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おまけのお話

はじめてでーと

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「リトが、すきだ」

 ジゼが言ってくれただなんて、リトには夢としか思えないのに。


「一緒に出かけよう」

 微笑んでくれるだなんて。

「どこに行きたい?」

 手を繋いでくれるだなんて。


「リトが恋人だって、世界中に言ってまわりたい」

 朱いまなじりで、ささやいて。


「……はやく、伴侶になりたい」

 抱きしめてくれるだなんて。


 絶対、絶対、絶対、夢だ。

 ひっぱる頬は、今日も痛い。



「何かあったときのために衛士が後ろからこっそりついてゆきますが、どうぞふたりきりのお出かけを楽しんでください」

 セバがによによしながらジゼの前に屈む。

「リトは、ジゼさまと出かけるだけで、しあわせですから。
 ジゼさまが、リトと手を繋いで歩くだけで、しあわせなように。
 気負わず、楽しんでいらしてください」

「……わかった」

 ほんのり紅い頬で頷くジゼが、尊い。

「行こう、リト」

「あい、ジゼしゃま」

 つながる指が、あまい。
 ぽふぽふ、しっぽが揺れる。

「行きたいところは?」

「えと、えと」

『どこでもいい』が一番言われたくないと思うので、考えたリトはジゼの手を握る。

「ジゼしゃまと、いしょ、あまぃ、おかし、食べたぃ、でし」

「わかった」

「ジゼしゃま、ぃきたい、ところ、は?」

 瞳を伏せたジゼのまなじりが紅く染まる。

「……帝都に、花の苑があって……リトによく似あって……かわいぃ、と……おもぅ」

 消えてしまう語尾に、ぴょこんと跳びあがったリトは、ジゼの手を握る。

「いしょ、いきましあ!」

「ああ」

 照れくさそうに笑って、ジゼが手をひいてくれる。




 帝都で一番の高級菓子店に連れていこうとしてくれるジゼの手を引いたリトは、市場の屋台にやってきた。

「おお! いらっしゃい、リト! おや、今日はジゼさまもご一緒ですか!」

 おじちゃんが笑いながら、こんがり揚げたドーナツを、粉砂糖の海に落とした。
 まるいドーナツが真っ白な粉砂糖をたっぷり纏うと、帝都名物シドナの完成だ。

「おじちゃん、の、ぃちばん、おいしー、シドナ、でし!」

「いくつする?」

「ふたつ、おねが、しましぁ!」

「あいよ!」

 おじちゃんが包んでくれたドーナツは揚げたてで、ほかほかだ。
 目をまるくするジゼの隣で、リトが笑う。

「立ち食い、でし!」

 かりりとリトの歯がドーナツを噛んで、あまい粉砂糖がしゅわりと溶けた。

「……はじめて、だ」

 立ち食いなんて行儀のわるいことをしたことがなかったのだろう、ドーナツに歯を立てたジゼが笑う。

「うまい」

「でし!」

 ふたりで手を繋いで、笑う。


 粉砂糖に白くなった唇が

「ついてる」

 ちゅ

 かさなった。


「──っ!」

 耳もしっぽもボフボフになったリトに、ジゼが声をたてて笑う。


「リト、かわいー」

 ぎゅむぎゅむしてくれたら、ジゼの香りで胸がいっぱいになって、どきどきが破裂する。


 手を繋いで歩く、それだけで、しあわせが指先まで満ちてゆく。




 花の苑は、あざやかな満開だ。

「わー!」

 ぱちぱち拍手するリトのしっぽがぽふぽふ揺れて、あまい花の香りを吸いこんだ。

「リトに、よく似合う。
 花よりかわいー」

 ぎゅむぎゅむしてくれるジゼの視力が心配になったよ!


 丁寧に手入れされて咲き誇る花も、きらきらですが

「僕、こち、の、花、も、だいしゅき、でし」

 道端に咲く、たんぽぽによく似た黄の花を指したら、瞬いたジゼが笑う。


「だからリトが、だいすきだ」








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 読んでくださって、ありがとうございます!

 リクエスト2巡目(笑) みみみみみ様がデートもよしと言ってくださったので、書いてみました!(笑)



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