47 / 101
汚れちゃう
しおりを挟むもし大昔の結界が生きているなら、昔の伝説並みに、孤児の皆とロロァとユィルが強いってことだよな?
それほど強くはないと思う。
たぶん。
皆、ちっちゃいし。
こども団だし。
首を捻った透夜は、ふたたび身を乗り出した。
「結界の破り方、解る?」
「帝宮の地下に、結界発動魔道具があるって噂だ。壊すしかねえんじゃねえか?」
ボホはユィルと同じ意見だ。
やはりここはロロァの成長にかけるしかない。
「そーだ、魔力を高める、魔法使いの先生とか紹介してくれないかな?」
ロロァと一緒に勉強したい!
「その前に金返せ」
ボホにすごまれて、ちいさくなった。
「……ごめんなさい」
「で、ちっとした裏の仕事なんだがな──」
身を乗り出すボホの顔が近い。
透夜は、夜の帝都を駆けている。
ボホから依頼されたのは、ちょっとした裏仕事だ。
めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、やりたくない。
こんなの絶対、絶対スパダリじゃない。
しかし冒険者同盟にある依頼のなかで、一番実入りのいい仕事だという。
かなりな額だった前金がさくっと稼げて、おまけに魔法使いの先生まで紹介してくれるという。
──やるしかない。
非常に、非常に無念だが、人生には時に汚れ仕事が必要だ。
……たぶん。
いや、ないほうがいいけど。
絶対、ないほうがいいけど。
だって、犬探しとか1000件やっても終わらないよ!
1000匹もの犬が迷子になるか!?
無理だ──!
という訳で、泣く泣く透夜は夜の帝都の屋根を駆けている。
「……俺も行くよ」
悲壮な顔で言ってくれた紅蓮の肩に手を置いた。
「汚れるのは、俺だけで充分だ」
髪を掻きあげて目を伏せてみたけど、こんなの絶対すぱだりじゃねえ──!
『ユィルとロロァさまには言わないでくれ』言えなかった。
嘘はつかないと決めたんだ。
皆が生きていくために、借金地獄で泣かないために、俺はやる──!
むんと気合を入れた透夜は、帝宮に近い広大な敷地を有する邸宅に降り立った。
バギォ帝国の貴族の一般的な邸宅の構造は似通っている。
初めて来る屋敷でも、何がどこにあるのか、人の動きや警備の衛士の気配を察知すれば、手に取るように理解できる。
「……よし、やるぞ」
ひらりと屋根に舞い降りた透夜は、するりと屋根裏に忍び込む。
ズボォ──! とならないように、足場を確かめる癖がついた。
もうあんな無様はごめんだ。
ロロァが隣にいてくれないと、今度こそ死んじゃう。
慎重に足を運んだ透夜は、夜の寝室に降り立った。
机のうえには希少な書物や書類が並べられ、まだ乾いていないインクが射し込む月の光にきらめいた。
長い水の髪が、さらさら夜風に揺れる。
月影を映す水の瞳が、眠たげに瞬いた。
銀縁眼鏡を外した指が、止まる。
「ひゅ──!」
公爵家長子キァナ・ゾンデが息を呑む音が聞こえた。
衛士を呼ぼうと伸ばされた指より先に、鈴を奪い取る。
音が鳴らぬよう手のひらのなかに握り込んだ透夜は、口元を覆う闇衣を少し下げた。
「驚かせてごめん。危害を加える気はないんだ。ただ、ちょっと、質問が」
覚悟を決めた透夜は、息を吸う。
「ぱんつの色、教えて」
627
お気に入りに追加
1,678
あなたにおすすめの小説
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる