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よい子だよ

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 透夜は、わるい笑みを浮かべた。

「いい仕事と家を紹介してくれたおじちゃんに、折り入って頼みがある」

「……な、なんだい?」

 青くなるおじちゃんに構わず、透夜は拳を掲げた。

「偵察、監視を請け負う隠密団を仲間たちで結成する! その初仕事として、今回の件を伝えてほしい。依頼が来たら、俺たちに紹介してほしい。紹介料は報酬の5分でどうかな?」

「そこは1割だろう!」

「俺たち子どもなんだぞ、まけてくれ!」

 値切ってみた。
 ……スパダリっぽくなかったかな?

「まあ、うん、ご新規様割引ってことなら、何とか」

 よし!
 拳を握る透夜に、ユィルがちょっと見直したみたいな目になってる。
 おお!

「とーや、すごい!」

 ぱちぱち、ロロァが拍手してくれる。天使だ。

「名前は『隠密団』でいいのかい?」

「皆でつくる会社の名前、何にしましょう、わがきみ」

「私には聞いてくれないのか!」

 拗ねるユィルに

「順番」

 にこりと笑うと、ちょっと赤くなったユィルが頷く。

「そ、そうか、解った」

 大人しくなるユィルに、孤児仲間たちが拍手してる。
 ユィルのほっぺたが赤くなってた。天使だ。


「ロロァさま、皆でつくる会社の名前、何がいいですか?」

 屈んで視線を合わせたら、ロロァはちっちゃな手を挙げた。

「よい子の冒険団!」

 ……悪役なんだけどな。

「ユィルは?」

「え、えとえと……じゃあ、よい子の隠密団!」

「おお!」

 仲間たちもロロァも拍手してる。

 ……悪役なんだけど……

 ま、まあ、『よい子の暗殺団』にならなくてよかった、かな?

「じゃ、じゃあええと『よい子の隠密団』で」

「ぷくくくく」

 おじちゃんが肩を揺らして笑ってる。

「俺はバハ、これからもよろしくな!」

 差しだしてくれた手を、うれしく握る。

「俺は透夜。一緒にでっかくなろうな!」

 固い握手を交わす俺、スパダリかも──!





 報酬は間違いなく貰えるだろうし、住むところがないと困るだろうからと、バハの計らいで小屋に住んでよいことになった。


 ててれってってってー!
 透夜とロロァとユィルと仲間たちは、お家を手に入れた!


「やた! 皆で住もう!」

 お手々を繋いでやってきたのは、帝都の外れだ。
 中々、中々、中々着かなくてびっくりした!

 ロロァもユィルも足がちっちゃいからな。
 更に運動不足気味だからね。

「大丈夫ですか、ロロァさま、ユィル」

「が、がんばる!」

「わ、私も!」

 足が痛むのだろう、それでも涙目で頑張ってくれる二人が天使だ。

 抱っこしてあげようとしたのだが

「僕、歩けるもん!」

 うるうるの涙目でちっちゃな拳を握られては逆らえない。

「はい、わがきみ」

 微笑んで、ぽてぽての歩みを見守った。
 孤児仲間の皆も、びっくりしてしまうほど、やさしい目をしてた。



 陽が傾いたころにようやく到着した場所に聳え立つのは、今にも倒れそうな廃屋だった。
 風が吹いたら飛びそうだ。

「……あー、でもロロァさまが住んでたところより、まし?」

 屋根裏に乗っただけで落ちたもんな。腐り果ててた。
 あちこち穴だらけだが、よく言えば風通しのよい、天井が高く広さだけはある、馬車が沢山とめられるようにだろう広大な庭までついてる倉庫にロロァがこくこく頷いた。

「りっぱ!」

 ぱちぱち拍手してくれる。天使だ。






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