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おまけのお話
いついつまでも
しおりを挟むぽかんとしたアリアスが、がばりとリトを抱きしめる。
「ぎゃぁあァア──! かわい──! 聞きました、ジゼさま!? やきもちですよ! 国宝ですよ──!」
叫ぶアリアスに応えるように扉が開いて、真っ赤なジゼが現れた。
「……世界の至宝だ」
ぎゅう
アリアスの腕から奪うように抱きしめてくれるジゼの耳が紅くて、リトの頬も熱くなる。
「あ、ぁの、あの……アリアスしゃま……」
ジゼの腕のなかからアリアスを見あげたら、やわらかな微笑みで応えてくれた。
「内緒って言ってごめんね。ちょっと恥ずかしくて。まさかそんな勘違いをして、やきもちをやいてくれるなんて、あぁもう、リトはなんてかわいーの!」
ジゼの腕から奪うように抱っこしてくれるアリアスに、ジゼがちょこっとむくれてる。
「いちおう僕はBLゲームの主人公だし、もしかしたら強制力とかが働いて攻略対象に逢ったら『やっぱりこの人だ!』ってすきになっちゃったりしちゃうのかなーってどきどきしてたんだけど、隠しキャラのナティさまを見ても揺らがなかったから、だいじょぶなのかなと思うんだけど」
照れくさそうに目を伏せる主人公が、かわいい。
「ほ、本命、は──!」
ちっちゃな拳を握って、耳としっぽにも力を籠めるリトにつられるように、ジゼの瞳も興味深そうにひらめいた。
アリアスの目がやわらかに細められる。
「ちょうど今いるから呼んでくるよ」
扉を出たアリアスは、短い鋼の髪に、鋭い鋼の瞳の16歳くらいの少年を連れて戻ってきた。
鍛えあげられた細身の逞しい身体と、切れあがる瞳を裏切るように、アリアスを見る目が、とろけるようにやさしい。
「アルム。幼馴染みで、僕のこと、ずっと護ってくれてる衛士だよ」
ふうわり紅い頬で、アリアスが笑う。
ジゼとリトに引きあわされたアルムは、切れ長の目を見開いて、うやうやしくこうべを垂れた。
「次期筆頭侯爵と伴侶殿にお目にかかるさいわいを賜り、恐悦至極に存じます。アルムと申します」
……ゲームに、出てきた、かな?
主人公の後ろで、もしかして寄り添ってた?
おぼろげな記憶を探すリトに、アリアスは微笑む。
「ゲームには出て来なかった。僕、モブの人の顔まで憶えてるから、間違いないと思う。でも僕は初めて逢ったときからずっと、アルムがすきで、今も変わらず大すきでいられることを、心からうれしく思います」
ふわふわ紅い頬で、アリアスが笑う。
耳まで真っ赤になったアルムが
「……あ、あり、が……とぅ……」
ぎゅっとアリアスの手を握った。
見ているだけで、頬がとろける。
「アリアスしゃま、おしぁわせ?」
「勿論! 僕はずうっとしあわせだよ」
リトを抱っこして、笑ってくれる。
「だからリトは、自信をもって、ジゼさまを愛してね」
泣きだしそうに揺れた瞳を、アリアスの腕から奪ったジゼが、抱き寄せてくれた。
「アリアスには想い人がいるんだから。──俺だけ見てて」
ふわふわの耳にふれるささやきが、熱い。
「あい……!」
きゅうっとジゼにすがったら、ふたりの世界になりそうで、あわててリトは振り返る。
「あ、あの、あの、アリアスしゃま、アルムしゃん、ありあと、ござまし!」
頭をさげたら、ふたりが並んで笑ってくれた。
ふわふわ紅い頬も、繋がる指も、とびきりお似合いで。
「いついつまで、も、おしぁわせ、に!」
アリアスが見つけた、ほんとうのしあわせを、お祝いするのです。
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読んでくださってありがとうございます!
nashiumai様のリクエストで、アリアスの想い人のお話でした!
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