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主はすごい
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暗殺人形だった皆が感情と記憶を持って連携を憶えたら、警備が厳重な帝宮の地下の巨大魔道具破壊さえイケる気がしたけど、そう思って突っ込んで全滅するのが悪役のお約束だからな。
今、皆、悪役側だ。
自覚して、慎重な行動をとらねばならぬ。
「もうひとつが、魔法や呪術や攻撃で結界を損傷させ、外に出る。……これも、困難だ。バギォ帝国が誇る結界は、世界最強硬度を誇る。多少の魔法や呪術や攻撃で、結界は破壊できない。そんな強大な攻撃魔法をブッ放せば、すぐに衛士や軍が飛んでくる」
「もうちょっと、できそうな案は?」
丸投げしている癖に、文句だけは言う情けなさに申し訳なくなって、自分で考えてみようと頭を捻る透夜の隣で、ちっちゃな手が挙がる。
「はい!」
「ロロァさま、どうぞ」
「精霊さんに、結界を通してもらう!」
「…………え?」
首を傾げる透夜とユィルに、ロロァは胸を張る。
「結界の精霊さん、やさしーの。お願い、聞いてくれる!」
「さすが奇跡の子!」
ぱちぱち拍手するユィルと一緒に、透夜と仲間たちも拍手した。
真っ赤になったロロァが、恥ずかしそうに微笑む。
「精霊さん、精霊さん、結界、通してください。お願いします!」
ぺこりと頭をさげたロロァが緑の光に包まれる。
すうっとロロァが結界を抜けた。
「おぉおおお──!」
皆で拍手する。
「じゃあ俺も──」
バチィ──!
前世より破格によい顔面(希望)2度目のべしゃり。
真剣に潰れるからやめてください、お願いします。
「…………え」
「あ、あれ? 精霊さん、通してください、お願いします!」
ぽわぽわ緑の光は、ロロァの身体だけを包んで消えてゆく。
「うそ! 俺の精霊さん(絶対スパダリ)は!?」
透夜のなかの精霊さんたちが、さわさわしてる。
『これ、結界の精霊さんいないと無理だよ』
『俺、火』
『僕、水』
『ぼく、土』
『オレ、風!』
『無理!!』
「えぇえええェエエ──!? こ、ここは皆の合体、離れ業でお願いします!」
土下座な勢いの透夜に、精霊さんたちはうぷぷぷしながら首を振った。
『結界の精霊さんは、気難しいからさ』
『だから結界張れるんだよ』
『特殊な術式と御力なんだよね』
『火の精霊さんに、水の魔法が使えないのと一緒だよ』
『治癒の精霊さんと仲良しだから、あの子は通してくれるみたいだねー』
『もんのすんごく! 珍しいんだよ!』
我が主が破格に優秀な件について。
そして今世の自分が、精霊さん(スパダリ)の協力を得ているのに、あまりスパダリになっていないかもしれない件について。
「あぅあぁア──」
うちひしがれる透夜の肩を、ユィルのちっちゃな手がぽんぽんしてくれる。
「私も無理みたいだ。これはきっと奇跡の子ロロァしか通れないアレだね」
残念そうにユィルが吐息する。
あっさり最強硬度の結界を抜けてしまったロロァのちいさな背に、透夜は叫んだ。
「あ、主だけでも逃げてください──!」
千切れそうなはらわたで懇願したら、結界の向こうからぽてぽて駆けてきたロロァが、透夜の腰に抱きついた。
「とーやと一緒じゃなきゃ、やだ……!」
「はぅあ──!」
一生分の幸運を、本日使い果たしました。
ありがとうございました。
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