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一緒にお風呂
しおりを挟む水着を着てタオルを巻いてくれていても、陵はほぼ全裸だ。
タオルで覆われている面積が大部分の私と、全然違う……!
輝くようなお肌が、すぐ傍に――――!!
ど、どきどきし過ぎて、温泉に入る前に卒倒しそうです……!
くらくらしてよろめく私を支えてくれた陵の眦が、ほんのり紅い。
「……俺も、どきどきしてるから」
ちいさな、ちいさな声に、思わず陵の手を握った。
ぎゅう、と強い力で握り返してくれる。
見あげる陵の耳朶がほんのり紅くて、どきどきが加速する。
からめた指で、燃える頬で、真っ白な温泉に足を浸す。
凍えた指がじわりと温まる熱い痺れに、ちいさくふるえた。
「痛い?」
「へいき」
答える声も、ふるえてる。
どきどきし過ぎておかしくなりそうなのに、繋いだ指を、離したくない。
陵の傍を、離れたくない。
ぎゅう、と陵の指を握る。
ちょっと紅くなった陵は、ぎゅ、と抱き寄せてくれた。
なめらかな陵の肌が、頬にふれる。
「……あんまり可愛いこと、しないで。
抑えられなくなるから」
囁きが、耳朶にふれる。
唇からあふれそうな鼓動をうずめるように、陵の胸に顔をうずめたら、私の唇が、陵の肌にふれた。
「うわ――!」
真っ赤になった陵が跳びあがって、繋いだままの指で私も跳びあがる。
「ご、ごごごごめんなさい……!」
セクハラだ!
あわあわする私に、耳まで紅に染まった陵が、大きなてのひらにちいさなかんばせを埋めた。
「……いや、あの……なんか、ごめん。
結芽をめちゃくちゃ甘やかして、俺にめろめろにさせたいなって思ってたのに」
朱に染まる上目遣いで、きゅ、と睨まれる。
「……俺がめろめろにされてるんだけど」
拗ねたみたいに尖る桜の唇に、倒れそうになった。
「わあ!」
温泉に顔からダイブしそうな私を、陵が支えてくれる。
「……いっぱいいっぱいで、卒倒しそうだよ」
燃える頬で、陵の腕に顔を埋めて呟いたら
「……俺も」
紅い耳朶で、陵が笑った。
「こ――ら――!
陵!
くっつき過ぎ!」
からりと扉が開いて、榛の瞳が吊りあがる。
「きゃあ!」
わたわた陵から離れようとする私を、陵の逞しい腕が、ぎゅ、と止めた。
「……絢、俺は別に何も――」
「しようと思ってなくても、暴走してひめを傷つけるようなことがあったら大変だから!
僕が来てあげたんだよ」
ふんと胸を張る絢は浴衣に半纏で、めちゃくちゃ似合っていて、めちゃくちゃ可愛い。
「おひめさまにお菓子をお持ちしました。
雪見風呂で召しあがるなんて、滅多とないでしょう?
楽しんで戴こうと思って」
私にはとろけるような笑顔を見せてくれた絢が、陵を横目で見遣る。
陵を牽制するように、絢の榛の瞳の奥で紫檀の光がひらめいた。
ぶすくれた陵は絢が持って来たお菓子を受け取って、ひのきの手桶に載せると、温泉に浮かべてくれる。
「果実酢の炭酸割とお菓子。
結芽に」
微笑んだ陵の手のなかで、赤いバケツをかぶった雪だるまの生菓子が私を見あげた。
「わあ――!
私が作った雪だるま?」
「僕が作ったんだよ」
微笑んでくれる榛の瞳が、とろけるようにやさしい。
「めちゃくちゃうれしいです。
ありがとうございます!」
熱い頬で笑ったら、ふくれた陵に、ぎゅっと後ろから抱きしめられた。
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