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なめたらだめ
しおりを挟むよい子の隠密団が張り切ってるから、護衛さんやじぃじも肩の力が抜けるのかもしれない。
ロロァもセオも、よく眠れているようだ。うれしい。
透夜もロロァの隣でぐっすり寝ている。
「……とーや……」
寝ぼけて、きゅう、と抱きついてくるロロァが、天使だ。
ちゃんとお風呂に入れるのも最高だ!
さっぱりほかほかになったら、寝る前に皆で集まって明日の行程の打ち合わせだ。
「帝都に入ると、馬車をエゥリケ王家のものに変え、民に手を振りながら帝宮へと向かう予定です」
じぃじの言葉に、透夜は眉をしかめる。
パレードは、護衛がとても難しい。前世の世界でも暗殺されてしまった人もいる。
「殺されるぞ」
透夜の低い声に、じぃじは眉を下げた。
「トゥヤさまと、皆さまの御力を以てしても、ですか」
「難しい。全方向から矢や魔法が飛んでくる可能性がある。防御魔法を展開していても、向こうはそれを破る魔道具だ何だを導入してくると思う。確実に殺す気なら、行列は最高の的だ」
透夜の言葉に、隠密団の皆もうむうむしてる。
「下手すると全滅するよ」
藤の突っ込みに、エゥリケ王国の皆の顔が青くなる。
「敵を甘く見ないほうがいい」
常葉の言葉に、隠密団の皆が頷いた。
「弱い振りして油断させて、すんげえ強いのをブチ込んでくるっていうのは、お約束だ」
紅蓮が頭よさそうに見える!
「……え、いや……今までやってきたのはエゥリケ王国最強の暗殺部隊だったと思うのですが……」
真っ青なじぃじがカタカタしてる。
「民にきゃーきゃー言われて、手を振ってもらえるのは最後かもしれないし、セオがしたいなら、精霊さんたちに頑張ってもらうけど……」
はちみつ大奮発だな。
うむうむする透夜に、セオは首を振った。
「俺の虚栄を満たすために、皆の命が危険になるなら、しない」
「セオさま……!」
涙の滲む目でセオの手を握るじぃじの気持ちはわかる。
この前まで『葉っぱ一枚で踊れ』とか言ってた俺様王太子の言葉とは思えない!
ロロァと一緒に、疲れ果てて歩けなくなるまで皆と一緒に歩くし、暗殺部隊が襲ってきた時は、ロロァとじぃじを守るように剣を掲げてる。
「セオ、いい子になったなあ!」
わしゃわしゃ頭を撫でたら、赤くなったセオがちっちゃな胸を張った。
「ふふふん。俺は立派な平民になるんだ!」
「えらい」
藤がぱちぱち拍手してる。
皆も一緒に拍手して、涙ぐむじぃじにセオが照れくさそうに赤い頬で笑った。
まとめるのは透夜だ。
「じゃあ明日からも幌馬車で行こうか。帝宮までは1日くらいかな」
「わかった!」
ふかふかの寝台に横になると、すぐに眠ってしまう皆の寝顔を見つめた透夜は微笑んだ。
「さーって。その辺で蠢く暗殺者の皆さんを一掃しますか」
ぽきりと指を鳴らす透夜に、常葉が頷く。
「……きもちわるかった……いつやるのかと思ってたよ」
「相手を油断させて、一気にドカン、だろ?」
紅蓮が頭よさそうに見える!
「がんばる」
柳がやる気だ!
「よっし、行くよー!」
珍しく藤までやる気だ!
「今、失礼なこと思ったよね?」
今日も藤の突っ込みは鋭い。
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