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まぶしい
しおりを挟む最愛のヴィルの可愛さにうっとりするノィユとは裏腹に、王太子ザファが悲鳴をあげる。
「じ、じいちゃんが、何言って──!」
エヴィの圧に、『爺』から『じいちゃん』に呼称を軟化させたザファに、トートが笑う。
「お義兄さま、その御髪を掻きあげてくださいますか」
首を傾げつつ、こくりと頷いたヴィルが、もしゃもしゃの雪の髪を掻きあげる。
現れたかんばせに、誰もが息をのんだ。
まぶしい──!
いつも隠されてるから余計に、拝みたくなる崇高さ──!
つい拝んでしまったノィユの隣で、ザファのちっちゃな口が、あんぐりしてる。
「……な、なんだ、これ……」
ぽかんと口を開けてヴィルを見あげるザファの顔が、真っ赤だ。
「顔面国宝だよ、ザファ。これに勝つのは、人外かな」
ザイア陛下が肩をすくめた。
「ザファ、我が子とはいえ、ヴィルさまに対する暴言は許されるものではありません。誠心誠意、謝罪なさい」
アォナ王配殿下が、ザファのちいさな背を叩く。
ぎゅ、とザファは唇を噛んだ。
「か、顔が凄くったって、めちゃくちゃ歳が離れてるだろ! こ、こんなのおかしい! ノィユの伴侶は、俺がなるんだ!」
叫ばれて、手を取られそうになったノィユを、ヴィルが抱きあげる。
「歳が、離れてても。
ノィユの伴侶は、俺だ」
ぎゅ、とヴィルが、手を繋いでくれる。
とろけた頬で、ノィユはヴィルの手を握った。
「はい、ヴィル」
ヴィルしか見えない瞳で笑ったら、ザファのちいさな顔が、くしゃくしゃになる。
「お、俺はあきらめないからな! ぜ、絶対、お前よりかっこよくなってやる!
俺はこれからだけど、お前はこれから老いるんだぞ! 覚悟しておけ!」
ヴィルを指すザファの顔が、くやしさなのか、ヴィルのかっこよさにうっとりしているのか、真っ赤だ。
「こら、ザファ! 謝罪なさい!」
目を吊りあげるアォナに、ザファはぎゅっと唇を噛んだ。
「……爺とか、じいちゃんとか、すまなかった。
でも俺は、あきらめないから!」
燃える瞳で見あげられたヴィルは、頷く。
「俺も、ずっと、ノィユの伴侶で、いることを、あきらめない」
訥々と響く声が胸に落ちたら、あまくて熔ける。
「命が燃え落ちても、ずっと、ヴィルの伴侶だから!」
ぎゅうぎゅう抱きついたら、やさしく抱きしめて、朱い頬で笑ってくれた。
「……まあ、うん、振られる遺伝子を継がせてしまったようで、すまん」
ザイア陛下がぽんぽんザファの背を叩いた。
「……僕のも振られ遺伝子だよ……ごめんね、ザファ」
アォナの手がザファの空の髪をなでなでした。
「お、俺はあきらめないんだから──!」
ザファの空の瞳が、うりゅうりゅだ。
「いいね! 僕はザファ殿下を応援してあげるよ!」
エヴィの笑顔がザファに向けられ、殺人光線がノィユに刺さってる。
「いやあ、お義兄さま、大変ですねえ」
トートがものすごくうれしそうだ。
「ヴィルお坊ちゃまなら大丈夫ですよ」
ロダがやさしく微笑んでる。
「ノィユがしあわせなのが、一番だから」
両親が背中を叩いてくれて、ノィユはヴィルの胸に頬を寄せた。
「ヴィルの腕のなかが、一番しあわせです!」
最愛の伴侶とつながる指で、とろけて笑う。
「くぅ──!」
ザファが泣いてる。
ごめんなさい!
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