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腰にタオルを巻いてます

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 しゃんぷー召喚への期待で、目がきらきらしてるだろう透夜の頭に声が降る。

『ふーん、じゃあ僕らの使えば?』
『貸してあげる!』

 元気な声と一緒に、緑の硝子の小瓶に入った液体が降ってきた!

「うわあ! めちゃくちゃ感謝! ありがとー! 俺の魔力、いっぱい喰っていーからね! そうだ、今度お礼にお菓子も作ってみるよ!」

『わーい!』
『お菓子!』
『楽しみ!』

 喜んでくれたらしい、頭の中が、きらきらだ。

「よし、これで準備は万端です、わがきみ! お風呂です!」

 期待にきらきらしてるのだろう透夜の前で、ロロァの肩が落ちた。

「……僕の、せっけん……」

 洗濯石鹸を抱きしめたロロァが、しょぼんとしてる!

 折角探し当てた石鹸がちら見されて、さっとなかったことにされるとか、めちゃくちゃさみしいよね!
 大憤慨だ、ごめんよ!

『ヒビ割れます』って書いてあったから、つい!

 猛省した透夜は、すぐ膝をつき、目の高さをロロァに合わせ、誠実に謝罪した。

「も、申し訳ありません、わがきみ、これは衣を洗うための石鹸なのです。今度大事に使いますね」

「う、うん!」

 ほっぺが薔薇色だ。

 主が、天使だ。





「あ、あの、とーや……はずかしー……」

 照れて真っ赤になる主も、天使だ。

「でもおひとりでは難しいでしょう?」

 これだけ汚れてしまった身体をひとりで洗うのは困難だと思う。大人でも泣いちゃうかも。

「……とーやも、はだか、なる……?」

 真っ赤な頬で見あげてくれる主が、天使だ。

「じゃあ腰に布を巻きましょうか。ね?」

「う、うん」

 耳まで真っ赤になって頷く主も、天使だ。

 最初はとりあえず降り積もる垢と埃を落とすことに専念する。汚れに汚れていたので、丁寧にお湯を掛けて、やさしく擦り、流すを繰り返した。

 透夜の手はシャワーみたいにお湯が出るので、大変便利だ。
 いつでもどこでもシャワーできる。しないけど。

 ある程度汚れが落ちてきたら、精霊印の液体せっけんを使ってみた。
 最初は全く泡立たなかった。
 2回目も、3回目も無理。
 4回目にしてようやく泡が立ち、5回目で、ふわふわの泡になった。

「ロロァさま、やりましたよ!」

「ふにゃー」

 主が、のぼせてる!
 天使だが、危険だ!

 あわててぬるめのお湯に切り替え、冷たい水へと変化させ、身体を冷やし、濡れた身体を乾かしてあげた。

 魔法、めちゃくちゃ便利だ。全身ドライヤーが可能だよ。
 こんなのしたいなーと思ったら、水の精霊さん、火の精霊さん、風の精霊さんが相談して、皆で協力しあいながら実現してくれる。
 最高だ。

 精霊印の液体石鹸は、髪も身体も洗える優れものらしく、さらに洗浄力抜群、お肌はすべすべ、髪はさらさらになる極上品らしい。

 ちっちゃな浮浪者みたいだったロロァが、ぴかぴかの悪役令息になりました!

 ──いや、悪役令息じゃないな。

 間違いなく、天使だ。


「ロロァさま、ぴかぴかです!」

「……とーやの、おかげ」

 赤い頬でもじもじしたロロァが、見あげてくれる。


「ありがと、とーや」

 真っ赤なほっぺで、笑ってくれた。









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