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ほとばしりました
しおりを挟む「俺のこと叱ってくれるの、ルァルだけだよ!」
涙目なナティが、ルァルの腰にすがりつく。
「抱きつくな!」
いちゃいちゃしてるようにしか見えないナティとルァルに、アリアスの目が爛々してる。リトの目もきっとおそろいだ!
ルァル×ナティ!?
ナティ×ルァルなのかな?
いやルァルは、ルァル×レォンじゃないの?
ちがう、レォン×ルァルか!
待て、ジゼ×ルァル、ルァル×ジゼの、ジゼしあわせルートも生きているはず!
熱い視線でアリアスと対話するリトの肩に、ジゼのごつごつの掌がのる。
「……リト……?」
ほとばしる萌えがジゼに伝わってる。
おかしい。
しかしこれはいい機会だ。
ジゼのしあわせのためにも、アリアスの気持ちを確かめておきたい!
ジゼ×アリアス、もしくはアリアス×ジゼが、アリアスとジゼのしあわせなのかを──!
軋む鼓動を押しこめたリトは、決意をのせて顔をあげる。
「あ、あのあの、アリアスしゃま、あの、アリアスしゃま、の、本命、は……?」
瞬いた桜の瞳を彩るように、頬が淡い紅に染まった。
「……ないしょ」
ちいさく笑うアリアスが、とびきり可愛い主人公です。
「……ふぇ」
教えてもらえなかったリトの肩がしょんぼり落ちる。
「……リトは、まさかアリアスのことを……?」
茫然とつぶやくジゼが真っ青だ。
「ありえませんから!」
カッと目を見開いたアリアスが全否定してくれました。
ありがとうございました。
ルァルの指示で転移門がうなりをあげる。
「ゾンデ王国の転移門はナティがひらけるか」
「勿論だ! 瘴気の影響なのか、たまに動作が不安定になるときがあるんだけど……」
死亡フラグにしか思えない言葉に、集まった魔法使いと騎士の皆さんも、ノァもカィトもカタカタしてる。
「ほっほっほ。転移門の揺らぎくらいなら、調整できますぞ」
「じいちゃん!」
真っ白なお髭のおじいちゃん魔導士に、皆の顔が輝いた。
セバもそうだけど、この人が来てくれたらだいじょうぶ、そう思ってもらえるのって、すごい。
「びっくりするような場所に出るわけじゃなく、ゾンデのどこかに落ちるくらいですがの」
お髭をしごきながら微笑むおじいちゃんに、皆の顔がちょっと青ざめた。
「……我らが行って、何とかなると思うか」
ルァルの低い声に、おじいちゃんは真っ白なもこもこ眉毛をあげる。
「何ともならぬなら、行きませぬか?」
陽の瞳を見開いたルァルが、笑う。
「行く」
迷いのない声だった。
ルァルは息を吸う。
不安にふるえる皆に、声を張る。
「瘴気も魔物も、我らは見たことがない。それは今までゾンデの民が、身を盾にして守ってきてくれたからだ。我らはゾンデのおかげで、今まで無傷でいられた」
ナティの瞳が揺れた。
魔界との境界がある国、差別されながらも闘ってきたナティが、顔をあげる。
「そのゾンデが窮地に瀕している。皆の不安も、恐怖も解る。見たこともないものと闘うんだ。瘴気のために自らも魔物になるかもしれん。死ぬかもしれん。だがここで我らが止めねば、ドディア帝国全土が、世界が瘴気に呑まれ、魔界になってしまう」
広がる恐怖を、歯を食いしばった皆がこらえた。
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