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すんごい

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 可愛すぎるヴィルにもだもだしたノィユは、あわてて褒めてくれたニィハに頭を下げる。

「もったいないお言葉をありがとうございます」

「ほっほっほ、わしはゾホ・ロゾァーグじゃ」

 にこにこする邪悪っぽい魔法使いおじいちゃんに、バチルタ家一同で硬直した。

 最高峰の一角、高位貴族ロゾァーグ家、前当主の第一子ゾホさまだァア──!

「お、おおお初にお目にかかります、ノィユ・バチルタにございます……!」
「バチルタ家当主、ノチェ・バチルタにございます!」
「ノチェ・バチルタの伴侶、ユィクです!」

 ぴしっとそろってお辞儀する。

 た、たしかロゾァーグ家、現当主はゾホさまの妹君であられたと思う。
 魔法に特化したロゾァーグ家は魔力の塊、ものすんごい魔法が使えるらしい。さすが邪悪っぽいおじいちゃん!

 ………………あれ?

「あ、あのあの、ゾホさまは、ヴィルより2歳年上なだけでは……?」

 醸しだされるおじいちゃん力が半端ないのですが!

「おお、よく貴族名鑑を記憶しておるな」

 ゾホが褒めてくれる。

 憶えてないと首が飛んでいくんだよ!
 最底辺貴族は必死だよ!


「売れ残り仲間っていってもさ、望んで売れ残ってるのと、本気で売れ残ってるのがいて、ヴィルとゾホとメィファは望んで売れ残り組。失礼だよねー!」

 ふんと鼻を鳴らしたニィハが挙げてくれた名前に、バチルタ家一同が硬直した。


「……メィファさま……? メィファ・トゥナ・ネメドさま……? 王兄殿下でいらっしゃい、ますか……?」

 ノィユの声がふるえてる。
 両親の足もカタカタしてる。

 茶色いフードを被った、ずっと無言な人が、こくりと頷いた。


「おお、王兄って知ってるのか、えらいなあ」

 ガチムチお兄さんが褒めてくれる。

「俺はガディ・モァガ。ニィハの家のほうが、ずうっと強いから俺が一番下っ端だな。気楽にしてくれ!」

 モァガ家って鋼鉄のガチムチ騎士を輩出し続けるネメド王国有数の上位貴族じゃないですかァア──!

 それより強い平民の家って……?


「ああ、うち、ネメド王国の商家を束ねてる、ネィハ商会やってるんだ」

「ひゃあぁあ──!」

 仰け反ったバチルタ家はわるくない。
 ネメド王国一の大金持ち商会だよ──!
 
『すべての品をネィハから』
 貧乏なバチルタ家でも知ってるキャッチフレーズ!

 しかしあんまりお世話になることはありません。

 お買い物しないので。
 否、できないので。


「……ヴィルのおともだちが、すごすぎる……」

 あんぐりするノィユに、エヴィが胸を張る。

「いちばんすんごいのは、お兄さまだから!」

「魔法をぶった斬るんだぞ? 化け物並みに強いからのう」
「国ひとつくらい、簡単に滅ぼせるだろ」
「人外だよね」
「………………」

 仲間たちがこそこそしてる!

 褒めてもらえたと思ったのだろう、もしゃもしゃの髪の向こうで、ヴィルが照れ照れしてる。


「かわいいよう、ヴィル──!」

 きゅう。

 お膝に抱きついた。

 ほんのり赤くなるヴィルの向こうで、茶色いフードのメィファが、ぷるぷしてる。




「領地復興っていうけど、何か計画はあるのかな?」

『まさか無策で来ないよな?』という圧を愛らしい豪商ニィハから感じたノィユは、ぴしっと背を正した。




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