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「洗脳して思い通りに動かす魔道具?」

 眉をひそめる藤に、透夜は頷く。

「おそらく。魔物を寄生させるのもあるから、そっちじゃねえといいんだけど──」

 昏倒したままのじぃじと闇衣たちの手足を縛った透夜は、じぃじの胸をはだけさせる。

「な、なななな何を──!」

 真っ赤になったセオがばたばたしてる。
 期待されてるところ悪いが、そっちじゃない。

「魔物が寄生してるなら、肌に埋められてることが多いんだ。切り取るから、まあまあ痛い」

「時々死ぬ」

 藤の突っ込みはいつも鋭い。
 ビクリとセオが震えた。

「じぃじは──!」

 じぃじのローブを剥ぎ取り、体中をくまなく調べた透夜は微笑んだ。
 もちろん、見てない場所はない。

 どこに埋まってるか解らないからな!
 ごめん、じぃじ!

「寄生の痕はない、よかった。ということは──」

 透夜の指が、じぃじの瞼を押し開ける。

「うーん、洗脳系の魔術の痕跡もなさそうだ。ふつうの目だ」

「となると魔道具かな」

 常葉がじぃじのローブをゆさゆさ揺らす。
 ぱさりと落ちてきたのは

『じぃじ♡ いつでも呼んでね♡』
 いかにも商売をしてる感じの愛らしい男の子の画像と、通信用のちいさな魔道具だった。

「な……!」

 真っ赤になったセオが、ばたばたしてる。

 バレた。

 じぃじ、ごめん。


「いやもしかしてコレ!? ハニートラップ!?」

 わたわたする透夜に、声が降る。

「言ってる意味が解らないけど、違うんじゃない?」

 藤の突っ込みはいつも鋭い。





 全身くまなく調べて、それでもない。
 その場合の隠し場所は──

 透夜はじぃじの口のなかを開ける。

「あった」

 奥歯に、ちいさな小さな魔道具が埋め込まれていた。
 歪な魔紋が紅く輝き、口のなかを染めている。
 頭に向けて放たれる紅い光が揺れていた。

「了承したのか、眠らされてつけられたのか分からないけど。常葉、柳、藤、じぃじを押さえてくれ」

 言わなくても解ってくれるけど、セオのために声にした透夜に、3人が頷く。

 暴れないようにじぃじの頭を、両手を、両足を固定して押さえてくれる常葉と藤と柳に、セオのちいさな顔が歪んだ。

「じぃじ……!」

 不安にふるえるセオの目を、透夜はまっすぐに見つめた。

「魔道具を破壊する。脳を弄ってるからな、反動で痙攣したり暴れたりするが、だいたい助かる。たまに死ぬ」

 真実を告げる。
 セオはぎゅっと唇を噛んだ。


「これを付けたままだと、じぃじは依頼主の言いなりだ。生きてる限りセオを殺しにくる」

 握りしめたセオの拳が、ふるえる。

「それは、じぃじが最もしたくないことだ。
 そんなことを、じぃじにさせ続けるわけにいかない」

 セオの瞳が、揺れた。


「……じぃじは……ほんとうは……俺が……いらなかった、のか、も……」

 くしゃくしゃに歪むセオのちいさな顔を、伸ばした透夜の腕が抱きしめた。


「魔道具を外して、ちゃんと聞こう。
 こんなものは、人間につけていいものじゃない。
 じぃじを、取り戻す」

 涙を拳でぬぐったセオが、顔をあげる。


「外すぞ」

 透夜の声に、セオはちいさく、頷いた。



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