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代々なのです

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「覚悟のうえか?」

 ザイア陛下に問いかけられたヴィルは、長めの雪の髪の向こうでものすごく複雑な顔をしつつも頷いた。


「ノィユ、だから。伴侶に。そういう趣味、ではない、が、言われる、のは、仕方、ない」

 握られたヴィルの拳を、ノィユのちっちゃな手が包み込む。


「僕、めちゃくちゃ早くおっきくなるから! 絶対、絶対、お似合いって言われるように頑張るから──!」

 涙目で叫ぶノィユに、ヴィルの唇がほころぶ。


「ノィユは、立派な、俺の、伴侶だ」

「ヴィル──!」

 きゅう

 抱きつくのが、おひざだよ。



「ぐぅ……!」

 ちょっと面白かったらしいエヴィが、真っ赤な顔でぷるぷるしてる。
 真っ赤になったヴィルが、頭をなでなでしてくれる。
 によによするロダの隣で、トートと両親の目がちいさきものを見る目になって、目をまるくしたザイアが、爆笑してる。


「ははあ、なるほど、これは最高に面白い」

「面白がらないでください、陛下」

 トートの突っ込みに、空の瞳が閃いた。

「俺は面白いこと、楽しいことがすきなんだ。辛いことも哀しいことも苦しいことも、毎日容赦なくやってくる。だからこそ、日々を彩り、希望をくれる笑顔を、絶やしたくないと願うんだ」

 爽やかに空の長い髪を掻きあげるザイアに、トートの目が細くなる。

「いいこと言った風に見せかけてごまかした!」

「ははは!」

 楽し気に声をあげた陛下は、笑ってごまかしたらしい。

「バチルタ家は現在の債務状況の詳細を説明せよ」

 キリっとした顔になったザイアに、両親が畏まる。

「は、はい! こちらに!」

 ヴァデルザ家に説明するためにも作ってあったのだろう、現在の窮状をこまかに記した書を提出する母に、ザイアは空の瞳を細めた。

「相も変わらず、月の精霊はうるわしい。その子が伴侶を持つようになったとは、時の流れは速いな」

 さみしげに微笑むザイアに、トートは吐息する。

「陛下が振られてから、まだ3年です」

「言うなよ! 今度は言わなかったのに! 俺が振られまくりみたいじゃないか!」

「そのとおりなので」

 ふんと鼻を鳴らすトートは下ネタでいじられたことを根に持っているらしい。

 発言したそうに顔をあげた父に、ザイア陛下は軽く手を挙げた。
 許しを得た父が唇を開く。

「……平民の私を伴侶に選んでくれたために、ノチェに苦労をかけることになって、申し訳なく思っています」

 肩を落とす父ユィクに、目を見開いた母ノチェがぶんぶん首を振った。


「苦労をかけてるのは俺だから! 代々あんぽんたんなバチルタ家に来てくれるなんて、ユィクだけだよ!」

「ノチェ……!」

 いちゃらぶな両親に、ちょっと恥ずかしくなったノィユの隣で、皆の目が生温かくなってる。


「おかあさま、おとうさま、陛下の御前です!」

 あわてて突っ込んだ!


「は! も、申し訳ございません……!」

 あわてて低頭する両親に、ザイアはゆるく首を振った。


「いや、陽の精霊と謳われる男と戦っただけでも、健闘したと褒めてほしいな」

 さみしげに微笑むザイアと、父ユィクを代わる代わる見つめたトートは目を細める。


「陛下の顔面は、陽の精霊とも戦えますよ。でも性格が、ちょっと……」

「ひどい──!」

 ザイアが泣いてる。






──────────────

 はじめましての方も、ずっと読んでくださっている方も、お気に入り2000ありがとうございます!

 見つけてくださって、ここまで読んでくださったことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
 お気に入りやいいねやエールやご感想で応援してくださるお気持ちが、とてもとてもうれしいです。

 心から、ありがとうございます!


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