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しゃんぷー、召喚!
しおりを挟む前世の透夜の記憶が流れ込んだら、魔法も無詠唱魔法も使えなくなるかと思ったけれど、精霊さんたちはやさしいらしい。
「ありがとう」
感謝とともに微笑んだら、頭のなかで声がした。
『きゃー!』
『とーや、喋った!』
『すごい、すごい!』
『よかったねえ!』
『僕たち、わかる?』
「わかる。前世の記憶と感情が戻ったみたいなんだけど、居心地悪くない?」
『へーき!』
『とーやと49番、一緒にいる』
『49番のなかに、僕たちいるよ』
「便利だな!」
なるほど、大変なことは49番が引き受けてくれるという親切設計みたいだ。
あの辛く苦しい、凄まじい暗殺人形の記憶は壊されて殆どないし、49番として頑張ってきた今世も報われる!
ありがとう、異世界転生!
「俺の魔力でよければいつでも喰ってくれて大丈夫だから、これからもよろしくお願いします!」
丁寧に頭をさげたら、きらきらの光みたいに笑ってくれた。
「と、とーや、精霊さんと、は、話せる、の……?」
きょとんとした透夜は、49番の叩き壊された記憶を集めるように思い出す。
「えーと……確か、ちっちゃくて弱い精霊さんって、人間にも呼ばれないし、気づかれないし、魔力の供給が殆どなくて生きてくのが大変らしいんです。俺、ロロァさまに逢う前まで空っぽだったうえに、俺の魔力が美味いらしくて、弱い精霊さんの棲み処みたいになっちゃって」
あははと笑ってみた。
「……は!?」
5歳のロロァにあんぐりされるほど、非常識らしい。
「俺の魔力をむしゃむしゃ食べてたら元気になって、色んな力を得られるようになったみたいで。俺も魔力を喰われるから、どんどん魔力量が増えたみたいで、これこそwin-winかな」
にこにこしたら、ロロァはちいさな首を傾げた。
「うぃんうぃん?」
「お互いに利益があって素晴らしい関係ってことです」
「とーや、すごぃ!」
ちっちゃな手でぱちぱちしてくれるロロァが天使だ。
「そういう訳で、俺が魔法を使えることは内緒にしておいてくださいね」
「はい!」
ぴしっと手を挙げて、真っ赤な頬で、凛々しく頷いてくれるロロァが、天使だ。
「ではロロァさま、お風呂に入りましょう!」
思ったが、石鹸とシャンプーがない。コンディショナーとトリートメントもない。
「石鹸とシャンプーありますか、わがきみ」
「しゃんぷー?」
「髪を洗う、液体石鹸です」
「せっけん、ある!」
自信満々でロロァが奥の棚からごそごそ取りだしてくれたのは、洗濯石鹸だった。
…………うん、確かに石鹸だ。
『注意! 洗濯用石鹸です。顔や手を洗うと、ヒビ割れます』
書いてくれてる。やさしい。
おお、異世界の字がちゃんと読めるぞ!
しかしこれは使えない!
「精霊さん、精霊さん、身体を洗う石鹸とシャンプーって、つくれる?」
早速頼ってみた!
『なあに、それ?』
「俺の頭のなか見てー」
前世の記憶を再生してみた。
『ほうほう』
『原材料の、このカタカナいっぱい、なに?』
そこまで見えるなんて、精霊さん、すげえな!
「俺もわからん!」
『髪と身体が洗えたらいーの?』
「そうそう、汚れが取れて、いー匂いして、お肌と髪がすべすべしたら最高!
しゃんぷー召喚、お願いします!」
全力で頼ったよ!
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