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ちょっとしっぱい

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 透夜が地上まで運んだ魔導士さんたちは、結界の精霊さんが見えないようにしてくれる。
 衛士さんたちは見つけてもらったほうがいいんだけど、今騒がれると面倒なので、あんまり目立たないように木陰に隠しておいた。

『時間が経ったら見えるようになる結界、張ったよ!』

「さすが結界の精霊さん、すごい!」

 音が鳴らないように拍手したら、うれしそうにきらきらしてくれる。かわいい。

「よし、じゃあ一刻も早くブチ壊すぞ!」

 階段を飛び落ちた透夜は、砕いた扉も通り抜け、巨大な魔道具の中央に嵌まる巨大な魔石を覆う鋼鉄に、すべての力を乗せて突撃する。

 魔道具が迎撃に閃くより速かった。

 ドォオァアァン──!

 ビキビキビキビキ──!

 魔石を露出させるように壊れゆく魔道具が、透夜を排斥しようと蠢いた。
 幾筋もの赤い閃光が透夜を目指して駆ける。

「遅い」

 嗤った透夜は、あざやかに光線を躱しながら、仕込んである暗器で的確に熱線の発射口を撃ち貫いた。
 壁面を埋め尽くす魔紋が輝いて魔法が発動しようとした瞬間

『とりゃ!』

 精霊さんたちが、魔紋を打ち砕いてくれる。

 パパパパパパァン──!

 次々と魔紋が壊れ、透夜が振り翳す剣の一撃で

 ドォオァアァオオン──!

 魔道具が吹き飛び、抉れ、砕けてゆく。

 グ、ガ、ギ、ギ、ギィイイイ──!

 最後の力を振り絞り、反撃しようとしたのだろう魔道具が巨大な砲を駆動する。
 残る力すべてを集めたのだろう、噴きあがる魔力に白熱する発射口が、透夜を向いた。

 キュアァアア──!

 真正面から飛び込んだ透夜の髪まで白く燃える。

「でりぁあぁあアァア──!」

 振り抜いた透夜の剣が、魔力の渦さえも両断した。

 バリィイン──!

 中央で輝いていた巨大な魔石が、砕け散る。

 ヴ……ヴ……ォン……

 魔道具に燈る光が、消えてゆく。

 カチ

 ちいさな音とともに、奇怪な振動が足を伝った。

『あ、自爆装置入ったよ』
『逃げろ、とーや!』

「りょーかい! 最高加速お願い!」

『いっくよ──!』

 楽しそうな風の精霊さんが、爆速加速してくれる。
 透夜が地を蹴った瞬間

 ドォオァアァオオォオオン────!

 凄まじい爆発に、帝宮が揺れた。

 大地が、裂ける。

 広大な地下を埋め尽くしていた魔道具が粉微塵に砕け散る。
 崩れ落ちた地下に吸い込まれるように、帝宮が陥没してゆく。


『とーや……!』

 ロロァの悲鳴が聞こえた気がして、振り向いた透夜は、笑う。

「後ろ髪が、ちっと焦げた」

『しっぱい、しっぱい!』
『かっこわるいよ、とーや!』

 ほんの一瞬遅かったら死んでいたのさえ楽しそうな精霊さんたちに、笑う。


「かっこわるくても、無事に帰ったら、きっと褒めてくださるよ、わがきみは」

 だから、早く帰ろう。
 皆に手伝ってもらって、魔導士さんたちもあの家に連れて帰ろう。

 爆発して崩れ落ちてゆく帝宮を後ろに、透夜は駆けた。





 ヴヴァヴヴァア──!

 帝都を覆っていた結界が消えてゆく。
 張り巡らされた魔力の流れが消えてゆく。

 膨大な魔力の供給を受けながら発動させていたのだろう、柳にさえ感知できぬほど高度な隠匿魔法が消えうせた瞬間、帝都に詰めかけていた闇衣たちが刃を抜いた。

 ロロァを、ミィを、セオを守るため皆が剣を振るってくれるのに、襲う数が、多過ぎる。

「だ、めだ、押し負ける──!」
「ロロァさま、逃げて──!」

 皆の、常葉の悲鳴を裂くように、刃がミィの首に迫る。

「だめ──!」

 飛び出したロロァが、ミィを守るように抱きしめた。





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