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ついでじゃないよ!
しおりを挟むアオのかっこよさに、皆の目がきらきらしてる──!
やた!
ひとりでちょこんと跳ねたリトの耳としっぽがほわほわ揺れて、真っ赤になった皆が胸を押さえてる。
「く──!」
皆が大流行の癖をしてる間も、アオのしっぽはしゃんとしてる。
『アオ、すごぃ!』
獣人にだけ聞こえるようにささやいたら、アオの耳がぴくりとリトのほうを向いて、頬だけがほんのり赤くなった。
「……馬車寄せが騒がしかったのは、これか」
ぽかんとアオの耳としっぽを凝視するノァに、ジゼが頷いた。
「獣人孤児院に引き取られていたアオを、私の専属衛士として雇用しました。王宮に入る認可をいただきたい」
膝を折るジゼに、ルァルが手をあげる。
「許す」
一瞬の迷いもない言葉に、カィトのほうが目を剥いた。
「よ、よろしいのですか、ルァルさま! 獣人は非常に身体能力が高く、叛意がある場合、大変に危険かと──」
ルァルは首を振る。
「殺す気なら、俺は既に死んでいる」
沈黙が落ちた。
「俺はまだ生きている。害意はないということだ」
告げるルァルに頷いたジゼはアオに向き直る。
「アオ、こちらが私がお仕えする次期皇帝ルァル・シ・ドディア殿下だ。ご挨拶を」
ジゼに促されたアオが手を胸に膝をつく。
「お目に掛かれますこと、獣人みなの栄誉にございます。ジゼさまの専属衛士、アオにございます」
なめらかな口上にも、所作にも、一切のよどみがない。
さばかれた裾まであざやかにひるがえり、アオの群青のしっぽを彩った。
「……これは……」
ちょっと赤くなったノァが口元をてのひらで覆う。
こほんと咳払いするカィトに、ノァがばたばたしてる。
「なにこのかっこかわいー生き物は!」
アリアスに叫ばれたアオが、やわらかに目を細める。
「お褒めのお言葉、ありがたく」
「きゃ──!」
朱い頬を両手で覆ってもだもだするアリアスとノァと、なんとも言えない顔になるカィトに、ルァルが笑う。
「おそらく皆の反応も似たようなものだろう。よき者を衛士にしたな、ジゼ」
眉をあげたジゼは、軽く手を挙げてアオを立たせる。
「リトの護衛です。俺のことはついでに護ってくれると」
「いえ! ジゼさまも勿論、誠心誠意お守りいたします!」
拳を胸に宣誓するアオに、ジゼの唇がほころんだ。
「ありがとう」
真っ赤になったアオのしっぽが、ぶんぶんしそうになりそうなのを、ぴくりで止めてる。
「アオ、すごぃ──!」
思わず声に出してぱちぱち拍手するリトに、皆が笑った。
「折角の茶会だ、リト、茶を淹れてくれ」
「あい!」
ルァルの言葉にうやうやしく腰を折ったリトを、アオの手が止める。
ジゼを見つめるアオに、軽く頷いたジゼが顔をあげる。
「ルァルさま、アオが申しあげたいことがあると」
「申せ」
軽く手を挙げたルァルに膝を折ったアオは、形のよい唇を開いた。
「不躾とは存じますが、伺います。殿下の周りの他国の者は、わざと放置しておられるのでしょうか」
なごやかだった場が、凍った。
レォンの羽が、ぱたりと揺れる。
「──ほう」
ルァルの声が低くなる。
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