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「どうか、無事で」

 ゲォルグの腕が、ジゼを抱きしめる。

「多くの魔法使いが出払うことになります。ドディア帝国が攻め込まれるかもしれない。父上もどうか、ご無事で」

 ジゼの腕が、ゲォルグの背を抱いた。

「よい顔をするようになった」

 ゲォルグが微笑む。

「リトのおかげです」

 はにかむようにジゼが笑った。

「ジゼしゃま、最初、から、至高、でし!」

 ぽふぽふ揺れるリトのしっぽと一緒に、テデとアオがうむうむしてる。



 ソゾが出してくれた馬車で帝宮へと向かう。魔法使いと騎士たちが緊急招集されたことが伝わっているのか、いつもにぎやかな帝都が緊迫に満ちていた。
 保存食を売る店に従僕や衛士や魔法使いらしき人たちが詰めかけている。
 鎧を鳴らし帝宮へと向かう騎士たちが見えた。

「若、どうかご無事で」

 ソゾが馬車の扉を開けてくれる。

「必ず戻る。テデも、リトも、アオも」
「お待ちしてます」

 かたく握手をかわすソゾとジゼが尊い。
 思わず拝んだ。隣でテデも拝んでる。後から来たアリアスも拝んでた。

「はぁあ、ジゼさま、尊い──!」

 拝む三人に、ジゼがなんとも言えない顔になってる。
 アオが一緒に拝みたそうにもぞもぞしてる。かわいい。

「リト、また頼っちゃってほんとにごめん! でもなんか、リトを抱っこしてると、だいじょうぶな気がするんだよ! 強制覚醒のひっどいのもリトがいてくれたから何とかなったし。でもリトは酷い目に遭っちゃって、ほんとに申し訳ないのに、でもでも隣国でひとりで頑張るとかこわいよー! ごめんね、リト──!」

 鼻水と涙で、主人公の愛くるしいかんばせがすごいことになってる!

「僕、元気、でし! アリアスしゃま、お傍、いまし!」

 胸を叩くリトのしっぽが、ぶんぶんしてる。

 あ! ぶんぶんは止めなきゃだった!

 あわあわしっぽを抱えるリトに、皆が真っ赤な顔で胸を押さえてる。


「はぁあぁあ、行きたくないよう! 僕、役立たずじゃない? 残ってもよくない?」

 非常食が詰まっているのだろうリュックを担いでやってきたノァが、今にも死にそうだ。おそろいっぽいリュックを担いでやってきたカィトの目が遠い。

「ノァには魔力があるだろう。期待の魔法使い枠だ。……魔物の討伐なんて……こわすぎる……!」

 カィトの腰が引けてる。かわいい。

「行く前から死にそうでどうするんだ」

 眉を吊りあげるジゼが、かっこいー!
 リトと一緒にテデとアリアスが拝んで、アオも拝みたそうにもぞもぞして、ノァとカィトが顔を見合わせた。

「ジゼを拝むといいことあるのかな?」
「拝んでおくか」
「拝むな──!」

 おこなジゼも、大変凛々しいです!

 にぎやかだから、やってきたのがすぐ解ったのだろう、迎えに来てくれたナティが手を挙げる。

「はー、ルァルが召集かけてくれたけど、魔法使いの皆さんも騎士の皆さんも死にそうな顔だよ。やっぱり瘴気、こわいよね。俺もこわい」

 身をふるわせるナティの後ろから来たルァルが、陽の瞳を吊りあげた。

「こわくても言うな!」

 叫ばれたナティがうるうるしてる。




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