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おねがいします
しおりを挟む悶絶したテデが項垂れた。
リトの肩を、ぽふぽふしてくれる。
「まあね、そんなことだろうとね、思っていたよ。リトはまた危ない目に遭いに行くの?」
あわあわしたリトは首を振る。
「ち、ちが……! アリアスしゃま、大変! 僕、おしょば、いるでし」
きゅ、と拳を握るリトに、テデはまなじりを吊りあげる。
「そうやって前も吐血したんだからね!」
心配してくれて、癒してくれたのは、テデだ。
「ご、ごめなしあ!」
うるうるの涙目で謝ったら、ジゼとアオの瞳が凍りつく。
「……テデ?」
ジゼの声まで、氷だ。
「くぅうう──!」
テデが泣いてる。
ご、ごめなしあ!
ジゼが皆のために魔界(ゾンデ王国なのに、皆のなかではもう魔界になってる)に向かうと、ジェディス邸の皆が涙目になりながらばたばた準備を進めてくれる。
はぐれたり遭難した時のために、セバがひとりひとりに非常食と通報弾の魔道具を詰めたリュックを作ってくれた。
「リトはいつも危ない目に遭うから。心配だ」
銀縁眼鏡の向こうで瞳を伏せるセバの手を、リトのちいさな手が握る。
「しんぱぃ、ありあと、ござまし」
とろけて笑うリトのしっぽが、ぶんぶんだ。
「く──!」
真っ赤になったセバが胸を押さえた。
「……絶対、元気で帰ってこいよ。この間の血まみれのとか、もう二度といやだから」
「心配、ごめなしあ。でも、セバ、心配、うれし」
火照る頬でセバを見あげるリトのしっぽがぽふぽふ揺れる。
「ぐぅ……!」
胸を押さえてうずくまるセバの後ろに、しゃっとゲォルグが光の速さで立った。
「セバ、浮気はだめだから」
「あ、当たり前です、わがきみ──!」
銀縁眼鏡まで真っ赤になりそうなセバが、かわいー!
ジゼとテデとリトがジェディス邸を出発する。
「危険だが、アオも来てくれるか」
ジゼの言葉に、アオのしっぽがしゃんとする。
「勿論です。連れてってくださらなかったら、勝手について行きますから」
胸を張るアオにジゼが笑う。
「ドディア帝国の誰も魔物と闘ったことがない。予想外のことが起きるかもしれない。危険もあるだろう。だがどうか皆で、リトを守ってほしい」
アオとテデが頷くのに、しっぽがボワボワになったリトが跳びあがる。
「ジゼしゃま、お守り、でし!」
アオもテデもジゼも、ふうわり笑った。
「勿論ジゼさまもお守りする」
「あったりまえだよ、リト」
アオが、テデが笑ってくれる。
「ありがとう、リト」
ほんのり赤い耳で、ジゼがリトの手を握ってくれた。
「あぁあ、心配だ!」
見送りに来てくれたゲォルグの叫びに、セバもレォンも眉を下げた。
「私もゆけるとよかったのだが、国防がなくなると陛下の認可が降りない」
苦渋の顔で呟くゲォルグの隣でレォンの翼が揺れる。
「あ、あの、僕がゾンデにゆくと、よくない影響が出ると思う。だから、ゆけないが……」
「どうかお気になさらず、レォンさま」
微笑むジゼに、リトもぶんぶん頷いた。
「レォンしゃま、セバ、と、ルグしゃま、おねが、しましあ!」
ぽふぽふのしっぽと笑うリトに、赤くなったレォンも笑った。
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