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おまけのお話
18歳になりました
しおりを挟むふわふわ耳と、ほわほわしっぽのリトは、12年経っても、ちっちゃいままだ。
幼かった獣人の皆が次々と成人を迎え、立派に働いているのに、リトはいつまでもちっちゃくて、魔素で変質してしまった神経の修復もできなくて、ひとりで全然変わらない。
輝かしい青年へと成長したジゼの隣に並ぶと、どう見ても伴侶ではなく、遠縁のちっちゃい子どもにしか見えないよ!
「ふぇえ、僕だけ、ちっちゃ……」
涙目なリトを、ジゼはいつも抱きしめてくれる。
「いつだって、リトはとても可愛い。いつまでだって待つし、このままでも、ずっとあいしてる」
ちゅ
微笑んで口づけてくれるから、火照る頬でジゼの胸に顔をうずめた。
「……でも、僕……おっきく、なりたぃ、でし……」
もうすぐ18歳なはずなのに、ちっちゃいままだなんて──!
耳もしっぽもぺしょぺしょなリトに、遊びにきてくれた父ラヴァリアが瞬いた。
「あれ? リトに言ってなかったっけ? 18歳のリトの誕生日、花舞の月1日に成人すると思うよ。僕はそうだった。ザィハもそうだよね?」
「ああ」
「ほ、ほんとでしぁ!?」
跳びあがるリトに、両親が微笑む。
「きっと、おっきくなれるよ」
「たのしみ」
微笑む両親に、ジゼは唇をひらく。
「息子さんを、俺にください」
「あげるものじゃないから──!」
目を剥いて威嚇しそうな父ラヴァリアを、母ザィハが止めてる。
「人間は、そう言って両親にあいさつするらしい」
「あげないよ!」
人型なのに、ぼふんと出てきたラヴァリアのしっぽが、バサバサだ。
いとしくてたまらなそうにザィハが微笑んで、ラヴァリアの頭をなでなでしてる。
「成人したら、正式に伴侶になれる。そういうこと?」
ザィハの問いに、ジゼは頷く。
「出逢ったときからずっと、リトは俺の伴侶です。リトが成人したら、国が認める伴侶になれる」
燃える頬で、ジゼの手を握る。
ぎゅ
握りかえしてくれるジゼの耳が、ほんのり朱い。
「じゃあ僕らも、あいさつ、しとく?」
「ああ」
ラヴァリアの言葉にザィハが頷いたら、すぐにゲォルグが来てくれた。正式に伴侶になったセバも一緒だ。
リトは、ちっちゃな拳を握る。
「花舞、月、一日、僕、成人、したら」
息を吸う。
「ジゼしゃま、僕に、くだしあ!」
皆が真っ赤な頬で胸を押さえた。
この癖、まだ帝都で流行ってるんだよ。
「……めちゃくちゃ、しあわせになった」
真っ赤なジゼが、抱きしめてくれる。
ぽふぽふ揺れるしっぽに、ゲォルグもセバも赤い頬で微笑んだ。
「ジゼを、よろしく頼む」
「世界一、しあわせになれ」
親の顔で、笑ってくれた。
「俺が認可してやる」
凛々しい帝王になったルァルが、リトの生まれた夜にあわせて、ジェディス邸にやってきてくれた。
生まれたときから18年経った瞬間に、ラヴァリアも魔人も成人するという。
どんな風におっきくなるのか解らなくて、ジゼがきらいな容姿だったらどうしようと血の気のひくリトを、ジゼの腕が抱きしめてくれる。
「どんなリトも、だいすきだから」
微笑んでくれるジゼの手を握った瞬間、リトの身体から光があふれた。
夜を染めあげるように広がる光が、リトをとりまき、舞いあがる。
光の海につつまれて、ふわふわの耳が、ほわほわのしっぽが、膨らんだ。
手が、足が、ふあふあの真白なもふもふになってゆく。
前よりひと回り大きい、でもやっぱりちっちゃいリトを、ジゼの腕が抱きあげた。
「かわいい、リト」
もふもふの獣になっても、とろけるように、笑ってくれる。
「あいしてる」
誓うようにささやいて
ちゅ
ふれる唇に、鼓動が跳ねる。
ふわふわの前足が、なめらかな手に。
ほわほわの後ろ足が、なめらかな足に。
白雪の髪が、夜を彩るように舞いあがる。
つややかに伸びた髪で、伸びた手足で、そっと最愛を抱きしめた。
「ジゼさま」
茫然とリトを見つめたジゼが、耳まで紅に染まってゆく。
「ずっと、ずっと、あいしてる」
ちゅ
かさなる唇に、真っ赤なルァルが手を挙げた。
「リトを成人と認め、次期筆頭侯爵ジゼ・ディオ・ジェディスの伴侶となることを、認可する」
────────────
読んでくださって、ありがとうございます!
これが最後のお話のほうがよかったんじゃ……(笑)
しょこら。様がリトの成人の瞬間をリクエストしてくださったから書けました! ありがとうございます!
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