぐらい経ったのだろうか?
 よいしょ、と体を持ち上げるが、何だかすごく体が重たい気がする。
 なぜだろう?と内心、首を傾げながら、一階に降りた。
 コンシェルジュが、オビトの顔を見てほっとしたような顔をする。
 何かしたのだろうか?

「お目覚めになられたようで何よりでございます。お体に不調などはございませんか?」
「え、えっと……ちょっと、だるい?」
「失礼いたします」

 そう言って、コンシェルジュはオビトの額に手を当てる。
 ぼんやりとして、オビトはそれを受け入れた。

「熱が、出ておりますね……無理をなさらない方がよろしいでしょう」
「で、でもっ」

 宿泊日数が、あまりないはずだが?と首を傾げてると、あぁ、と言った形でコンシェルジュがうなずく。
 納得されているのは、ありがたいのだが、お金の問題がある。
 今からでも、何か狩ってくる覚悟すらあるのだけれど。

「まだ、一日しか経っておりませんよ」
「えっ、一日……?」

 三日、寝込んでいると思った自分の意識がどうして戻っているのか。
 彼は、どうしたのだろうか。気になるところではあるものの、とりあえず、眠ろうと部屋に戻ることにした。
 まだ、日付が残っている、と実感すると、とても体が重たくなった気がする。
 ベッドに身を投げると、ずんっ、と沈むような気がした。
 どこか、もう一人の彼が焦っている気がするけれど、知ったことか。
 あぁ、頭が痛い……っ。

「……なんか、スッキリした」
「目が覚めたのですね」
「え、リオン?な、何で?」

 一人だと思っていた部屋には、ベッドのすぐ隣に椅子に座ったリオンがいた。
 フラムドはいないみたいで、リオンとオビトだけの空間だ。

「あの方が焦っていらしたので。あなた、体調はもうよろしいので?」
「う、うん。もう、平気」

 実際、あれほど感じていた不調を、オビトは感じていない。
 だが、そんなオビトにリオンは眉間にしわを寄せる。
 大丈夫、という言葉が信用できないのだろう。確かに、オビト自身が感じていない不調があるかもしれない。

「とりあえず、医者を呼びにフラムドが行きましたから、少し待っていてください」
「そ、そう……きょ、今日は、何日目?」
「……勇者の迷宮に行った日から、と言うのであれば、二日目ですね」

 二日目、ということは一日眠っていたのか、と少しほっとした。
 これだけ、体が動くようになったのであれば、軽く狩りでもして来ようとも思う。
 そろそろ、狩りをするべきだろうから。狩りをしないと、その感覚を忘れてしまいそうで、怖い。

「おや?儚げ美人かと思いきや……平凡なお坊ちゃんだこと」

 バンッ!!と大きな音を立ててやってきたのは、深紅の髪が美しい、ぼんっきゅっぼんっ、の女医だ。
 白衣と膝上タイトスカートが大変エッチでいいと思います。
 オビトはその人を見て、目が点になった。
 どことなく、炎王に似ている人であるからだ。

「でもまぁ、昨日よりは良くなっているね。魔力も落ち着いているみたいだ」

 診察を始めたその人は、フラムドやリオンが何を言おうとお構いなしだ。
 腕はいいのだろう。
 というか、昨日も診察してくれていたのか。

「お、俺……」
「ん?あぁ、安心しな。明日にはベッドから出てもいいよ」
「えっ、きょ、今日は、ダメ、なの?」
「病み上がりに動き回ろうとする馬鹿がどこにいる?馬鹿者。安静に寝ていろ」

 寝かしつけられたいか?と笑う女医に、悪寒しか走らず、首を横に振る。
 何をして、寝かしつけられるのだろうか?気になると言ったらウソではないが、代償が大きすぎる気がして手が出ない。
 急激に魔力量が上がったことによる魔力症だといわれ、体を楽にするような薬も処方された。また、辛くなったら飲めという。
 昨日、自分でそれを飲んだらしいが記憶にない。焦ってたあの人が飲んだんだろうか?まぁ、助かったけれど。
 女医が帰った後も、ずっと眠っていたため、眠れずだが、外に行くこともリオンに監視されていてできない。
 あぁ、そうだとバッグから、手ごろな板と、霧の迷宮の地図と書くものを用意する。
 その地図を見ながら、記憶にある通りに霧の迷宮の細部を書き込んでいく。
 そこまで深い迷宮ではなかったものの、ある程度の枚数はあるし、いろいろ書き込むこともあるので、良い暇つぶしになるだろう。
 リオンは最初こそ何を、と思って声をかけてこようとしたが、古い地図に書き込まれていく情報に、少し興味を持ったらしく、まじまじと見ていた。
 道を書き終えると、どこに宝箱がある、どんなモンスターが出てくるなどを書き込むと、より一層実用的な地図になった気がする。

「よしっ……」

 そう言って、地図から顔を上げると、結構いい時間になっていた。
 リオンは、その間ずっと側にいて、地図の完成を見守っていたらしい。
 最後に確認だけちらっとして、バッグにそれを仕舞う。後で、道具屋のおじさんに見せれば二束三文にはなるだろう。
 そうして、ようやくリオンの視線に気が付いた。

「え、えっと?」
「その地図、私に任せていただけませんか?」

 これ?と先ほど仕舞ったバッグから取り出すと、にっこりとリオンはうなずく。
 受け取って、再度リオンが確認すると、それをもって立ち上がる。

「ギルドに情報提供してきます。ギルドカードもお預かりしてよろしいでしょうか?」
「いい、けど」

 首にかけていたカードを渡すと、すぐに戻ります、と言ってリオンは出て行った。
 しかし、ギルドになぜ売りに行くのか?という疑問はある。
 ただ、悪いようにはしないだろう。
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