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ぶーいんぐだよ

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「いやごめん、来た時みたいな駆け足じゃなくて、もっとゆっくり走るから」

 透夜は皆を励ました!

「トゥヤのゆっくりは爆速なんだよ──!」

 突っ込む藤も泣いてる。

「じぃじを背負って走ると、目立たないか……?」

 セオの突っ込みが正確だ!

「ふつーに皆で歩いて行こうよう」

 常葉が泣いてる。

「いや、それだと約束の日に間に合わないんじゃ……」

 心配そうなセオの肩を透夜が叩いた。

「ふつーに歩いたら、三日くらいで着く」

「………………は!? 国の端から端だぞ!?」

 あんぐり口を開けるセオがよく勉強してる。えらい。


「半日で来たから。三日あれば着くんじゃないか?」

 透夜の言葉に紅蓮がうむうむして、藤が首を振る。

「三日はきついなあ。1週間で行こうよ。のんびりゆっくり!」

「そうそう、足腰は大切にしないと。1週間は欲しいよね」

 常葉もうむうむしてる。


「……え、いや……馬でもひと月……」

 真っ青になったセオが、カタカタしてる。
 じぃじと、護衛の皆さんまで、カタカタしてる。


「幌馬車、作ったら?」

 柳が発言した!

「おお、柳! よく喋ったな!」
「えらいよ、柳!」
「よくやった!」
「喋れるようになったんだなあ」
「えらいえらい」

 透夜と常葉と藤と紅蓮とロロァ、皆になでなでされた柳の顔が赤く染まる。


「そんで、なんだっけ?」

 聞いた透夜に、ぽこんと藤の猫ぱんちが刺さった。

「幌馬車を作るの! 柳、えらい!」

「疲れたら乗るのか?」

 首を傾げる透夜に、藤が首を振る。

「ちがう! じぃじとセオ、ロロァさまに乗ってもらうんだよ。後はついて来れなくなった護衛さんとか。僕と常葉と柳の休憩とか」

 紅蓮と透夜が入ってない。
 おかしい。

「ふむ」

 首をひねる透夜と一緒に、紅蓮も首をひねってる。

 かわいい。


「食糧を積んだ幌馬車だと誰も警戒しないし、まさか王太子が乗ってると思わないでしょ。柳えらい!」

 常葉に拍手された柳が、赤い頬で照れ照れしてる。

 かわいい。

 ああもう、うちの子みんな、かわいいな!


「えと、そんで、なんだっけ?」

「だから幌馬車を作るんだよ!」

 藤の突っ込みぱんちが鋭くなった!


「幌馬車なんてどうやって作るんだ?」

 素朴な疑問を呈してみた。

「え、トゥヤが精霊さんと作ってくれるんでしょ?」

 藤の突っ込みがおかしい!


「え、俺!?」

 いや、大工さんじゃないよ?
 元暗殺者だよ。前世もたぶん大工さんじゃない!

「お願いしますじゃ、トゥヤさま」

 じぃじの期待の目が痛い。

「材料費はエゥリケ王国から出るぞ! この馬車を売ってもよい!」

 セオが太っ腹だ。

「がんばれ、トゥヤ」

「いや、喋ってくれるのはうれしいけど、柳! 皆で一緒につくろうよ!」

「わかった」

 こくりと頷いてくれる柳がやさしい。


「手伝うよー」

 微笑んでくれる常葉も、長い髪を揺らした藤も、白い歯を覗かせた紅蓮も胸を叩いてくれた。



「精霊さん、精霊さん、幌馬車をつくりたいです、お願いします!」

 透夜のお願いに、精霊さんたちがドン引いてる。

『……うわー……』

『精霊に頼むことじゃなさすぎない?』

『間違ってるー!』


 大ぶーいんぐです。

 きもちわかる。




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